エピローグ 同じ夢
「起きろ、魔王!」
突然頭をガツンと殴られて、俺は夢の中で目が覚めた。
「……む。お前はアローナ? そして俺は何故生きているのだ?」
確か俺はアローナに胸を貫かれて死んだはずだ。
「何を寝惚けているんだ。お前、私に殺される直前に『見事だ、アローナよ。お前ならばこの世界に襲い来る本当の恐怖を退けることができよう』と言って、命乞いをしたのを忘れたか?」
忘れたかと言われても、そんな記憶これっぽっちもないのだが。
「なんでも氷の魔神が世界を極寒の世界に変えようと企んでいるそうじゃないか!?」
知らんぞ、そんな設定。
「そんな世界になったら米が栽培出来なくなる。米が取れなくては、天津飯が単なるかに玉になってしまうじゃないか。これは由々しきことだ!」
……いや、そもそも天津飯どころか人間も死に絶えるんじゃないかな、そんな世界では。
「だから次はその氷の魔神って奴を倒す。角なし魔王、お前も私に協力するんだ!」
「角無し魔王?」
言われて頭をさする。
左右から伸びていた立派な角が奇麗さっぱり切り落とされていた。
「な、これは一体?」
「おう、お前の角のおかげで見事なとろみのある『あん』が作れた。これで絶品天津飯の完成だ!」
そしてアローナ、いや、姫宮さんは
「絶品天津飯にはお前の角が必要だから、これからも私の仲間として生かしてやろう。そしてともに絶品天津飯を世界中に普及すべく、立ち塞がる奴等を蹴散らすのだ!」
と宣言して大笑いするのであった。
後に『天津飯勇者』最終巻の後書きにて「今回で終わりにするつもりでしたが、まだまだ皆さんに楽しんでもらいたいので続編を書くことにしました」と、『天津飯勇者・おかわり』の製作発表を知ることになるのだが、その夢を見ている時点では知る由もない。
ただ、俺は「ああ、まだ俺と姫宮さんで同じ夢を見続けるんだな」とうんざり半分、嬉しさ半分の気持ちでアローナに扮する姫宮さんの笑顔を眺めるのだった。
終わり。
同じ夢を見ていた タカテン @takaten
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