◉
リオンは口の中をいっぱいにさせながら、シガールの肩をたたいた。
「んぐっ、んん、んんっ」
「んだあ? リオン、口のものはのみこんでからしゃべれよ」
それどころではない。リオンは、急いで咀嚼し、無理に飲みくだす。
「んっ……く。あれ、ちょっと見ろよっ」
ちょっと嫌そうなシガールのアゴを、両手でつかんで漆喰の壁に向けさせた。
「ん……あー、あれがどうかしたのか」
シガールはすっとぼけているのか、てんでピンとこない様子だ。
リオンのさす方向に、でかでかと紅と青と黄の紙に押した文字。『剣術大会』とある。
「どうかしたじゃあない! チャンスだ。シガール、あんたの好きな一攫千金じゃないか」
すらっとぼけて耳あかなんぞをほじっているシガール、のんびりと、
「なにが」
リオンはその背中を勢いよくはたいた。
「なにがって!」
リオンは張り紙をはがす。両手が感情に呼応して震えていた。
「これだよこれ! 剣術大会だっ。優勝したら黄金か、騎士団に推薦されるんだって!」
ああー……と首をまわしつつ、シガールはやる気のない返事。
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