第44話 公都の中を散策です6

「まず、これがね……」

ほうほう。


「で、ここに最新の……」

うんうん。


「こっちは、また別の研究で……」

なるほど。


「おーい、アヤトー、ネロー?」


「次はこれで、なんと……」

ほぉ、そんなことまで。

……ん?


「「なにか言った?」」


「よくそんなに話し込めるな。

もうちょっと自重したらどうだ。

片や四歳児だぞ、ネロ。」


「いいじゃん。

この子も楽しんでるみたいだし。

それに、オスカー教授には言われたくないね。

三歳児に魔法の講義をするような人には。」


うっ、と答えにつまる父。

そして、誤魔化すように咳払いをする。


「もうそろそろお昼だから

おいとまさせてもらおうと思うのだが、

フリッツはなにかあるか?」


「いや、大丈夫だ。」


「そうか。

それではネロさん、また。」


「はーい、オスカー教授。

フリッツもまた今度意見交換しましょう。

アヤト君も機会があったらまた来てくれると嬉しいな。」


「了解了解。」

「はい、近くに来たらまた来ます。」


そうして、僕たちは公都の魔導具店を後にしたのであった。


再び職人街に出ると、今度はモーニングスターやチャクラムが置いてあった。

一体誰がそんな特殊な武器作ってるんだ……


これからお昼ご飯に向かうわけなのだが、

父がなにやら言い出した。


「さて、ここで問題です。

これからご飯が食べたい。そんな時、公都の広場からどっちに行けば

レストランの多い地区に行けるでしょうか?」


なんかテンションが高いなぁ。

それはそうとして、レストランの多い地区か……


「ヒントはな――」

「南。」


「せ…正解だ。……ヒントぐらい言わしてくれよ。」


がっくりと肩を落とす父。

そこまでガッカリしなくても。


「それでアヤトは、どうして南だと思ったんだ?」


「今まで回った場所の雰囲気から。」


そう答えると、父はなるほどと頷き、説明を始めた。


「公都の建物はな、生産、経済活動などが効率的に行えるように

計画されて配置されているんだ。」


特に南地区は、西に劇場や美術館などの集まる芸術地区があり、

東には職人街をはじめとした工業・生産地区があるため、

観光客の移動がスムーズになるように宿は西寄りに、

商品の移動がスムーズにいくように市場や店舗は東寄りに多くあるらしい。

そして、観光客を捕まえやすく、素材の調達が簡単にできるため、

南地区の真ん中辺りに飲食店は多いらしい。


そんな南地区に歩いてきて、


「着いたぞ。」


「ここは?」


目の前にはちょっと大きめの建物があり、

中からはざわざわと人の声が聞こえてくる。


「俺がよく利用しているところだ。

本当は大学内にも食堂はあるのだが、

こっちの方が気に入ってるんだ。」


「へぇ~。」


そう言って建物の中に入ると、

そこは、向こうの世界で言う

フードコートであった。

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