リオンは口の中をいっぱいにさせながら、シガールの肩をたたいた。


「んぐっ、んん、んんっ」


「んだあ? リオン、口のものはのみこんでからしゃべれよ」


 それどころではない。リオンは、急いで咀嚼し、無理に飲みくだす。


「んっ……く。あれ、ちょっと見ろよっ」


 ちょっと嫌そうなシガールのアゴを、両手でつかんで漆喰の壁に向けさせた。


「ん……あー、あれがどうかしたのか」


 シガールはすっとぼけているのか、てんでピンとこない様子だ。


 リオンのさす方向に、でかでかと紅と青と黄の紙に押した文字。『剣術大会』とある。


「どうかしたじゃあない! チャンスだ。シガール、あんたの好きな一攫千金じゃないか」


 すらっとぼけて耳あかなんぞをほじっているシガール、のんびりと、


「なにが」


 リオンはその背中を勢いよくはたいた。


「なにがって!」


 リオンは張り紙をはがす。両手が感情に呼応して震えていた。


「これだよこれ! 剣術大会だっ。優勝したら黄金か、騎士団に推薦されるんだって!」


 ああー……と首をまわしつつ、シガールはやる気のない返事。

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