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「またか!」
音高く立ち上がったのを見て、チャンプはのほほんと器の中身を空けた。彼はのどぼとけを上下させて、あおむいた唇をなめる。
「それしかねえだろ? 喧嘩する体力もないくせしてよ」
『……それは……だれのせいだ』
しかしよく考えてみれば、チャンプは彼なりに、気遣ってくれている。歩合給というのも、リオンに心苦しい思いをさせないためだろうし。厳しいかと思えば、適当にやれという。
――あんたってやさしいのか、実は。
リオンがしんみり思ったとき。
「さあ、寝るか。朝寝だ、あさね」
リオン独り働かせて、自分は朝寝?
「店は……?」
不審げに聞くと、返答がこう。
「きょうは俺は休み。かわりにおまえが入ったから」
青年はシーツにもぐりこむ。そしてさっさと高いびきだ。
そういうものかもしれない。
リオンはあきらめた。何を言っても相手が有利だ。しかたがない。
限りないドジを踏んだ。再び通りに立つリオン。
その彼の前に、不思議な動物が引く車が現れたのだ。
優雅に通り過ぎていく。その変わった車はリオンの前で大きく向きをかえる。
その生き物は全身金色で、黄褐色のたてがみだ。全身が長毛に覆われて、目は大きく、まつ毛が長い。複雑に編まれた尾は、ゆったりとした足取りにあわせて左右にゆれている。
クルマの方といえば、きゃしゃなつくり。
ホロもなにもない。乗客は身なりの良い人物だ。
そちらを見ていると、車が曲がっていった角から、くたびれたボロキレのようなものが転がりだしてきた。
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