第98話「作戦会議」
カランカラ~ン
「いらっしゃいませー」
「では、ここに『第二回、朝倉さんの交際作戦会議』を始めるわよ」
「はーい♪」
「ちょっと待って! 委員長、モモ、その『朝倉さんの交際作戦会議』って何なの!?」
「これはせっかくの夏休みだって言うのに、プールに行っただけで何も進展しない朝倉さんを心配した私と桃井さんが始めた『人助け(暇つぶし)』よ」
「因みに、第一回の会議ではサクラと安藤くんをプールに誘う結果になりましたー」
「あのプールもそれの一環だったの!?」
(そういえばプールに行くきっかけをくれたのもこの二人だったわよね)
「それで定期報告を聞きたいのだけど……ズバリ、朝倉さん! 貴方、安藤くんとはどこまで進んだのかしら?」
「サクラー? ズバリそこんところどうなのかなー?」
「へ!?」
「「んーー???」」 じーーーー
(流石にこの夏休みの一カ月間一緒にいて……)
(何もないなんてことは無いよねー?)
「……………」 サッ ←目をそらす音
「「ま、マジで……?」」
「…………」 コク
「朝倉さん、貴方この夏休み何してたの……?」
「ち、違うのよ……私だってもっと安藤くんと関係を進めたいとは思っているのよ……」
(でも、進めようと思ってもどうしたらいいか分からないんだもん! 安藤くんだってそういうの? なんかリードしてくれるようなタイプじゃないし……)
「うーん、因みになんだけど……サクラ、恋愛のABCって知ってる?」
「ちょ! 桃井さん、それって朝倉さんにはまだ早――」
「…………まーと?」
「……うーん、ちょっと違うかなー?」
「これは早急に対策が必要ね……」
「?」
(二人ともどうして頭を抱えているのかしら?)
「いい、サクラ? 恋愛のABCっていうのは、カップルにおける恋のステップなんだよー? このステップを踏むことでカップル力が強くなるといっても過言ではないのです!」
「カップル力!? なにそれ凄い強そうだわ! モモ、是非それを私に教えてちょうだい!」
「いらっしゃいませぇ……」
(いや、カップル力って何よ?)
「じゃあ、サクラのために教えてあげるよー♪ まずAは『キス』だよ! カップルとしての最初のステップだねー。因みに、サクラって安藤くんとはもうどれくらい『キス』したの?」
「まぁ、もう付き合っているわけだし毎日朝倉さんの家に行っているのだから『キス』くらいなら数回はしててもおかしくないわよね……」
「…………え」 すかーん
「「 え 」」 ぼいーん
「ま、まだ……あの演劇の日にしただけで…………」
「嘘ぉお!? あの演劇の時の一回だけ!?」
「あの日以降は一回も『キス』してないの!」
「う、うん…………」
(正確には演劇の日にしたのは『二回』だけど、結局その日以降は一回もしてないのよね……)
「これはこれは……委員長、サクラのこの夏休みの課題は『安藤くんとキスをすること』に決定だね」
「簡単なはずなのに今の話を聞くとかなり難しい課題に思えるのが不思議ね……」
「うぅ……」
(まぁ、安藤くんって『ヘタレ』っぽいし、仕方ないねー)
(どうせ、安藤くんは『ヘタレ』だから、仕方ないわね……)
(わ、私は悪くないわ! 安藤くんが『ヘタレ』なのが悪いのよ!)
「因みに他のBとCは――って、あれ? ねぇ、委員長。Bって何だったけ?」
「ひゃい!? も、桃井さん? そそ、それを私に投げるのって、酷くないかしら!?」
「えー? だって、忘れちゃったんだから仕方ないじゃんー?」
「も、もう……」
「委員長、私も気になるわ。Bって何なの?」
「うぅ、それは――……えーと、あれよ『ボディタッチ』よ!」
「あ! そうだったー。私ってば、うっかり♪」
「…………」
(この野郎……)
「ふむふむ……なるほど『ボディタッチ』ね。なら、私それはクリアしているわ!」
「うぇえええええ!! 朝倉さん! それは本当なの……?」
「へー……サクラすごーい!」
(うそ、まさか……朝倉さんもう安藤くんと『そんな関係』に――)
「だって『ボディタッチ』なら、事故だけど安藤くんに『胸』を揉まれたことがあるもの!」 スカーン!
「あ……そうか、あの時の話ね。そ、そうよね……」
「じゃあ、Bはクリアだねー」
(そう言えば、私あの時に安藤くんから相談を受けたのよね……今思い出すと懐かしいわね)
「つまり、今のところサクラは恋のステップのABCを着実にクリアしてると……なら、最後は『C』だけだね!」
「「最後の『C』……」」
「最後の『C』はねー?」
「「最後の『C』は――」」
「「……………」」
「『アレ』……だよ♪」
『キャァーー!』
「嫌! 桃井さんってばハレンチよ!」
「そんなこと言ってー? 委員長こそー」
「ふふ、二人とも盛り上がっているけど……つつ、つまり、それを私がやるって事よね!?」
「そうだよー」
「そうね……」
「無理無理無理!! そんなの絶対にできるわけないじゃない! 私、無理よ!?」
(やだ……だって、私の方から安藤くんを誘うってことでしょ!?)
「朝倉さん、覚悟を決めなさい! このまま待っていても貴方の彼氏は『ヘタレ』だから絶対に手なんか出してこないわよ!」
「う……」
「そのために貴方から行動を起こすのよ! だからこそ、最大の目標は夏休みが終わるまでに『プランC』を成功させることよ!」
「せ、せめて課題の『A』くらいで……」
「サクラ、甘いよ! 甘い、甘すぎる! そんな覚悟じゃ課題の『A』ですらクリアできないよ! せっかくの『恋人』になったのにサクラはそれでいいの?」
「そ、それは……確かに嫌だけど」
「朝倉さん! 別に正直に言ってこの目標は本当にやらなくてもいいわ……でもね。これは気持ちの問題なのよ」
「気持ちの……問題?」
「ええ、つまり『C』をやっちゃうくらいの覚悟で攻めろってことよ! 貴方の彼氏はあの『朴念仁ヘタレラノベ男』よ? あれを相手に『A』をするのも正直厳しい戦いになるわ……だからこそ、いっそ『C』をやる気で挑まなければならないのよ!」
「うんうん……生半可な覚悟で行けば絶対にこっちのアピールをスルーしそうだもんねー」
「た、確かに……」
(正直、どんなに考えてもあの『安藤くん』が狼になる姿なんて想像できないわ……てか、むしろアピールして誘っても平然とラノベを読み続ける姿が目に浮かぶわね)
「いい? 朝倉さん、チャンスはいくらでもあるのよ……あとは貴方の覚悟だけ」
「私の覚悟……分かったわ! 私、この残りの夏休みを使って、安藤くんを全力で誘惑して見せるわ!」
(結局のところ『C』って……『ハグ』のことでいいのよね?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます