第213話「フルコース」
「はぁふぅ~、今日の部活はキツかったよぉ……。もう、先生ったらテニス部の試合が近いからってブーメランスネ○クが出来るまで特訓は無茶苦茶だよ~。
まぁ、最終的には出来るようになったからいいんだけど」
(でも、その所為でいつもより帰るの遅くなっちゃった。うぅ~、今日のご飯当番私なんだよねぇ……)
バタン!
「お兄ちゃん、ただいまー」
(流石にこの時間だと、お兄ちゃんも家に帰っているよね~?)
「おかえり~。なんか、いつもより帰り遅かったな?」
(やっぱりもう帰ってるよ~! 声の方角からしてリビングにいるのかな? とりあえず、早くご飯の用意しなくちゃ! 着替える時間もったいないし……とりあえず鞄だけ置いて、制服の上からエプロンだけかければいいよね? 確か、お兄ちゃんの好みもそんな感じだったし、サービス、サービ――)
ガチャ!
「お兄ちゃん、ゴメン! ちょっと、部活の練習が長引いちゃって……ご飯直ぐに用意するか――ら……?」
「おう、妹よ! ご飯の用意なら心配いらないぞ? 何故なら、お兄ちゃんが代わりに作っておいたからな! もちろん、ちゃんとお前の分もあるぞ?」
(どうだ妹よ! このご馳走を見るがいい! 今日の夕食はお兄ちゃんが久しぶりに本気を出したスペシャルディナーのフルコースだぜ!)
【安藤くんのフルコース】
・前菜『ローストビーフのサラダ』(スーパーで買ってきたのを皿に移しただけ)
・スープ『冷たいパンプキンスープ』(レトルト)
・魚料理『マグロのカルパッチョ』(スーパーの惣菜を皿に移しただけ)
・ソルベ(口直し)『バニラのシャーベット風味アイス』(爽ぅ!)
・肉料理『フレッシュバジルチキン』(惣菜)
・デザート『一口フルーツの盛り合わせ』(スーパーで売ってた)
・食後のコーヒー『
「……な、何これぇええええええええええええ!?」
(なんなの! この何処かのフレンチにでも出てきそうなフルコースは!? いつもは自分がご飯当番の時はす○屋の牛丼とかを買って来るお兄ちゃんがまさかの手作――いや……ちょっと、待って……これ、良く見たら手作りじゃないよね……? なんかどの料理も綺麗に皿に盛られているから騙されそうになったけど、よく考えればお兄ちゃんにこんな手の込んだ料理が作れるわけないし……多分、ほとんど惣菜とかだこれ! しかも、お兄ちゃんてばコース料理全部テーブルに並べきっちゃってる……フルコースって、全部のコース料理を一気に食べましょう! って、意味じゃ無いからね?)
(フッフッフ……流石の妹も、この兄の本気のフルコースを見て驚きを隠せないみたいだな! しかし、フルコースって始めて用意してみたけど、皿の量多くなりすぎじゃね? 本当はもう何品か用意するはずだったけど、流石にテーブルに並べきれないから七品だけに押さえたんだよな。テレビで見たフレンチのレストランとかテーブル超小さかったけど、あれで本当にフルコース全部並べられるのかな……?)
「さぁさぁ、妹よ。そんなところで立ってないで座ったらどうだ? せっかくのフルコースが冷めちまうぞ?」
「フレンチで『冷める』って……まぁ、せっかくお兄ちゃんが用意してくれたんだし、食べるけど……ありがとう」
「おう! 兄妹は助け合いだからな!」
「ふ~ん……」
(怪しい! 何これ! てか、キモ!? お兄ちゃんキモすぎてキャラ変わってるよ! お兄ちゃんって『ぼっちは一人で勝手に助かるだけだよ……だって、助ける友達も、助けてくれる友達もいないからな!』って、言うような駄兄ちゃんじゃん! なのに『兄妹は助け合いだからな!』って、絶対に何か裏があるよね!?
うーん、妹の長年の経験からすると……『兄妹は助け合い』=『お前(妹)のご飯当番を代わりにやったんだから、俺(兄)を助けてくれ』って、お兄ちゃん特有の謎理論がぶっ飛びそうだなぁ……)
「どうだ、妹よ。美味しいかい?」
「あ、うん……まるで、スパーで買ってきた惣菜みたいで美味しいよ。お兄ちゃん」
「アハハ! そうかそうか~」
(クックック……妹よ。食べたな? アーハッハッハ! これで、貴様はもう逃げられないぞ! 『兄妹は助け合い』そう! 俺は『兄』として、お前のご飯当番を代わりにやったんだから……今度は、お前(妹)が俺(兄)を助ける番なのだぁあああ!)
「それで、お兄ちゃんは一体私に何を頼むつもりなの?」
「ヒョッ!? い、、妹よ……一体、お前は何を言うのかなー?」
「だって、これ私に何か頼み事があるから、こんなことしてるんでしょ? じゃなきゃ、お兄ちゃんが私の代わりにご飯当番をやるなんてありえないし」
「妹よ! 何バカなことを言っているんだ!? お兄ちゃんだって、お前が風邪で倒れた時くらいは、料理当番代わってやってるだろ!?」
「それで代わってくれなかったら、兄と妹の縁を切ってるからね……?」
(てか、お兄ちゃんが私に何か頼む時は事前に私のご機嫌を取りに来るから分かりやすいんだよねぇ~。掃除当番やゴミ当番を代わったり、私の好きなプリンを買ってきたり、自分のお勧めラノベを貸したりと……最期のは全然嬉しくないんだけどね。
でも、流石にこんなフルコースとか作ってご機嫌を取ろうとするのは珍しいなぁ……だって、私の歯ブラシを間違って使った時だって、ここまでのことはしなかったよ?)
「お兄ちゃん、正直に言って……一体何したの?」
「……ねぇ、その俺が何かやらかしてる前提で話すの止めない?」
「ほら、お兄ちゃん。怒らないから正直に話して? 私のプリン食べちゃったとか? それとも、私のボディーソープ間違って使った上にぶちまけちゃったとか……?」
「いや、だから……これは、お兄ちゃんの純粋な心からの気持ちでな? てか、そのリアクションはラノベだと、絶対に怒る前フリ――」
「純粋な下心だよね?」
「――うぐっ!」
(仕方ない、ここは正直に言うか……)
「いやぁ~、実はちょっとしたお願いがあって……だな?」
「え、お願い? 何だぁ、そんなことか~。私ったら、お兄ちゃんがまた私の少女漫画勝手に読んでコーヒーでもこぼしたのかと思っちゃったよ~♪ それで、お願いって何? またラノベの買いすぎで金欠になったの? 先に言っておくけどお金なら貸せないからね? 当然、お母さんに頼んで前借も無しだから!
あ! でも、サクラお義姉ちゃんとのデート代とかなら、話は別だよ♪」
「妹よ……お前とは、ちゃんと話し合う必要がありそうだ……一体、お前は実の兄の何を見て育ってきたのか――」
「え、汚点?」
「そっか……」
(昨日、勝手に借りた漫画にコーヒーこぼしちゃった事は黙っておこう……)
「いやいや、金のことじゃないから心配しないで大丈夫だ。どっちかと言うと、お願いと言うより相談と言うか……」
「ふーん、それでどんなの?」
(相談かぁ~。じゃあ、生徒会関係かな? まぁ、確かに最近お兄ちゃんもいろいろ大変そうだし? お手伝いくらいなら……まぁ、妹だしね! これもお兄ちゃんの妹だから仕方なく――)
「ああ、実はだな……。妹よ! 次の休み俺とデートしてくれないか?」
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ♪
安藤くん、フレンチって『ぬるい』のが一般的なのだけど、知らないのかしら……。
さーて、次回の『何故かの』は?」
次回 「いつからデートだと錯覚していた?」 よろしくお願いします!
「じゃあ、いつもの『ペタリンじゃんけん』を始めるわよ! 出す手は決まった? もちろん、私は決めてるわ。じゃあ、いくわよ?
ペタペタ・ペタりん♪ じゃん・けん・ポン♪」
【パー】
「皆のコメント、評価、待ってるわ♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます