第18話
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「ジークベルト!!」
ボクは叫んだ。
凄まじい雄叫びを上げた
「空気読めバカー」
高圧水流のビームがジークベルトに直撃する。
「せっかく良いとこだったのに」
火花が、火花がチカチカと瞬いてる。
「だいっ嫌いです」
ピンクちゃんのカノン胞が、猛然と火を噴いて、ジークベルトが壁際まで吹き飛んだ。
「ローレンス・
アンジェリカが手当たり次第にモノを投げつける。
さすがトップドリフトボーラー。
全部命中してる。
あ~、あ~、あ~、あ~
死んじゃうよ。
死んじゃうよジークベルト。
死んでしまうって。
「もう、もうその辺で良いから」
ボクは、琥珀さまを羽交い締めにした。
「止めないで
ゲシゲシとジークベルトを足蹴にしながら、琥珀さまが喚き散らした。
あ~、いや、ボクは助かってます。
あーぁ、ボロ雑巾みたいになってるよ。
なんか知らないけど、鎧じゃなくてパワードスーツみたいなのを着たジークベルトが。
高そうな透明のヘルメットにも亀裂が入ってるよ。
ここまでくると、なんだか気の毒。
「こやつが悪いのじゃ。こやつが、わらわたちの大切な瞬間を台無しにしおったから」
顔を上気させた琥珀さまが、涙目でまくしたて、ボクの胸に顔を埋めた。
「弱っ。こんなんでアキトに勝てるわけ無いし」
いや、君たちの勢いが凄かったの。
なんかもう生きてる人間を見つけた、ゾンビのように殺到してたよ。
ジークベルトも呆気にとられて、身動き取れなかったし。
ボクでも勝てないと思う。
「でも、やるじゃん
「そなたもな河童」
こつんと拳を打ち合わせた。
おお!!
共通の敵を倒して、二人の間に友情が芽生えたか!?
「河童ってあによ。アタイの名前はねえ」
「知っておる」
「ならちゃんと、名前で呼ぶし」
「嫌じゃ、発音しにくい」
むうぅぅぅっ
ああ、また険悪な雰囲気に。
「わらわのことは、琥珀と呼んで欲しいのじゃ」
お、歩み寄った。
う~ん、良いねえ。
美しい女の友情が生まれたよ。
「暁人さま、これどうする?」
ジークベルトの襟首を掴んでぶら下げた稟が訊いた。
「ゼニガタ捜査官に引き渡さないとね」
って、いうか。
コイツ、何でこんな変な格好してんの?
前も厳めしい鎧を身に着けてたけど、今回は桁違いに厳ついパワードスーツを着てる。
頭も普通に肩の上にに固定されてるし、なんなんだこれ?
「マナ姉さんこれ」
ピンクちゃんが驚いたような声を上げた。
マナさんも同様に驚いている。
「有り得ないわ」
上樹先輩もだ。
何があったの?
「急いでゼニガタ捜査官を呼ばないと」
マナさんが駆け出した瞬間。
稟の手を撥ね退けたジークベルトが、高笑いをしながらボクを見た。
「卑怯者め桐生・ローレンス・暁人。身供にアンジェリカをけしかけるとわ。許さぬ、殺してくれる」
そういって右手を突き出した。
瞬間。
熱線がボクを襲った。
「どわっ」
ボクが座ってたデッキチェアーが、一瞬にして蒸発した。
「ブラスターだと!?」
創先輩が呟いた。
ブラスターってなに?
「下がって。シールド」
矢継ぎ早に、上樹先輩が指示を出す。
嘉藤と師村が、渡されたフォースフィールドシールドを展開した。
お前ら、よく使いこなせるな。
「幾ら貴様が強かろうと、亜光速で飛来する荷電粒子は避けられまい」
やめろ!!
リフォームしたばかりなんだ!!
「おわっ」
柱時計が消えた。
なんてことするんだ。
高いんだぞ、あれ!!
「う~わっ」
オーディオが。
真空管のオーディオが。
お気に入りなのに、これで二台目だよ。
とほほほほ~
「アキト逃げて」
逃げてる、逃げてるよ。
って、逃げてるだけじゃ埒が開かない。
ハンマー、ハンマー、ハンマーどこよ、ハンマー。
あった!!
反撃!!
「借りるわよ」
「えっ?」
「桐生様避けて」
「へっ!?」
ズドォォォォンッッッ
ボクの頭を掠めながら飛来した50口径が、ジークベルトの胸に直撃するやいなや。
上樹先輩が、一気にジークベルトとの間合いを詰めた。
シャキィィィィィンッッッ
鋭い鞘音を立てて放たれた刃は、炎よりも熱く、太陽よりも眩しく耀いていた。
「なっ、なにぃぃぃぃ」
チン
と、鍔音涼しく鞘に納めると。
「バカなぁぁぁぁぁ」
ジークベルトの巨体が斜めにずれて、真っ二つに割れた。
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