第45話 公都の中を散策です7

……ズズズッ


「お、おいしい~。」


涙が出そうになった。


「おお、アヤト。気に入ったか。」


コクコク。


「それは、ラアメンと言ってな……」


うん、知ってる。

これを見つけた時には本当に驚いたのだ。

いままで、小麦はあっても麺類を見かけたことが一切無かったから。

食べてみればまさしくラーメン。

その味の懐かしさと、もう食べられないと思っていた料理と出会った感動で

一杯になっていたのだ。

こっちの世界でも食べられるなんて……

はぁぁぁ~~


気付けば器が空になってしまっていた。


「「「ごちそうさまでした。」」」


公都に来たときには絶対またここで食べるぞ、と決意しながら

この大衆食堂をあとにするのであった。




「広場に戻ってきたけどこれからどうするの?」


「特に行きたいっていうところが無ければ、

俺が知っておいて欲しいと思うところを紹介して回ろうと思うが。」


「僕はいいけど……

知っておいて欲しいって?」


「結構先の話になるが、おまえが初等学校を五年で卒業した後、

普通は高等学校に入ることになるのだが、それがここ公都にあるんだ。

だからそこも含めて、いろんな施設を見せておきたいということだ。」


「なるほど。分かった。」


「フリッツもそれでいいか?」


「ああ、今後ミリアに教える時の参考にさせてもらうよ。」


「そうか。じゃあ早速北地区に向かうぞ。」


そう言って父が先頭に立って歩き始めるのであった。




さて、ここで問題です。

公都民に聞いた、東西南北の地区のうち一番迷いやすい地区は?


チッチッチッチッ……


正解は、ダントツで北地区でした~。

ちなみに二位は東でその後に南と続き、

一番わかりやすいのは西地区だそうだ。


父からそう聞きながら、

北地区に着いた僕は思わず納得してしまった。


まず、広場の北には会議場があるため、北に通りが伸びていない。

したがって、北地区に行くには西の大通りか、

北東に伸びる通りから回って行かないといけない。

さらに、北地区は土地利用に加えて最先端技術を研究しているところもあるために防衛のことも

考えて、地下を含めた二層構造になっているのである。

建物の形も、三角柱や楕円柱など様々であり、

気を抜くと、たちまち方向感覚を失ってしまうのである。

そんな複雑な構造のせいで、一部の住民からは

「ベルバリア北迷宮」と言われているとかいないとか。


だが、さすがに何年も通っているからか、

父は迷い無く進んでいき、近道なのか地下に潜ったり

かなり細い道を通ったりして、大きな建物の前に出たのであった。

壁は大理石でできており、年季が入っているようである。


「ここが、公国立中央図書館だ。」


父はそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る