◌
イライラしながら、リオンはもっと先をきいてやろうと考えた。
「それで、その娘がどうしたっていうんだ?」
リオンには昔話をたらたらと聞いていられる余裕がなかった。
きつく結ばれた胸紐に体が圧迫されてしまっている。せいいっぱい苦しいのを耐えて耳を傾けている。
だから、二人のうちどちらにしろ、もうちょっと短く話してくれないと困る。
だが女将は素知らぬ顔でつづけた。
「私もねえ、騎士様のご令嬢だし、てっきりそういうふうに呼ぶものだって……」
リオンのかわりにチャンプが大声を出した。
「おふくろ、そこは省け!」
「ああ、そうかい。じゃ、あんたが言いなよ」
女将が言うと、チャンプは一瞬黙った。
腕を組み、首をかしげている。
「なんだって……? なにをどこからどう、話せばいいんだ?」
途方に暮れた様子だ。視線が遠い。今度はうつむいて考えこんでいる。
「それが私にもわからなくって……ねえ?」
同意を求められてもリオンは困るのだ。
気の毒にも、その時点ですでに蒼白になっていたリオン、
「ごめん……あ、あの……この胸の紐、ほどいて……」
もう、卒倒しそうだ。きつくてきつくてたまらない。
ところがチャンプは面倒くさそうに巻き舌でまくしたてるのだ。
「それくらい自分でやれや。なんたって、もうすぐおまえの命が危ういんだからな」
「はあっ?」
リオンはたまげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます