第3話 ウンベルト・ゼニガタ
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よもや~
と、想い振り向いたら。
腰に手を当てたマナさんが、なんだかとってもアンニュイな表情でボクら見つめてた。
「アナタたち、いつの間にそんな関係に!?」
「ち、ちがうのマナ姉さん。これは、そのあの、あぁぁぁん、もう。
マナさんの瞳の無い眼がニコリと微笑んだ。
「別に良いのよピンク。前にも言ったでしょう。ワタシにも半獣人の恋人がいるんだから。アナタも遠慮する必要は無いのよ」
「違うの、もぉぉぉぉ、違うの、違うの、※‡◑~@!†§&?◦※=♥:※@??§†!!!!!」
慌ててまくしたてるピンクちゃんの最後の言葉は、マシキュラン語になってた。
ボクには何と言ってるのか、全く理解不能だ。
「そんな事が?」
なんだかマナさんがビックリしてる。
「桐生さん、そのお手紙を拝見してもよろしいですか?」
この手紙!?
クソ生首野郎のジークベルトの置き手紙をマナさんに渡すと、マナさんの両目からレーザーが照射されて手紙の本文をスキャンした。
眼からレーザーって、どこからどー見てもロボットだよ。
「これは大変なことだわ」
マナさんが姿を消した。
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その男は色の
目深に被ったフェードラ帽の下には、眼光するどい瞳が黄色に耀き。
皮肉気味に歪んだ脣には、先の折れた細巻きの葉巻が咥えられていた。
渋い。
でも、全身ウロコ肌で長い尻尾がトレンチコートの裾から覗いてる。
トカゲだ。
とってもダンディーなトカゲの兄貴だ。
「坊や、お前さんの考えてる事なら分かるよ。1つ忠告しておいてやる。俺たちの種族をトカゲ呼ばわりするのはNGだ。呼ぶなら恐竜と呼ぶんだな」
見た目も渋けりゃ、声まで渋いよ恐竜の兄貴。
「ゼニガタさん」
「よう☆※○◦ちゃん」
マシキュラン語もペラペラだよ。
凄えぜ恐竜の兄貴。
「いまはピンクと名乗ってます」
「ピンク? そいつはまた頂けねえ名前だな」
申し訳ない。
「私は気に入ってます」
良い子だピンクちゃん。
本当に良い子。
「どこのどいつだい、そんな間抜けな名前をつけた野郎は?」
ボクは、そっと手を挙げた。
「なるほど。こいっぁ
帽子を脱いで深々と頭を下げた。
潔いぞ、恐竜の兄貴。
「所で、
「はい」
「状況を詳しく訊く前に、まずは自己紹介といこう。オレは異世界捜査官のウンベルト・ゼニガタ」
「桐生・ローレンス・暁人です」
「桐生・ローレンス・暁人。どこかで聴いた名だな」
ピンクちゃんがゼニガタの兄貴に耳打ちすると、兄貴の眼が大きく開いた。
「驚いたね。坊やが、あのグリフォンスレイヤーのローレンスか」
グリフォンスレイヤー!?
いやいやいや。
ボクは何にもしてないし。
赤鬼さんの金棒とコンシェルジュさんの対戦車ライフルが倒したんだし、トドメを刺したのは
ボクは逃げ回ってただけだ。
「
ゼニガタの兄貴に誉められた。
なんか嬉しい。
「なるほど」
昨夜の話を訊いたゼニガタの兄貴が顎を撫でながら呟いた。
「状況はだいたい分かった。ただジークベルトは物狂いと呼ばれるだけに、動機を知るのは容易じゃない。ヤツは相手のコロンの香りが気に食わないってだけで、突然斬りつけるような真正のサイコパスだ」
ぞぉぉぉぉぉっ
とした。
よく、殺されずに済んだなボク。
ジャリジャリとする頭を撫でながら、ため息を吐いた。
「今回の件もそうさ。命を奪うつもりなら坊やが気絶してる隙に首を
同感ですよ、兄貴。
「無責任な話だが、今のこの状況では我々にも手の出しようがない」
葉巻をもみ消して、携帯灰皿に吸い殻を捨てた。
エチケット完璧です兄貴。
「え、それは何故?」
「この世界が正式にマルチネットの一員であるならば、オレ達が
だから琥珀さまも、河童小娘も、朝になったら姿を消していたのか。
「そこがプロトバブ捜査の難しい所さ」
二本めの葉巻に火を入れながら渋く頬を歪めた。
ヘビースモーカーだな。
吸いすぎは健康に悪いよ、兄貴。
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