第8話 父親は説明魔です3

「さっきのってふたつもつかってたの?」


父に聞くと


「よし、じゃあさっき俺がどこで使ったのか当ててみろ。」


逆に問い返された。


えーっと、たぶん一つは最後に氷に向かって飛んでいったあれだよね。

もう一つなんてあったか?


氷を砕いたのしか分からなかったと伝えると、

上出来だと父は笑った。


「さて、答え合わせといくか。」


父はもう一つの桶の前に立つと


「普段の俺がこんな氷に手を突き刺すなんてできない。」


そう言って、先ほどと同じように桶に左手を突き刺した。


「「……」」


なんか転げ回った後、左手を押さえてうずくまっている。


「……もっ、も…ちろん……、こう…いうことに……なる。」


「「……」」


母ですら呆れている。


三ミニ程してから復活した。


「ふぅ、で、俺が突き刺した時はこうやったんだ。俺の左手をよく見てろよ。」


そう言うと、父は左手の指を全てそろえて……

んっ?手の周りの空気が陽炎みたいに揺らいでいる?


「せいっ」


グサッと父の左手が氷に刺さった。


「っとまあ、こんな感じだ。これが身体強化だ。」


「どうやるの?」


「やり方は簡単、体の強化したいところに魔力を集める。それだけだ。」


「なんでそれだけでできるの?」


「さっき現象波って出てきただろ。俺たち生き物の体ももちろん現象波で出来ている。これを俺たち研究者は生体波動、生体波と言うんだが、それぞれの人の生体波と魔力波は特性がほとんど同じなんだ。」


父は紙に二つの波を書いて言う。


「振動数の同じ波を重ね合わせると、振幅はその二つの波の振幅の合計となる。簡単に言うと波が強くなるってことだな。」


紙に二つの波を合成した波が書かれた。


「これを魔力波と生体波でやると、体の生体波が強くなる。結果、体が強化されるというわけだな。」


「へぇー。じゃあさっき、てのところでくーきがゆれてたのは?」


「ああ、実はそれ、あまり起こさない方が良いんだ。分かりやすくするために起こしたが、あの揺れは魔力の無駄だ。」


僕は首を傾げる


「いくら強化出来るとは言っても、やっぱり限度はあるんだ。それを超えた分が外に出てきてしまうんだ。」


なるほど、その余剰分が空気を揺らすと。


「だからこの魔法のポイントは、いかに素早く、過不足無く、そして的確に強化する場所に魔力を送るかということだな。で、こっちが、」


父の右手から氷に向かって魔力が放射される。


「魔力放出だな。こっちは文字通り魔力を相手に向かって飛ばすんだ。」


「まりょくはなみで、エネルギーをもってるから、それをあいてにぶつける?」


「そういうことだ。」


「かんたんそうだね。」


「そう思うか、アヤト。じゃあ、実践といくか。」


父はそう言うと、意味ありげに笑みを浮かべた。

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