第7話 愛しのアンジェリカ!!
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ハァァァァァァァァァァ
ボクは深いため息を吐いた。
心底怖かった。
こんな恐怖体験は二度とごめんだ。
正直、グリフォンの方が可愛く想える。
あの時は琥珀さまがいて、河童小娘がいて、コンシェルジュさんに赤鬼さんまで居てくれた。
でも、今回はたった一人で殺人鬼を相手にしなきゃならなかったんだ。
こんな恐いことはない。
「これは何だ
ジークベルトが怒鳴った。
あ、喋ることは出来るのね。
「フォースフィールドだよ」
「
殺人鬼を相手に卑怯もクソもない気がするが。
「あんたみたいな殺人鬼を相手に、真っ当な勝負なんて出来るものが」
「殺人鬼だと!?
「幾つもの世界を渡り歩いて、人を殺しまくってるだろう」
ふふん
と、また鼻で笑われた。
なにかと嫌味な生首野郎だ。
「何の事情も知らぬ輩の言葉を
なんだと!!
ムカムカムカ~
「身供が殺した連中は死んで当然の悪党供よ。それも貴様が言うが如く
なんか偉そうに宣ってるけど、世間じゃそれを殺人と傷害って言うんです。
ちょっと待て。
死んで当然の悪党ばかりって言ったよな。
ボクが何をした?
「お前に聞きたいことは山ほどある」
「ふん、何でも訊くが良い。いまの身供は
「ボクがお前に何をした?」
あ、眼を逸らした。
「言えよジークベルト。ボクがお前に何をした。ボクには、それを訊く権利がある。お前は初対面のボクに剣を突きつけ命を狙った。その理由を知りたい」
ジークベルトの逸らした眼を、
ジーーーーーッ
と、睨みつけたボクに、
「それを答える前に身供から質問がある」
「なんだ」
「その剣をどこで手に入れた?」
どこで手に入れたって。
「貰ったのさ」
正確には違うけど、まあ間違いではないよね。
「貰った、貰っただと⋯⋯」
なんか知らないけど絶句してる。
「貴様は、どこまでも身供を惨めにする」
何を言ってる?
「我が愛しのアンジェリカを奪い。いま再び身供が求めてやまぬオリハルコンの剣まで手にしおって⋯⋯、どこまでも幸運に恵まれたヤツめ」
なに?
我が愛しのアンジェリカ。
我が愛しのアンジェリカって言ったよね。
へ?
なに?
アンジェリカの元カレなの、この生首。
「え~っと、あ~っと、あの何か誤解があるといけないから説明したいんですけど」
「なんだ!!」
「ボクとアンジェリカの間にはなにも無いんです」
実際に何も無い。
確かに見初められてはいる。
それは感じる。
アンジェリカは、おおっぴらに愛情表現をして来るし、琥珀さまなんかと違ってすんごく分かりやすい。
でも、何もない。
そもそも人魚と、どうすればエッチに至るのかボクには全く知識がない。
した事といえば、偶然その形になったアリエルハグと、食事の時にエプロンを掛けてあげた事と、ご飯を食べさせて上げただけだ。
他には何もない。
「信じられるか!! そんな
いや信じるも信じないも、本当に何も無いんですってば 。
「確かにアリエルハグの形にはなったけど、それも――」
「アリエルハグだと!!」
「えっ、あ、はい」
「身供がどれほど頑張ろうと、絶対に出来ないアリエルハグをしたというのか⋯⋯」
まあ、確かに片手で自分の頭を抱えて、アンジェリカをアリエルハグするのは無理だと想う。
あ~ぁ、怒りに打ち震えてるよ。
「その上、誰かにオリハルコンの剣を貰ったと言うのか!!」
「えっ、はい」
「どこの馬鹿が惑星ひとつと同等の価値があるオリハルコンの剣を、貴様
惑星!?
惑星ひとつ分の価値。
えええぇぇぇぇぇぇ!?
ボクはしげしげと
このくすんだ銀色の刀が、惑星ひとつと同等の価値があるの!?
嘘でしょ~
これで織波瑠魂三十パーセントの含有量だから、あの百パーセント純織波瑠魂の結晶の価値って、どれくらいなんだろう。
考えると、ちょっと恐い。
赤鬼さん、太っ腹すぎでしょう。
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