第224話「借り物競争」



『はーい「玉入れ」に続いて「綱引き」でも北高が勝利を収めました! 現在、北高と南高の点差が凄いことになっていますが……はたして、南高は逆転できるのでしょうか!?

 次の競技「借り物競争」に南高の期待がかかります! っと、言うわけで「借り物競争」に出る選手は入場ゲートの方へお集まりください♪』


「「「生徒会長は責任を取って辞任しろーっ!」」」



「あ、安藤くん、どうしましょう! 体育祭の状況を見て、部費を削られた一部の運動部がデモを起こしかけているわ!」

「朝倉さん、大丈夫だよ。あんなの気にしたら負けだから」

「で、でも……実際に体育祭の競技はもう半分近く終了しているのに、今のところ私達の高校はどの競技にも北高には勝ててないのよ?」

「確かに、ここから巻き返すのは正直、厳しいね……」


(短距離走は一レース以外全敗だし、障害物競争も勝てたのは半分の三レースだけだから、引き分けで、団体競技の玉入れと綱引きは両方とも惨敗……)


「まぁ、それでもまだ策はあるんだけどね」

「え? 安藤くん、策ってなにか考えがあるの?」

「うん、だって『借り物競争』だよ? こんなの『イカサマ』が全てだよ。だから、勝つには『お題』を持っている奴を選べばいいのさ」

「でも、運があるかなんて実際には分からないと思うのだけど……?」


(なろう小説なら、ステータスオープンって言えば『運』のステータスは見れるけど……現実じゃそんなことできないし……安藤くんは、一体どうするつもりなのかしら?)


(なろう小説だと『鑑定』スキルを使って主人公が宝箱を見分けたりする描写があるじゃん? アレと一緒で俺があらかじめ借り物競争のお題を知っていれば、必然的に有利な選手を選べると言うわけで……つまり、借り物競争のお題は全て俺が書いたのさ!)


「ほら、朝倉さん。競技が始まるよ」

「確か、第一レースは藤林さんが出る予定だったわね」



『では、今から「借り物競争」を始めます! 第一レースの選手は準備をしてくださいねー♪』


「ふ、ふぇ……借り物競争頑張れるかな……。でも、私が勝てば石田くんも褒めてくれる……よね? うん、がんばろう!」


(でも、何で安藤くんは私に「借り物競争」に出て欲しいなんて頼んだんだろう……?

『藤林さん、お願いします! この競技は藤林さんじゃないとダメなんだ!』

 って、安藤くんは言ってたけど……?)


『では、よーーい……ドン!』 スカァーン! ←ピストルの音


「ああ、安藤くん! 藤林さんがスタートに出遅れちゃったわ! お題も残り物みたいだし、これじゃあ最下位になっちゃうわよ!?」

「朝倉さん、大丈夫だから」

「でも、藤林さんは女子の中では運動は苦手な方なのよ?」

「まぁ、大舟に乗ったつもりで見ててよ」


『さぁ! ついに、最後の選手もお題の紙を手に取りました! っと、おお? どうしたのでしょうか!? 各選手、お題の紙を手に取ったまま動こうとしません! 一体、お題には何が書かれているのでしょうかー?』


「はわ……はわわ……な、何このお題!?」


 お題【「彼氏」と一緒にゴールしろ】


「安藤……くん……」


(この競技は私じゃないとダメって――そう言うことぉおおおおおおお!?)


「はぁあ!? お題が【恋人と一緒にゴールしろ】だって!? 恋人なんていねえよ! むしろ、欲しいわ!」

「ぇえええ!? お題が【好きな男の子と一緒にゴールしろ】って……そんなのできるわけないでしょ!」

「ちょぉおおおおおおお!? お題が【ダーリンと一緒にゴールしろ】って何だよそれ!? 俺は男だぞ!」


『おおーっと! なんと言うことでしょう! この「借り物競争」……なんと、書かれている【お題】が鬼畜すぎる仕様になっているようです! し、しかし……これは競技としてクリアできる難易度なんでしょうか……? おっと! ここで実行委員会の協議が始まったようです! 実行委員会の判断は――まさかの【続行】!? OKの判決が出ました!』


「おかしいでしょ! こんな公開告白できるわけないでしょ!」


『えー、参加選手からのクレームが届いておりますが……はい? えーと、北高の生徒会副会長の早坂さん曰く……「それもまた青春です。逆にその空気で告れば断る殿方はいないのでは?」とのことです!』


「はい、副会長! 恋人がいない人はどうしたらいいでしょうか!」


『えーと、早坂さん曰く「恋人がいないなら、作ればいいのでは?」とのことでーす♪』


「俺のお題なんか、相手が男だぞ!」


『フムフム、はいはい……早坂さん曰く「男女差別は良くないと早坂は思います。それに、男同士でも早坂は応援します」とのことでーす♪ 頑張ってくださいね~♪』


「俺はそういう趣味じゃねー!」


『続々と選手達からクレームが湧き上がっていますが……おぉおっと! ここで、藤林選手が相手を連れて戻ってきました! 藤林選手、まさかの一位を独走中です!』


「『男同士でも応援します』だって! ねぇ、石田くん聞いた!? 私、何だが早坂さんとは仲良くなれそうな気がするの!」

「お、落ち着け、藤林! なんだかテンションがおかしいぞ!? てか、僕はさっきまで他の競技に出てた所為で体力がもう無いんだ……お、お願いだから、もう少しゆっくり走ってくれ……」

「あわわ! い、石田くん、無理させちゃってゴメンね……? ちょっと、まって! 私が肩を貸すから!」



「安藤くん……これって――」

「ね? 朝倉さん、大丈夫だったでしょ?」


(この借り物競争は事前に早坂さんと相談して、向こうの出場選手には彼女、彼氏がいない奴だけをエントリーしてもらったんだよね。だから、必然的にこっちは彼女、彼氏持ちの生徒をエントリーさせれば勝利は確実と言う算段さ)


「でも、この内容だったらどうして私と安藤くんは借り物競争にエントリーしてないのかしら?」

「え……だって、借り物競争で恋人を大観衆の前で連れてきてゴールするとか……そんな、黒歴史確定なイベント、恥かしすぎでしょ?」

「だけど、石田くん達にはさせるのね……」


(でも、私は安藤くんと一緒にゴール……したかったかも――な、なんちゃってね!?)



『さぁさぁ! 借り物競争、第一レースは――お題の【彼氏】を引きずって、藤林選手が一着を取りましたー!』


「石田くん! ゴールしたよ! だ、大丈夫……生きてる? 息できる? 第二レースって石田くんの番だよね? は、走れる……?」

「あ、あぁ……藤林、大丈夫だ。僕は……まだ『歩ける』!」 ← 走るほどの体力は残っていない


(クッソ! 安藤の奴……借り物競争のお題がこんなのだとは聞いていないぞ! ま、まさか……僕のお題もこんなのじゃないだろうな!?) 





『さぁさぁ! 借り物競争第二レースは――お題の【素敵な彼女】に背負われて、石田副会長が一着でゴールしました!』


「い、石田くん、大丈夫!? 傷は浅いから、しっかりして!」

「ふ、藤林……僕はもうダメだ……。この、足では動けそうにない……。ぼ、僕をおいていけ……」

「も、もう……ゴールしたんだよ? だから、お願い……目を覚まして!」

「す、すまない……。最期に……あ、アイツ……安藤の奴に――お、覚えてろぉ……と」 ガク

「い、石田くーーん!」



「ねぇ、安藤くん。石田くん、大丈夫かしら?」

「石田の奴、足を挫いたくらいで大げさなんだよ。しかも、その原因がスタートのピストルの音に驚いてだから、救いようもないよなぁ……」


『借り物競争第二レースはお題である彼女が選手を背負うというイレギュラーがありましたが、この調子でドンドン行きましょう!』


「でも、安藤くん。このまま【お題】が【彼氏】とか【恋人】ばっかりだと、限りなく白に近いグレーゾーンだと言えども、流石に皆に不正を疑われるんじゃないかしら?」

「そこらへんは大丈夫だよ。次のレースからはちゃんとお題も変えてあるからね」


(まぁ、それでもウチの出場選手に有利なお題に変わりはないんだけどな……)





『なんと! 借り物競争第三レースの【お題】はこれまた鬼畜ぅうう! てか、どれも内容は同じに思えますが……さて、このお題をクリアできる選手はいるのでしょうか!』


「【ヌーブラ】なんて持ってる奴いるのかよ!」

「【胸パッド】って、持ってても貸してくれないでしょ!」

「【シリコンパッド】って……これ、他の選手と同じだよね!?」


(((こんなのクリアできるかぁーっ!)))


「アハハ! 先輩も性格悪いですよねぇーキャピ!


(【パッド】かぁ~、確かにこのお題は私じゃなきゃ借りられないですよねぇ~?)


「キャハ♪ お姉ちゃ~んキャピ!

「どどど、どうして、私の所に駆け寄ってくるんですのぉーっ!?」


『なんと第三レースは南高の生徒会会計の姉ヶ崎さんが気転を利かせて「肩パッド」を借りてくるという方法でクリアしました! しかし、お姉さんである前生徒会長がどうして「肩パッド」を持っていたのかは謎ですね~♪』


「ねぇ、安藤くん……アレって、もしかして――」

「朝倉さん、世の中には知らなくていいこともあるんだよ……」



『では、お次の第四レースにいきましょう! なんと、第四レースには私が卒業した後の「メガネっ子司会同好会」の後継者(予定)……委員長さんが出場します!

 はい、メガネっ子同好会の皆! 拍手してね~♪』


「「「委員長――――ッ!」」」


「勝手に私をその変な同好会の後継者にしないでくれるかしら!?」



「委員長、流石だぜ……もう既にウチの学校のメガネファンを引き入れてやがる……」

「本人は結構不服そうだけどね……。でも、この借り物競争って、私と安藤くん以外の生徒会役員が全員出場になっているのね。なんだかこんな広い応援席なのに、応援してるのが私と安藤くんだけってのも不思議ね」


(生徒会役員と体育祭の実行委員は他のクラスの子と違って専用の広い応援席が用意されてるけど、石田くんは足を見てもらうために藤林さんに背負われて保健室に行ったきりだし、妹ちゃんは実行委員の予定で出ているでしょう。それに、姉ヶ崎さんと委員長はまだ競技に出て運動場の中で戻れないから、この「借り物競争」の時間帯は私達二人だけなのよね。ウフフ、なんて嬉しい偶然なのかしら♪)


「あ、あのね……朝倉さん」

「安藤くん、何かしら?」

「その……ね? この組み合わせなんだけど……実は、朝倉さんと二人っきりになりたくて、ワザと皆がいなくなるように予定を組んだりして――って、言ったらビックリする?」

「あ、安藤キュン……っ!」

「ちょっと、早いけど……皆が帰って来る前にお弁当二人で食べようか?」

「うん! 安藤くんのお弁当は私が食べさせてあげるわ♪」



『さぁ、運命の第四レース! 各選手がお題を手にしましたぁー! 果たして、今度はどんな鬼畜仕様なお題が書かれているのでしょうか!?』


「まったく、安藤くんったら……朝倉さんと二人っきりだからって、応援席で膝枕で『あーん』とかイチャイチャしてんじゃないわよ……。貴方達の席って観客側の生徒から見えなくても運動場の選手からは丸見えなんだからね?」


(とりあえず、今はこのお題を早く片付けて……あの安藤くんのだらしない顔に私の鉄建チョップでも食らわせたい気分だわ。でも、安藤くんってば借り物競争のお題は皆に有利な物にしたって言ってたけど、私には一体どんな『お題』を――)



 お題【名前】



「ふざけんじゃないわよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――ッ!」







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪

 せっかくの私の本編の出番……扱いが雑すぎないかしら!? まぁ、出番があるだけ何処かのバイトよりマシよね……」


「!?」 ← 何処かのバイト


「さーて、次回の『何故かの』は?」


次回「騎馬戦」 よろしくお願いします!


「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? 気分はグーよね♪ じゃあ、いくわよ?

 ペタペタ・ペタりん♪  じゃん・けん・ポン♪」 















































【ぐ~】


「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」

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