第10話○結婚式
私は誓いの言葉を言う時に泣いていた。
参列していた人達は感動して嬉しくて泣いているのだと思っただろう。
もちろんそういう感情もあったが、私はなぜかとても大切な何かにさよならをしているような気がしていた。
カメラ係は結婚式場の方に頼んだので気にしていなかったが、「絶対行かない!!」と言っていた彼が来たのには驚いた。
後で分かったことだが、ご祝儀も個人的に包んでくれていた。
初めからご祝儀はいいと伝えていたし、来るのもあんなに嫌がっていたのに……
結婚式と披露宴は、友人達の余興や色々な協力もあって素晴らしいものとなった。
せめてものお礼にと、私が趣味で作った曲を集めた自作のCDアルバムを引き出物に添えたところ……病院や結婚式のBGMとして使われたり、後々意外な依頼が来るなど好評で嬉しかった。
私は作った曲が少しでも多くの人の心に残れたらいいなと思い、某インディーズ・アマチュア音楽サイトに投稿してみた。
「あれ?」
学生時代の友達を新居のマンションに招き、みんなで結婚式のビデオを見ていた私は、彼が顔を拭うのに気付いた。
(まさか……ね)
新婚旅行から帰ってしばらくした頃、噂で彼に彼女ができたという話を聞いた。
「よかったじゃん」と彼を冷やかしながら私はどこか上の空で……なんだか彼が急に遠くなった気がして寂しかった。
(結婚したばかりでこんなこと思うなんておかしいよね……)
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