第17話
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「だ~め。これは、あたしとローレンス・
そう言ったアンジェリカが、ボクをギューッと抱きしめた。
首、首に腕が掛かってる。
「放しや、ウロコ女」
いや、これはちょっと。
「アキトは、アタイの」
腕を引っ張るな、腕を。
って、お前、ちっこいのに結構凄い力だな。
知らなかった。
「暁人さま~」
こらよしなさい。
そのトゲだらけの鎧で抱きつかれると、さすがに痛いよ。
ピンクちゃん。
あのね。
その。
ボクの足にすがりつくのは、さすがにちょっと見た目に問題があるんじゃないかと⋯⋯
こんなシーンをマナさんに見られたら、なんと言われるか。
「まっ!!」
マナさん!!
「なんて格好をしてるのピンク!?」
ピンクちゃんの顔が一気に青ざめた。
器用だなマシキュラン。
「ね、姉さん。あの、この、これは、その。――桐生さんヒドい」
なんで、ボクが責められるの!?
「なあ暁人。お前、この状況はねえよ。女の子がかわいそうだ」
お前が言う。
彼女たちを
「河童ちゃん。はい、アーン」
お前は、お前で何やってんの
自由すぎるだろ!!
「暁人くん。君ね」
「え? はい」
「琥珀ちゃんを弄ぶ気なら、この場で斬るわよ」
あああああああ、恐い。
本気だ。
本気の眼だ。
上樹先輩の背後に、黒々としたオドロ線がはっきりと見える。
「桐生さん。ピンクのことは、どうなさるおつもりですか?」
異世界の鋼鉄の姉が二人して、胸の前で腕を組んでボクを見下ろしてる。
返答次第で、この場で殺される?
どーする?
どーするの桐生・ローレンス・暁人。
人生最大のピンチだよ。
なんかもう、色々と危機的状況だよ。
命も風前の灯火だよ。
「放しや、ウロコ女」
「いやよ」
「暁人さま、抱っこ」
「稟、じゃま」
「桐生さん。私⋯⋯」
ああ、もう。
あああああああ、もう。
どうしたら良いの。
「そうだ!!」
稟が跳ね起きた。
なんだ!?
「ジャンケンしよう」
へ?
いったいなに!?
「勝った人が、今日、暁人さまと子作りするの」
何を言い出すのよ、この子は!!
「な、何を言ってるの⋯⋯」
アンジェリカが絶句してるよ。
イレズミの入った顔を、真っ赤に染めてる。
このウブい所が、凄いギャップがあって可愛いんだよね。
って、そんなことはどうでも良い。
その案は無し。
パス。
パス。
パス!!
「よし。良いじゃろう」
琥珀さま。
君も、何を言ってるの。
「琥珀ちゃん」
止めて。
止めて上樹先輩。
「本気なの?」
いや、そこ、確認する所じゃない。
「本気じゃ。わらわは本気なのじゃ」
「そう。じゃあ私は止めない」
止めてよ!!
止めなきゃ。
ねえ上樹先輩。
なんで、そこだけ無駄に聞き分けが良いの。
「アタイも~」
「ダメ~」
嘉藤。
お前だけだよ、我が
「カトー。アタイ、あんたのこと嫌いじゃない。⋯⋯でも、アタイの一番はアキトなんだ」
がっくりと肩を落とした嘉藤が、それでも顔を上げて河童小娘を見た。
「分かった」
分かるな!!
「オレは、いつまでも君を待ってる」
男前だな嘉藤。
って、そこで諦めるな。
もっと押せ。
もっと押すんだよ嘉藤!!
「アンジェは、どうする?」
「あ、あ、あたしは、その。ローレンス・暁人と結婚もしてないのに、そんな真似」
「じゃあ不参加ね」
稟が拳を突き出した。
「ピンクちゃんは、どーする」
「わ、私も⋯⋯」
「じゃあ三人で。ジャンケン――」
「ま、待って」
アンジェリカが手を挙げた。
「なんじゃウロコ女。そなたは不参加じゃろう」
「あ、あたし。まだキスもしてないのよ。それなのにいきなり、こんなの。ひどいと思わないの」
「思わぬ。わらわたちは、それだけ本気なのじゃ」
「ぼくと暁人さまの赤ちゃんは、きっとすんごく可愛いよ」
「赤ちゃん!!」
赤ちゃん!!
いや、ちょっとねえ。
みんな、落ち着こうよ。
「暁人~。お前な、さすがに五人同時はどーかと思うよ。オレ」
そー思うなら止めろよ師村!!
「ぼく。暁人さまのこと大好き。キスだって上手だし、ぼくことを大切にしてくれる。でもね、ぼくのことを抱いてくれないの。きっと、ぼくに女としての魅力が無いからないんだ」
両手で顔を覆った稟が、いきなりシクシク泣き出した。
そんな事無い。
そんな事無いよ稟。
ほんとに大変なんだ。
我慢の限界だよ。
ボクの忍耐力を誉めて欲しい。
いまも、いつも明るい稟の泣き顔に、胸がきゅ~としてる。
できれば、いますぐ抱きしめたい。
「アタイも、キスをされたことない!!」
じとーっとした熱い視線を
いや、あのね。
さすがに小学五年生にしか見えないお前に、キスはできないよ。
って、その先なんて絶対無理。
「わらわに接吻をしたのに、鬼娘とも接吻をしたのかや!?」
え、いや、ほら、稟とのキスは挨拶みたいなものだし。
深い意味は、その余り無いかな~と。
「もしや、わらわの
「いや違う」
「わらわの肌が、瑠璃姉みたいにキレイなら良かったのじゃな」
あ~、あ~、あ~、あ~
見る間に涙目になっちゃったよ。
情緒不安定すぎるよ、みんな。
熟成したグリフォン肉って、なんか変な成分でも湧いてんじゃないの?
「暁人くん⋯⋯」
上樹先輩、そんなに凄まないで!!
「わらわが先じゃ」
「アタイ!!」
「ジャンケン」
「あたしも参加する!!」
「私も」
ボクは頭を抱えた。
「そうだアキトに決めてもらおう」
「そうじゃ、それが良い」
「それなら文句は無いわ」
「桐生さん」
「え~、ジャンケンが公平だよ。恨みっこ無しだし」
「さあアキト。誰を選ぶの!?」
女だ。
濃密で、濃厚な女の匂いが、津波のように押し寄せて来た。
「さあ」
「さあ」
「さあ」
「さあ」
勘弁してくれ!!
「もうし!!」
この耳障りなバリトンボイス。
天の助けだ!!
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