第88話 事情について

 そこで村人の一人が、誰に村の広場に集まってくれといったのかについて話していた。

 それはどうやら三人程度いるらしく、村の宿屋に集まっていたらしい。

 村人の一人がそう言い出して、さらに、


「それで俺達は確かこの広場に全員集まったんだ」

「そうそう」

「そうしたらあの酒場の三人が、変な紫色の結晶? のようなものを突然置きだして、俺達の方にやってきたんだよな。無言で。それで手を握られて……その時誰かがぶつかった気がしたがそれ以外は……記憶があまりない。後は食事をしたり水をまいたりする記憶が少しあるだけだな」


 その操られていた期間の記憶は、あまり保持されていないらしい。

 手を握られて以降記憶にないらしいが、そこで別の村人が、


「そうしたらお前が暴れ始めたんだよな。それですぐにその近くにいた何人もが暴れ始めて手を掴んで、皆悲鳴を上げて逃げようとしたけれど次々と様子がおかしくなって……俺ももみくちゃにされた後、記憶がないな」


 とのことだった。

 ただ今の話を聞いていて俺は、


「初めは操られていなかったんですね? そして、集められた後に段々に操られていった……どういった条件でそれが起こったのかをこの辺りで考えられないか? ……接触?」


 ふと俺は思ってそう呟いた。

 相手と何かの拍子に手が触れるなどして、それが洗脳の“開始条件”になるのではないか?

 もみくちゃにされたといった話や、ばらばらに洗脳が行われて操られているあたりで、一気に集団を洗脳させたわけではなさそうだ。


 その操るにしても何にしても、


「本人自身が触れるなりなんなりし無いとそれは発動しないのかもしれない。……接触した人物がどんな人物かによるか。……でもできれば自分の姿を見せたくないとなると、接触した人物が目撃したかどうかは分からないか。でも一番初めの宿屋に三人が遭遇していたというなら、その三人か、宿の主人かに話を聞けばその人物について分からないか?」


 少しでも情報が欲しい。

 となるとその人物達ならば何か知っているのではないかと俺は思ったのだ。

 そこで俺が問いかける前にシーナが、


「確かにアキラの言うとおりね。そこの人は、その三人や宿の主人はどこにいるか知っているかしら?」


 そう問いかけると彼らはお互い顔を見合わせてから、


「今、ちょうどシーナ様の前に伸びている四人が彼らです」


 そう答えたのだった。

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