第135話 店の奥では情報交換です1

「んじゃあ俺からだな」


 アヤト達が通されたのは店の奥。店の棚以上にごちゃごちゃと物が並んでいる倉庫だった。ランプの炎が揺れる。それに照らされているが、中は薄暗い。そんな部屋の中央に直径一メーテ半ぐらいの丸テーブルが置かれており、アヤト達五人はそれを囲むように立っていた。

 どうやらこの部屋は在庫の置き場であると同時に、情報屋として機密情報を取り扱うための部屋でもあるらしい。

 リベルトさんはテーブルの上に公国周辺の地図を広げネロさんに問うた。


「さて、近々学会週間があるわけだが、今年もネロは協力してくれるってことでいいんだな」


「ええ、そうするつもり。それで、広げた地図はそのことに関係があるのかしら」


「それなら例年通り東地区の警戒を頼む。地図のほうは次の話の予定だったが、一応学会週間中の警戒にも関わってくる。とりあえず話していこうか。女坊主、ここから先の話を後で三人組にも伝えておけ」


「分かりました。あと、女坊主って呼ぶのは――」


 アヤトの文句をまたまた聞き流し、リベルトは地図を指差す。人差し指の先にあるのはヴァリア公国の東側、カルバディア連合帝国である。複数の国からなるその国土面積はヴァリア公国の十倍は下らない。


「連合国家だからかそれぞれの国が自由に動いたりすることもあるらしい。それで今回この国、西カルバディア国が部隊の集結を進めている。反乱か、それとも隣接しているこちらに攻めてくるかははっきりしていないが、まあ十中八九ヴァリア公国への侵攻の準備だろうと俺達騎士団は思っている」


 ハッと息を呑むアヤト、ミリア、ルーシェの三人。ネロさんは額にしわを寄せている。そして重々しく口を開いた。


「ったく、なんでそんな戦争したがるのかねぇ。資源とかだって自国内にいくらでもあるだろうに。それで、侵攻に備えて三師団の魔導具の総メンテするんだね」


「ああ、そうだ。日時についてはまた後日知らせる。恐らく学会週間の直後になるだろう」


「了解了解」


「そしてここからが学会週間に関わってくるんだが、この期間中にカルバディアのスパイが入り込むかもしれない。もちろん騎士団でも警備は強化するが、やはり北地区以外では手が回らなくなる可能性が高い。だから、いつもより一層気を付けてくれ」


 締めくくったリベルトは、全員が頷くのを確認する。


「俺からは以上だ」


「んじゃ次は私だね」

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