第12話

「ほら、こっちに来てみろ。」

 鋳込み作業が一段落ついたので、銀は細工場の外へ休みに行った。なっちもそれにくっついて行こうとしたのだが、一太に呼び止められた。

「これが父ちゃんの作った釜だ。」

 一太が座っているむしろの上に、底の丸い鉄の入れ物がごろごろと転がっている。当然の事ながら、かまどにちゃんと引っかかるよう、立派なつばが付いている。

「あっ。これ、一太の家にもあったよね。ごはんの良い香りがして来た……」

「お前、本当に知らなかったのか?」

「う~ん。」

 そう言われれば、テレビの時代劇か何かで見た事があるような気もした。けれど実物を見るのは絶対に初めてだ。

 一太はなっちの奇妙な振る舞いにすっかり慣れたらしく、特に不審がったりせずに、手近な釜の一つをごろんと裏返した。

「鍋・釜の良し悪しは尻を見ると分かるんだ。鉄を注ぐ口がここだから、下手な職人がやるとどうしても汚くなる。」

「ふうん。」

 確かに銀の作った釜に目立った傷などはなかったが、生まれて初めて釜を見る者に、その良し悪しが分かるはずもない。

「父ちゃんの釜は綺麗だし、何より丈夫なんだ。なっちも大きくなって釜を買う時が来たら、ちゃんとひっくり返して選ぶんだぞ。」

「うん。分かった。」

 力強くうなずいてみたものの、そんな日が来るのかどうか、なっちには見当もつかなかった。

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