第98話(移動)

 そんな話をしながら、途中、道沿いに水飲み場と宿があったが、休業中の札がかけられていて中に入れない。

 代わりにそこで休憩をして、もらったサンドイッチの一部を食べる。

 肉厚の自家製らしいベーコンが入っていて、甘辛い味付けのソースがかけられている。


 思いのほかおいしい品だった。

 そして近くの水を沸かして、茶葉をロゼッタ達が持っていたためお茶を楽しみ、それから再び俺たちは歩きだした。

 土の道ではあるが、その間、エリス共和国からこちらの方に来る馬車などは遭遇しなかった。


 シーナに話すと小さくうめいてからシーナが、


「まるで封鎖されているみたい。エリス共和国の方で何かがあって、この道を通らないようにしているのかしら」

「まさか、操られた村などがあると、先にそのエリス共和国の人は気づいていた、とか?」

「それならすでに、こちらへの対応を行っていると思うわ。あの村は何日もあの状態のようだったから」


 シーナの言葉に俺は、なるほどと思う。

 そうなるとどうしてここが封鎖されているか、だが、考えていても理由は分からない。

 だから俺たちはさらに進んでエリス共和国に向かったのだった。










 封鎖用の大きな看板には、この先魔物被害が多発のため封鎖、と書かれている。

 だが、俺たちがここにやってくるまで、魔物には“一匹も出会わなかった”。

 なのにこの看板には注意書きが書かれている。


 俺たちが途中、魔物と出会わずにいて妙だと話していたあの時と状況が同じだ。

 もしも討伐隊が出されていたのなら、すでに掃討が行われているだろうけれど、それとも遭遇しなかった。

 暗い夜の時間になってしまった街の明かりを遠くに見ながらシーナが、


「その魔物との戦いにすら人を出せない何かがあったのかしら。そもそもどうしてマサトはここに連れてこられたのかしら」

「シーナは詳しい話を聞いていないのか?」

「女の子に甘くて厄介ごとに巻き込まれるのもよくあってね。ああいって私に連絡してから自由に動き回ることは、よくあるの。大抵、私の城に戻ってくるけれど」

「そうなのか?」

「なんでも、この城を拠点にしていると、元の世界への執着が増すかららしいわ。あまり居心地がよくないけれど、安全で、放ってもらえるのがいいらしいの」

「それは不遇っていうのか?」

「言わないわね」


 そんな話をしていると、町の中心にある城のあかりがそこでふっと消えたのだった。



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あとがき

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