朝なんて来なければいい

作者 外宮あくと

一夜限りであっても、実らせたい恋に身を捧げる姿は、果てなく切ない!

  • ★★★ Excellent!!!

 この物語は、人々から穢れた者と嫌われている呪術師の娘が、叶わない恋をたとえ一晩でも実らせようとするお話です。

 娘の名前はアマリア。
 愛しているのは領主の息子である男性トゥーレ。

 彼は穢れた者なはずのアマリアにも、分け隔てない優しさを向けられ、またこの地に残る古い風習をなくそうと奔走する、立派な志のある人です。

 そんな彼だからこそ、アマリアはその身を傷付けることも厭わないのです。

 ここで物語の核となる風習について書いてみます。

 この地では、海が荒れた時、支配者の妻を生贄として捧げる風習があります。
 とても不合理な風習なのですが、そこで生きてきた人々にとっては、それは絶対のルールなのです。

 この風習には、もう一つルールがあって、それは妻を捧げたくない場合、他の者を一晩のみ聖婚と称し夫婦として過ごすことで、代わりの生贄とすることができるのです。

 トゥーレが新しい領主として立つ日、海の荒れをおさめるために生贄を捧げることがおこなわれようとするのです。

 彼はもちろん抗うのですが、地位を狙う者によって、強引に儀式をおこわれることとなるのです。

 そしてアマリアは、決して結ばれることのないと思っていたトゥーレと、一夜限りとはいえ妻となれることに揺らぎ、自分の身を差し出してしまうのです……

 物語はこの二人の細やかな心理が紡がれる中、ゆっくりと、でも決して平坦ではなく、却って荒々しさを感じるほどの流れを描き、それでも静かに進みます。

 とても切ない恋物語でした。
 でも、それは読んでいて息苦しさはありませんでした。

 二人の先に微かでも希望の灯りを感じ、それを信じて読み進めることができたからです。

 最後まで読んで、自然と涙がこぼれました。
 良かったです…… 本当に良い物語でした。
 いつまでも残りそうな心地良い余韻に浸りましたと結び、このレビューを締めさせて貰います。
 読ませて下さって、ありがとうございました。何とかレビューを書けたのは、この作品の持つ切ない恋に動かされたからでした。

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