第13話 おつかいは楽しいです4

三人組と遊んだり、村の散策などをして

夕方まで過ごした僕は、

もうそろそろ帰る頃だろうと思い、

家へ……違った、レグムさんの八百屋へ向かった。

わ…忘れてたんじゃないぞ。


レグムさんのお店は村の東寄り、中央広場から三ミニ程歩いた所にあるこの店だ。

向かいはヴィアンさんの肉屋で、この二つの店はライバル関係。

昼時には、


「はいはい、肉だぜ。安いよ~。あそこのしけた野菜なんかより、ガツンと肉を食わなきゃ。」


「いやいや、肉ばかり食べてると、体壊すよ~。時代は野菜、菜っ葉に根菜。

 あっちのくっさい肉なんかより、新鮮な野菜を買っていくんだよ~。」


「なにぃ?」


「しけたですって?」


バチバチバチッ


こんな風に、醜い……激しい商戦が繰り広げられている。

どっちもいい品物ばかりなんだから、普通に宣伝すればいいのに……


そんなこんなでこの村の名物になっている八百屋に目を向ける。

店先には、深い緑色の葉っぱ、真っ赤な丸い果実、

まだ土の付いた根菜が並んでおり、

店の奥にはそれらの脇役のように、

毒々しい紫色のキノコが……

……

やはり何回見ても慣れない。

初めて見たときびっくりして母に聞いたら、


「あれは、薬になるのよー。」


とのこと。どうやら薬草なども八百屋で売っているらしい。

他に売る場所もないし、栽培している人も居るからだとさ。


「アヤトちゃん、よく来たわね。」


赤いエプロン姿の女性が出てくる。この人がレグムさんだ。


「今日はメアリーさんは一緒じゃ無いのね。」


「はい、おかあさんはいえにいます。」


「そう。一人で偉いわねぇ。何を買いに来たの?」


僕はメモとかごを渡す。


「これとこれと、あとこれね。」


かごの中に色とりどりの野菜と……

例のキノコや、赤い棘のついた葉っぱが手際よく入れられていく。

うげ、母よ野菜と一緒にあんな物頼んだのかい。


レグムさんは、メモの一部を指して言う。


「ごめんね。これはもう無いわ。三日前ぐらいから入荷が少なくてね。

 これ、山に自生してるのをとってくるんだけど、どうやら少なくなってるらしいのよ。

 ギルドに依頼も出してるんだけどねぇ。」


ギルドとは、国が運営している公的機関だ。

困っている人の依頼をクエストという形で発行し、

それをギルドに登録している人が解決するという物だ。

失業者対策や、若者の小遣い稼ぎにもなり、出来た当時はものすごい反響があったらしい。

もちろんこの村にも支部がある。


しゃべっている内にかごに詰め終わったらしい。


「しめて、七百八十ミラね。」


僕がお金を手渡すと、


「アヤトちゃん、これサービスね。」


赤くて丸いトマトのような野菜がわたされた。


「それ今ここで食べるのが一番おいしいと思うから、食べてみな。」


そう言われて、僕はかぶりつく。

甘酸っぱい、トロットロの果肉が僕の口の中に広がる。


「っおいしい!」


「そうでしょ。作った人にその感想伝えておくわね。」


そうして、おつかいを終えた僕は、

村を出て東に十ミニ程行ったところにある自分の家へと帰っていった。

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