第27話 子供達はピンチです

「ビートっ。」


「……ゼェーゼェー……、ユ…ッド…さん。」


「もう大丈夫だ、息を整えておけ。

……おまえら、まずはワーウルフを片付けるぞ。」


ビート君に答えてから、ユッドさんは騎士団員に指示を出します。


「いつも通り前衛二人、後衛二人で当たれ。

俺は側面から遊撃する。」


四人の騎士さんが台形のような形で位置をとりました。

そして、跳びかかってきたワーウルフを前衛がはじいたところで、

後衛の一人が火球を打ち出します。

正面からまともにくらった敵が後退し、足を止めたところを……

ユッドさんが目にもとまらぬ速さで切り裂きました。




そのまま見事な連携で、ワーウルフを全滅させた騎士さん達は……


ビート君と一緒に走ってきた十五歳ぐらいの少年に剣を突きつけたのです。


「おまえは、『暁の旅団』のレンだな。」


「そうですけど。」


「とりあえずギルドの方に来てもらおうか。」


「まってくださいっ。」


ここでビート君が割って入りました。


「なんだ?」


「そのひとは、ぼくたちをたすけてくれているんです。

はやしで、もっとたくさんのワーウルフにおそわれて、

おうえんをよびにきたんです。

はやくしないと、みんなが……」


「もっとたくさんだと?」


「はい、彼の言うとおりです。

うちのリーダーは百はいると言ってました。」


「ワーウルフが百だとっ?くっ、おまえのことは後回しだな。

緊急出動だ。副団長に伝えろ。

『林にてワーウルフの掃討を行う。推定数は百。

村の東以外の見張りは無しに変更。

東は六人に増員。万が一に備えて副団長を含める。

残りの全員で掃討に向かう。

この通達から三ミニいないに村の東に集合せよ。』

復唱の時間も惜しい、行ってこい。」


「了解。」


二人の騎士団の方がギルドに向かって走って行きました。




それから五ミニして、私たちの前には

ユッドさんを含めて二十四人もの騎士さんがいました。


「逃がすつもりは無いが、万が一逃げられた場合を考え、

逃亡したワーウルフによる村の被害を抑えるために、ここに六人残す。

ここの指揮権は副団長に委譲する。」


「了解。指揮権受領しました。」


「その他の者は、掃討へ向かう。スリーマンセルを組め。」


「了解。」


「すいませんが、メアリーさんには案内をお願いします。

私の隊が守りますので。」


「分かりました。でも、護衛は要りませんよ。」


「やっぱりですか。」


ユッドさんは苦笑します。


「お~い、メアリーさん。持ってきたぞ。」


フリッツさんが、村の方から全力で走ってきます。


「フリッツさん、ありがとうございます。」


「五ミニで持ってくるなんて、大変だったんだぞ。」


「はい。お疲れ様です。」


ふぅ、と彼は息をつくと、私に二つの魔導具を渡してきました。


「いつも使っているの程とはいかんだろうけど、

十分じゅうぶんこれでいけるはずだろう。」


「ええ。」


私とフリッツさんは笑みを交わし合います。


「二人とも、そろそろ行きます。

これより、ワーウルフ掃討作戦を開始する。」


ユッドさんは全員を見て言いました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


林に入って七ミニ、


「多いな。」


ワーウルフと戦いながらユッドさんは言います。

私たちももちろん戦っています。

前衛はフリッツさん、

一番動きの少ない後衛に私が、

中衛にレンさんといいましたか少年が入るという、

なんだかおかしなパーティーになりました。


ワーウルフが多いとはいっても、こちらは私たちを含めて七隊いますし、

行軍を早く進められています。


「あとどれぐらいですか?」


レンさんに聞くと


「ここで半分ぐらいです。」


「そうですか。」


まだ半分ですか。

不安と心配でいっぱいです。

アヤト、どうか……どうか無事でいてください。

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