第107話 三日目の顛末です4

「え、えーっと……。」


さてどうしようかと、周りを見ると

アデクは左耳を抑え、取り巻きは目を見開いたまま固まっている。

うーん、もう行っていいかな?

っていうか早くここから離れたい。

じゃないと――


「おい、だれかいるのかっ?」


あーあ、先生が来ちゃった。

あれは隣の教室、高学年クラスの担任だな。

今日もどこがとは言わないが輝いていらっしゃる。

多分だれか埋まっていないか確認しに来たのだろう。

現実逃避気味にそう考えていると、

先生は僕たちを見つけて言う。


「まさかお前らがこれをやったのか?」


その問いに、アデクとその取り巻きは一斉に右手を動かし始める。

そう、僕の方を指さしたのだ。


「お前か。一体どうやったんだ……」


「え、えーっと……

老朽化が進んでいた……のかな?

あはは……」


苦しい言い訳である。

白い目でこちらを見る先生。

彼はそのあと、瓦礫の方を見てから

もう一度僕たちの方を向く。


「だれか崩落に巻き込まれた奴はいないな?

……そうか、とりあえずアヤトは職員室に来い。

それとアデク、ドクトさんのところに行ってこい。耳がやられているだろ。」


そう言った先生に連行されていく僕であった。


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これが今、父に説教を受けている原因である。


「まあ、ここまで怒ったがお前が悪いわけではないのはわかってる。

だけど、学校に迷惑をかけたのも、アデクに怪我させたのも事実だからな。

明日は謹慎だ。」


あの後、父と母が学校に呼ばれ、校長先生と話し合いが行われた。

その途中、アデクを連れてドクトさんがやってきて、診断の結果を話していった。

外傷性鼓膜穿孔。つまり、鼓膜破裂だそうだ。

その結果を重く見た父は、別に何もしなくてよいという校長と話し合い、

そして僕に一日だけの謹慎処分が言い渡されたのだった。


うん、故意ではないとはいえ校舎を壊して、

人に怪我までさせたのだ。妥当かなと思う。


「説教はここまで。」


ようやく僕は父に解放されたのだった。


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どうしよう。

練習も禁止されてるしなぁ。

次の日、つまり謹慎日当日。

僕は暇を持て余していた。

今日の授業の分は家でやっておいてねということで

教科書は持って帰ってきているのだが、

例によって知っていることばかりで、勉強する意味もない。

やることもないし書庫に行こうと、廊下を歩いていくと、

先に父が入っていくのが見えた。

あれ?研究室に引きこもっているんじゃないの?

疑問に思いつつ、僕もドアを開けるのであった。

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