第151話「主人公」



「――っと言うわけで……ちょっと、本気で生徒会長目指そうと思うんだ」


「ほーん……ん? うぇ! な、何で?」

「山田ぁああああああああああ! アンタ、安藤くんの話をちゃんと聞いてたの? たった今その理由を説明してた所じゃないのよ!」

「うん、分かってた。どうせ、山田のことだから説明しても無駄だとは思ったけど、一応は俺の手伝いをしてくれている訳だから……委員長と一緒に俺の新たな決意を聞いてもらおうと思い、放課後の空き教室に集まってもらってまで、ことの経緯の説明をした訳だが……」


「おう! すまんな! なんか難しい話してたし、腹が減っちゃったからバナナ食うのに夢中になって安藤の話を聞くのすっかり忘れてたわ!」


「…………」


(てか、何でこいつは学校にバナナなんか持って来てるんだ?)


「はぁ……もう、山田はいいから外でも走ってついでに安藤くんの宣伝でもしてきなさい」

「おう! 分かったぜ! 安藤、話は良くわかんなかったけど、俺はお前を応援してるぜい!」

「……え?」


(やべ、ボーっとしてて、山田がなんて言ったのか聞き逃したぞ……でも、どうせ山田だし適当に返事しときゃいいか)


「うん、俺もキノコより、たけのこ派だよ~」

「そうか! 俺もだぜい!」

「…………」


(何でアンタ達はそれで会話できるのよ……)


「安藤、委員長! じゃあな!」 ポイ! ← バナナの皮

「ちょ、山田! バナナの皮を捨てて行くんじゃないわよ!」


 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお! 選挙してるぞおおおおおおおおお! 立候補してるぞぉおおおおお! 皆ぁああああああ! 応援よろしくなぁあああああああああ!」



「ま、待ちなさーい! こ、この……山田ぁあああああああああああああああ!」

「おいおい、このバナナの皮……誰が片付けるんだよ」


(てか、山田もアレじゃあ誰の選挙の宣伝か分からないだろう……いや、でもあの様子じゃ、山田が宣伝してるだけで逆にイメージ悪くなりそうだし、むしろこれでいいのか?)


「それで、安藤くん。邪魔者山田がいなくなったことだし、話を戻すけど……朝倉さんを生徒会長にするのではなく、安藤くん自身が生徒会長を目指すってことでいいのよね?」

「ああ、そうだ。でも、肝心の生徒会長になる『方法』が思いつかなくて困っているんだよ……一応は昨日から、どうやって生徒会長になるか考えているんだけど……これが中々いい案が思いつかなくてな。だから、委員長も一緒に考えてくれない?」


(最初は猿の手でも借りたいと思って山田も呼んだが、案の定使いものにならなかったからな)


「…………」

「ん? い、委員長……さん?」

「…………」


(正直、安藤くんの話を聞いても何で彼がここまで急に意見を変えて生徒会長を目指す気になったのかはイマイチ理解できないわ。話を聞く限りだと、石田くんの言葉に何か影響を受けたようだけど……でも、それで彼が自分の意思で生徒会長を目指す『決意』をしたのなら――)


「生徒会長になる『方法』ね……安藤くん、一ついいかしら?」

「おう、何だ?」

「安藤くんは、良くラノベを読むと思うけど……ああいうラノベの主人公って、序盤に『自分は平凡な高校生だ』みたいなくだりがよくあるでしょ?」

「ああ、そうだな。もはやそのセリフはラノベの常套句と言っても過言じゃないな。

 で、それが?」


「それなんだけど、安藤くんは

『何故、物語の主人公は平凡な高校生なのか?』

 ――って、考えた事はあるかしら?」







【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう。委員長よ。

 次回の『何故かの』はギャグなんて一切入る余地のない真面目なお話になる予定よ。え、デジャヴ? 気のせいでしょう!」



次回、何故かの 「ブラッディー・クロス」 よろしくお願いします!


「小さい頃、私は――」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。

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