第266話「たったひとつの悪どいやり方」
「センパ~イ、ミスコンの締め切りもう明日ですよぉ~……いい加減、そろそろ残りの五人のメンバー集めないとヤバヤバですよぉ~
「そう言われてもなぁ……」
(確かに、生徒会の仕事を石田とかに押し付けて手伝っているのに、ここまでやってミスコンのメンバー集まりませんでしたは流石にヤバいよなぁ……)
「何か良い案はないんですかぁ~? ほら、いつもの悪知恵みたいなぁ~
「姉ヶ崎……お前は俺を何だと思っているの?」
(まったく……俺はお前の姉ちゃんとは違って、裏表の無い真っ黒な生徒会を売りにしてやっているんだから、そんないつもこざかしいことを考えている子悪党みたいな言い方はやめてほしいよな。男なら不正々堂々と開き直って
だって、子悪党だと失敗するイメージじゃない……?)
「安藤きゅん!」 スッカーン! ← ドアを開ける音
「朝倉さん!」
「朝倉センパイ!」
「生徒会の用事が片付いたから手伝いにきたわよ! もう、どこにいるのか探したらこんな空き教室で姉ヶ崎さんとミーティングしていたのね?」
「ゴメン、そういえばどの教室にいるか伝えて無かったね。作戦会議で人に聞かれたら都合の悪い案が出るかもしれないから、あまり人のいない場所を選んでたんだよ」
「だから、センパイはここを選んだんですか……」
(何と言いますか……『人に聞かれたら都合の悪い案』が出る可能性がある時点で、センパイって本当にロクでもないですよね~)
「そうだったのね。ウフフ、安藤くんのことだから人気がなくて直射日光の当たらないジメジメした場所を中心に探して正解だったわ♪」
「ねぇ、朝倉さんは俺をキノコか何かと勘違いしていないかな……?」
「ウフフ、安藤くんってば何を言っているのかしら? 安藤くんはキノコなんかじゃなくて、私の大好きな彼氏よ♪」
「朝倉さん……」
「安藤きゅん!」
(そして、いずれは私の素敵な……キャ!)
「あのぉ~、センパーイ? そういうのはぁ……アタシみたいな後輩のいない場所でよろしくやってくれませんかねぇ……
(後輩の前で急にイチャつき始めるとかこれなんのイジメですかねぇ~?) イライラ
「あ、姉ヶ崎さん!? え……一体いつからここにいたのかしら……?」
「最初からいましたけどぉーっ!?」
「そうだったのね……。ごめんなさい! 私ったら安藤くんしか見ていなかったわ……」
「そりゃそうでしょうね!」
(朝倉センパイってば、一体どれだけセンパイにゾッコンなんですか……。まぁ、朝倉センパイの惚気話はウチの学校の七不思議の一つにもなるくらいですからお察しですけどねぇ~……)
「それで、安藤くん。ミスコンの方はどうなの?」
「うん、朝倉さん。それがまだ全然でね。今、姉ヶ崎と何か案を考えていたところだよ」
「そして、絶賛手詰まり中ですねぇ~
「そうなのね。じゃあ、ここで一旦休憩にしてお茶でもどうかしら? 確か今日から、学食のお菓子コーナーに新しい商品が追加されているのよ♪」
「おぉ~、朝倉センパイそれ、いいですね! アタシも休憩に賛成でーす!」
(休憩か……。確かに、姉ヶ崎も限界みたいだし、俺も何か糖分を補給するか)
「そうしようか……。でも、朝倉さん。学食のお菓子コーナーに新しい商品が入ったってよく知ってるね?」
「ウフフ、安藤くんってば何を言っているのよ? だって、それの要望を受けて学校に許可をもらったのは私よ? そもそも、要望自体は安藤くんが受けて私に任せてくれた案件だったはずなのだけど?」
「え、そうだったけ……?」
(そう言われれば……女子からの意見で学食のお菓子の種類が少ないみたいな要望があって、朝倉さんにお願いしたような……)
「因みに、どんな種類を増やしたの?」
「とりあえず、皆から要望があったお菓子は全部仕入れてみたわ」
「「全部!?」」
「ええ」
「朝倉センパイ、要望されたお菓子全部仕入れると結構な量になりませんか……?」
「朝倉さん、それって……予算大丈夫なの?」
「そこら辺は安藤くんが私に全部任せてくれたから、良い感じに調整しておいたわ。まぁ、確かに要望があったお菓子を全部買うと少し予算は大目になるけど……でも、お菓子は賞味期限も長いから、長期的に見て月割りで計算すればそれほど大した額でもないし、別に今回入荷したお菓子をこれからも全部仕入れ続けていくわけではないから大丈夫よ♪」
「え? でも、売り切れて入荷しなかったらまた要望が来ませんかぁ~?」
「姉ヶ崎さん、もちろん、売り切れたお菓子は入荷するわよ? でも、それはあくまで『売れた分のお菓子』でしょう?」
「ああ、なるほど……つまり、一度要望があったお菓子を数個づつ仕入れて、人気があるものだけをレギュラー商品として学食で取り扱うってことか」
「安藤くん、そいういうことよ♪ 先生達も一時的な予算の出費は長期的に見れば学食の売り上げにつながることを説明したら納得してくれたわ」
「ほへぇ~、朝倉センパイ凄いです
「ウフフ、それほどでもないわよ♪」
(……朝倉センパイって、お姉ちゃんが生徒会長に推薦したように……本当に凄い人――)
「姉ヶ崎の言う通り、俺も朝倉さんは凄いと思うよ?」
「安藤きゅん、本当! え、えっと……なら、ご褒美に頭をナデナデしてくれるかしら……?」
「そんなのお安い御用だよ!」 ナデナデ
「安藤きゅんのな、ナデナデ……ムヘヘェ♪」
「だから、アタシの前でイチャつかないでくださいってばぁー!」
(――なのに、どうしてセンパイが絡むとこんな急に
「おお、姉ヶ崎……悪いな。それにしても、朝倉さんなら何とかしてくれると思ってたけど、よくそんな案が思いついたね?」
「ウフフ、確かに最初は悩んだけど、途中で発想を変えたのよね。要望が多いなら全部採用すればいいじゃないかしら? ってね♪」
「発想を変えるかぁ……」
(まぁ、こっちは要望がなさ過ぎて悩んでいるわけだから、参考には――)
「――ハッ! そうか……。こっちがミスコンの参加をお願い『する』側じゃなくて、ミスコンの参加をお願い『される』側になればいいんだ!」
「安藤くん、それは……どういうことかしら?」
「センパーイ? それができたら苦労してませんよぉ~
(大事なのは何故参加しないのか? ではなかったんだ! そう、俺が本当に考えるべきだったのは――)
「いける……これなら、いけるぞ!」
((あ、あの表情は絶対に何かロクでもないことを考えている顔だ……))
「なぁ、吉田、吉田! 何で皆体育館に集まってるんだ? これって、なんの集まりだ? 俺なにも知らねぇぞ!?」
「山田、うるせぇ! お前が知らないのは先生の話を聞いてねぇからだろう! これは今から学校集会があるから全生徒が体育館に集まってんだよ。なんかミスコンのお知らせとか言ってたぞ?」
「ミスコンか! そういえばポスターが貼ってあった気がするぞ!」
「ウェーイ!」
「まぁ、皆の反応なんてそんなもんだよな」
「ねぇねぇ、ミスコンのお知らせって何をやるのかな?」
「さぁ? 参加者の紹介とかじゃない?」
「てか、ミスコンとか恥ずかしくて参加しにくいよね」
「それ、すごい分かる~!」
「とっても、恥ずかしがり屋なフレンズなんだね♪」
『はーい。皆、注目~! 今から全校集会始めますよー。別に、俺の話とか聞かなくてもいいけど、聞いてないと多分後悔するので聞いておいた方が無難ですよー』
「お、安藤だ! おい、吉田! 安藤が全校集会で喋ってるぞ! ぎゃはは! なんか変な光景だな!」
「ウェーイ!」
「山田のアホ。あいつはあれでも生徒会長なんだから別におかしくはないだろ?」
(いや……でも、確かに安藤が生徒会の代表で表に出てくるのって珍しいよな? だって、いつもは副会長の
(((なんか、すごい嫌な予感がする……。とりあえず、大人しく話を聞いておこう……))) ←全校生徒
「とっても、怪しいフレンズなんだね!」
(……はい! 俺が喋り出しただけで、体育館がお通夜みたいに静かになりました♪
え、なにこれ? いじめなの……? しゃべるだけで皆が黙るって、俺どれだけ嫌われてるの……? まぁ、いいや。このまま『お知らせ』を伝えてさっさととんずらしよう)
『えー、今日皆に集まってもらったのは、ご存知の通りミスコンについてのお知らせです。学内のポスターでも掲示しておりましたが、先日を持ちましてミスコンのエントリー期間を締め切らせていただきました。一応聞きますが、ミスコンの手続きをまだし忘れている人はこの中にはいませんよねー? いないねー? いいのねー? 今なら間に合うかもよ~?』
「クスクス……あの生徒会長ってば、何やってるの? こんな土壇場で参加する奴なんかいるわけないじゃん?」
「あ、もしかして……実は参加者がいないんじゃない? それで焦っているとかー?」
「それ、マジでありえそう!」
「ウケる~!」
「とっても、悪あがきなフレンズなんだね♪」
『えー、最後のチャンスとしてこの場で聞いてみましたが、手続きをしたい人はいないと言うことでいいですね……?』
「「「…………」」」シーン ←会場の全生徒達
『はい! っと、いうことで……以上を持ちまして今回のミスコンの参加者は約二名を除く女子生徒全員に決定しましたぁ~♪ はい、拍手! パチパチ~』
「「「「「…………って、はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」」」」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
安藤くん、一体なにをやらかしてくれたのかしらねぇ……。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回「ミスコンバトルロワイヤル」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ。出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
グーかな?
パーかも?
チョキじゃない?
チョキだったりして……
本当はグーを出してくるかもしれないわよ……?
【グー!】
「皆のコメント、評価、待ってるわね♪」
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