青春の瞬き〜号泣の名曲
「逆輸入〜港湾局〜」というCDを大手通販で買った男。
せっかくだから新品を、と奮発した。
花魁姿の林檎姉さんがキレイだし、と。
例によって、中央線にゆられながら、iPhoneのプレイボタンを押す。
聴きはじめて、がっくり。
なんかケバケバしい。
作り過ぎなんだよな。
オーディオマニアには、音が悪いよ! っていわれるし——
かなんか、脳内で言葉をくすぶらせながら、聴きすすめる。
4曲目は「青春の瞬き」。
あーあー、ストレートな題名。
輝き、が、瞬き、になっただけじゃない。
イントロが、また、もったいぶって。
右チャンネルの鍵盤も、左チャンネルのオケ音源も、エフェクトかけ過ぎ。
ボーカル始まったけど、あえぎが過剰じゃない? 姉さん。
語尾の音を3度分上げるのも、なんかディズニー歌手っぽいし、ボーカルリバーブのゲートが過剰(パッと切れ目をつくるノイズゲートのようなもの)。
コーラスも、なんか普通だなあ。
う〜ん、どうしちゃったの。
歌詞は、たどりついたんだ、とか、ときよとまれ、とか。
いつもの姉さんらしくないよ。
エンディングも、まあ、ありきたり。
「ありきたりの女」じゃないんだからさあ。
とかなんとか。
一曲終わって。
あ、あれ。
おれの右の指が、へんな動きを。
もっかい、聴くわけ?
あれ?
最初に戻るボタン、タッチ。
わざとらしいオープニングがはじまる。
姉さんの声が入る。
*
もういちど、サビが終わったとき。
安っぽいERのイアフォンをつけた男は、左手でつり革を握りながら、号泣していましたとさ。
この曲が、栗山千明へ提供された曲のセルフカバーで、そしてスマスマの最終回で姉さんがSMAPみんなと歌った曲であることを男が知るのは、さらに後日。
「青春の瞬き」
世界中に胸を張って発信すべき、掛け値なしの名曲。
PS:中央線内で、あるいは吉祥寺界隈で、インナーイアフォンをつけた短髪の男が必死で目頭を押さえているのを見たら、せなつさんですか? と声をかけてあげてください。
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