第120話「補給」
コンコン♪
「入るわよ~」
(ん、朝倉さんのお母さんか……何かな?)
「…………」
「ど、どうぞ」
ガチャ
「安藤くん、今日の晩御飯だけど――って、あらあら~えーと、何をしているのかしら?」
「あはは……」
「ママ、見て分かるでしょ? 膝枕よ」
「うーん、それは分かるのだけど……何で、貴方が安藤くんに膝枕してもらっているの? 膝枕って普通は女の子が男の子にしてあげるものじゃないの? って、ママは思うのだけど……」
「それは……」
(まぁ、そうですよね。普通に娘の部屋に入ったら、仏頂面した娘が彼氏に膝枕されていたら疑問に思いますよね)
「これは安藤くんへの『罰』なのよ!」
「罰? あらあら~安藤は何か悪い事をしたのかしら? 一体なの罰なのかしら?」
「えーと……」
「ずばり『しばらく、私を可愛がってない罰』よ!」
「…………」
「…………」
シーン……
(ンンッ! 無言が辛い!)
「安藤くん……ウチの娘は一体何を言っているのかしら?」
「えーと……実は俺も朝倉さんも何故か生徒会選挙に出ることになって、ここ最近あまり会う時間が減っていたので、朝倉さん曰く――
『会う時間が減った分だけ、安藤くんは私を甘やかす必要があるわ! だから、さっきの件に関しては私を十分に甘やかす事で許してあげましょう! ま、まずは……手始めとして私は安藤くんに膝枕をご所望するわ!』
――とのことなんです……」
「ママ……つまり、そう言う事よ!」 スカーン!
「…………」
「…………」
シーン……
(だから、無言が辛い!)
「安藤くん、こんな面倒な娘だけど……ウチの子を宜しくね?」
「あ、はい……これも含めて面倒を見るつもりなんで、大丈夫です」
「……ぅ――ッ!」 ←嬉しくて悶えてる
「あらあらあら~~それなら、ウチの子は安心ね。ウフフ~♪」
「あはは……」
「…………」 テレテレ
(も、もう! 安藤くんったらこんなところで何てこと言ってくれてるのよ……もっと言ってくれてもいいんだからね!)
「ああ、それで、今日の晩御飯だけど安藤くんの分も用意していいかしら?」
「あー……いえ、今日は妹のご飯も用意しなきゃいけないので、ご飯は自分の家で食べます」
「あら、そう……? なら、自分の家でも食べるなら、安藤くんの分は少し少なめにしておくわね」
「あれ!? 俺、さっき普通に断りましたよね! なのに、何故かこっちでも晩御飯食べる事になっている!」
「ウフフ~♪ あと、三十分くらいしたらご飯できるから下に降りて来ていいわよ~~あ、そうだ。安藤くん、パパもさっき帰ってきて安藤くんと遊びたがっていたから、ご飯が出来るまで相手をしてくれるかしら?」
「あ、はい! じゃあ、直ぐに行きます!」
「ウフフ。じゃあ、宜しくね♪」
バタン
「えーっ! 安藤くん、行っちゃうの? ご飯が出来るまでこのままラノベ読みましょうよ~」
「いやいやいや、朝倉さん。彼女の家でそのお父さんを放置するわけには行かないでしょ……」
「むぅーーっ!」 プンスカッ! プンスカッ!
「朝倉さん、むくれてないで、俺の膝からどこうね? そろそろ、俺の膝も痺れてきちゃうから……」
「むぅ~~うーうっ!」 スカッ! スカッ!
コンコン!
「お父さん、いますか? 失礼します」
ガチャ
「…………ッ!」 ギロリ!
(やあ、安藤くん! やっとパパの部屋に来てくれたね! もう、すっごーーく待ちくたびれたんだからね!)
「あはは……すみません、朝倉さんが中々話してくれなくて……」
「……ッ!」 ギロリヌ!
(もーう、ウチの娘ったら仕方が無いなぁ~そういう、安藤くんにベッタリな所は誰に似たんだか……そうだ! それよりも、何して遊ぼうか!? 将棋? オセロ? それとも麻雀にする? なんなら、テレビゲームでもいいよ♪)
「いやいや、さっきお母さんがもう直ぐご飯だって言ってましたから、将棋とかは時間が無いでしょう。だから、パッと終るオセロでいいですか?」
「――ッ!」 ギロッ!
(OK! いいよ♪)
「じゃあ、俺は後攻でいいんで先にどうぞ」
「……ッ!」 ギギロッ!
(ふん! そんな余裕ぶって大丈夫かな? 実はパパ、オセロはこっそり特訓していたんだよ! フッフッフ……今日こそは勝たせてもらうもんね!)
「それはどうかな? ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
スカァ~スカァ~ ←カラスの鳴き声
「朝倉さん。もう日が暮れているからって、わざわざ俺を近くまで送ってくれなくてもいいんだよ? てか、彼女が家に帰る彼氏を外まで送るって……なんか違くない?」
「べ、別に……彼女が彼氏を外まで送ってもいいじゃない! こんな夜更けに安藤くんを一人で帰らせるわけにはいかないでしょ!」
「いやいや、それはおかしいから……」
(まぁ、どうせ家で俺が朝倉さんのお父さんにかまい過ぎていたから、少しでも二人でいたくて見送りしてくれる――って、理由なんだろうけど……それでも、朝倉さんが帰りに一人に買っちゃうからな……)
(だだだ、だって、安藤くんったらせっかく二人でラノベ読んでたのに、直ぐにパパやパパの相手するんですもん! ママもパパも安藤くんのこと好きすぎでしょ! 安藤くんは私の『彼氏』なんだから!) プンプン! スカスカ!
「それで、安藤くん。何故か食事の時にパパがすっごい落ち込んでたけど一体何をしたの?」
「あー……ちょっと、オセロで……ね?」
「また、全力で叩き潰したのね……まさか、盤面真っ白に染めたとか?」
「いいや、半分くらいしか白く染まらなかった」
「え? じゃあ、結構パパも善戦したのね」
「いいや……残りの半分は『緑』一色です」
「まさかの半分もオセロの駒を置かせてもらえなかった系!?」
(いやぁ……だって、お父さん普通に弱いんだもん。なのに何故か毎回ボードゲームで挑んでくるからな)
「朝倉さん、もう俺の家に付くし送ってくれるのはここまででいいよ。いつも、送ってくれてありがとうね」
「うー……」
「朝倉さん、どうしたの?」
「安藤くん分が足りないわ……」
「……なんだって?」
「もう! 安藤くんったら、やっと私の家で長く居られたのに全然私をかまってくれないんですもの! こんなんじゃ、連日不足気味の『安藤くん成分』が全然補給できないって言っているのよ! そ、それくらい……私の彼氏なら分かりなしゃいよね!?」
「そ、そうかぁ……朝倉さん、気づかなくてごめんね?」
「あ、安藤くん……」
(はっ! この流れ……イケるわ! そっと目を閉じて――)
(ヤバッ! 何この可愛い生き物!? なんだコレ! あ、俺の彼女か……しかし、これはもしかして何か誘われているのでは? それってやっぱり、キ――って、ちょっと待つんだ俺!
ここで舞い上がって、勢いでキスとか無理じゃね? だって、ここ夜中で人はいないと言っても普通に外だよ? 外でいい雰囲気だからってキスしているカップルとか見たら、俺なら間違いなく――
『リア充、爆発しろ!』
って、言って壁を殴るね。いくら、俺に朝倉さんみたいな彼女が出来たからって言っても俺は普通の『ぼっち』に過ぎないんだ。こんな道中で軽々しくキスなんてする度胸は正直持ち合わせていない……
それに、朝倉さんは恋愛に関しては少々ポンコツになると言っても、基本は常識のある美少女。そんな朝倉さんがただ『かまって欲しいから』なんて理由で『ぼっち』の俺にキスをねだるなんてこと――)
「むぅ――」 ←キス顔
「…………」
(あ、安藤くん……まだかしら?)
(メチャクチャねだってたぁあああああーーーーっ!?)
「むぅーっ! むぅーぬ!」 ←キス顔
「…………」
(や、ヤバイ……これ、俺がアクション起こさないと動かない奴だ。しかし、どうする? 本当にここでキスをするか? いやぁ~普通に無理だわ……こんな状況でキスを出来るほど『ぼっち』の俺は強くない。むしろ、意識してしまった以上もうダッシュしてでもここから逃げたい気さえある。
どうしよう……いっそのことこのまま『え、なんだって?』とか言って、朝倉さんを放置してガチで帰るか? いや、そんなことをしたら生徒会長がどうとか言ってられなくなる気がする……でも『キス』は流石にハードル高いし、そもそも俺が朝倉さんなんて『崇高な存在』に手を出せる度胸は出せても年に『二回』が限度だ。そして、それも『演劇』と『夏休み』で今年の分は使い果たしたし、キスは来年の俺に期待しよう。
だから、今の俺に出来る限界は――)
「むぅ……う?」
(安藤くん、まだ――かしら? なんか、私さっきから美少女にあるまじき表情を続けている気がするのだけど……あ!)
ポンポン
「朝倉さん」
「安藤くん――って、何で頭をポンポン撫でているのかしら? 私は別のモノを要求していたつもりなのだけど?」
「あはは……ゴメン、それはまた今度ね? だから、今日はこれで許して欲しいなぁ……」
「うぅ~……足りない!」
「いやぁーでもね?」
「た・り・な・い~~ぃ!」
「ほら、ここ外だから……ね?」
「むぅ~分かったわ。はぁ……」
「ゴメンね。朝倉さん」
(良かった……納得してくれたか)
「だから――」
「え」
(朝倉さんの口が俺のほっぺに――)
「今日は、これで許してあげましょう! 安藤くん、またね!」
「……うん、朝倉さん。また明日!」
「むへへ~♪」
(安藤くん成分補給完了! これで明日も頑張るぞい♪)
「…………」
(やっぱり……朝倉さんには敵わないなぁ~)
【次回予告】
「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。
さーて、次回の『何故かの』は?」
家に帰ってきた安藤くんを待ち受けていたのは、お腹を空かせた妹ちゃんだった!
しかし、家にはご飯を作ろうにも妹ちゃんの嫌いな「ピーマン」しかない!?
果たして、安藤くんは妹ちゃんに美味しいご飯を作ってあげることができるのか?
次回、食戟の安藤くん 「隠し味(隠れてない)」 よろしくお願いします!
「私はピーマンを入れないお兄ちゃんが、大好きだよ♪」
* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。
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