おめぇ、俺を殺す気か
おマサさんは孫の面倒はよくみたけれど、伴侶に対してはあまり優しい人ではなかったようです。
ある日、タイゾウさんがいつものように湯飲みで焼酎を飲もうとしたところ、水が入っていました。捨てるのも面倒なのでそのまま焼酎を注ぎ足して飲んでいると、台所からおマサさんが来てしれっとこう言ったのです。
「じいちゃん、その湯飲みに漂白剤入れといたんだけど」
おマサさん、茶渋を取るために晩酌用湯飲みに、漂白剤を入れておいたのでした。
それを聞くまでは普段通り飲んでいたはずのタイゾウさんは慌てて「げぇ!」と何度もむせ、しまいにはおマサさんに「おめぇ、俺を殺す気か!」と怒鳴りました。
しかし、おマサさんはどこ吹く風という顔で笑っていたのでした。
また、彼らの息子、つまり私の舅が幼い頃のことです。
タイゾウさんと連れ立って畑に出かけたおマサさんが、お昼時に家に戻ってきました。しかし、タイゾウさんの姿がありません。
「あれ、父ちゃんは?」
「ん? 知らね」
おマサさんはそっけなく言い、昼ごはんの支度を始めました。
しかし、舅は妙な胸騒ぎがし、畑に走ってみたのです。すると、なんとそこには倒れているタイゾウさんの姿があったのでした。
どうやら、夫が体調不良で倒れたというのに面倒に思ったおマサさんが見て見ぬ振りをして自分だけ帰ってきたらしいです。
病院に運ばれたタイゾウさんは幸いにも回復しました。
そして意識が戻ったとき、おマサさんに再び「おめぇ、俺を殺す気か!」と言ったといいます。
そんなおマサさんですが、実はなんだかんだ文句を言いつつも、甲斐甲斐しく世話はするのです。
そういうところは義妹もそっくりで、夫のことを「あいつは成績は良くても社会人としてはバカなんだよ」とぶつくさ言いながら、出来立ての温かいお弁当を毎日職場まで届けているのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます