第176話 蒼と赤を輝かせるは、銀の騎士と灼銅の拳士
「殿下、カツシ様がこちらに合流! なれど僅差……警戒を! 」
「おお、何じゃ!? さしものワンビアも、この事態には目覚めも早かったのぅ! じゃが――まだアーガスめが戻っておらぬ! 迎撃しつつ待機じゃ……カツシっ! 」
『それが得策ですね! アーガス、急ぐんだ――』
衛星ダイモス宙域を所狭しと蹂躙するは、現火星地上連合王国政府子飼いの機動兵装部隊。
それも漆黒の傭兵隊の様なならず者の感が其処彼処に見え隠れする。
明らかに汚れ仕事をカネで請け負う非正規部隊が宙域を占拠した。
「各機、相手は未だに政府へ楯突く旧王国の残党だ! 大した地位も名誉もない奴ら……それがこの後に及んで吠える様はまさに負け犬——」
「あの終わり部族の者共は殺せ! ソシャールは政府の高官様への献上品……傷は最小限に止めろ! 」
かの木星圏であれば決して放たれる事もない、人が人を食い物にする惨劇塗した傲慢が宇宙をかき乱す。
準古代技術系列に属する光学式半ステルスカラーに身を包むは、隊長機と思しき
重力制限の少ない火星圏が誇る、対軍事兵装用 殲滅兵装である。
それに追従する頭部の広域センサーシステム衝角を持たぬ一般機。
が……そこに搭乗する者は何れも隊長機からの通信へ野卑た笑みを浮かべていた。
詰まる所、人類が持つドス黒い欲望に蝕まれた者達がそこに群がっていたのだ。
「くっ……奴らの動きが想定以上だ! フォーテュニア、機関出力最大——全力でフリーディアをぶつける! 」
『はい、マスター! いつでも準備は出来ています! 』
火星政府軍に察知される事を考慮し大きく離れての護衛に徹していた
タイミングで言えば僅差であるも、それが明暗を分けるがこの
すでにバーゼラ擁する小部族ソシャールへの侵入を許す後手に回っていた。
その武装でならずの部隊からソシャールを守護するのは、明らかに戦力不足であった。
「ハッハー! さあ無様な抵抗続けるクソ部族よ……俺たちの戦果となって宇宙から——」
醜悪で、到底国家に力添えする協力者と思えぬ隊長機は息巻いて……抵抗する力も無いと決め付けたソシャールへ総攻撃の合図を言い放たんとした。
刹那——
それは小部族ソシャールから飛来した影。
それは魔を払う鎧に身を包み、剛腕にて悪鬼を討ち滅ぼす命の守護者。
それは……暁の爆光によって生まれた、正しき義を以って世を平らかにせしめる灼銅の戦神——
「テメェの愉悦で武力を振り
「俺の名はアーガス・ファーマー! 暁の友との誓いを拳に……そして恩師の羨望を背に受けここに推参した! 新たなる相棒 〈
敗北から立ち上がった拳士はその背と拳に命を乗せた。
その時より——炎陽の勇者と絆を確かめ合ったかつての敵対者は、己の贖罪を果たすための長き人生と言う戦いへと足を踏み入れたのだ。
》》》》
突如現れた
否――攻撃の主要となる武装とメインカメラを備える頭部のみが爆砕され、無力化されたそれらは無残にSOS信号を発する塊と化していた。
現われたる灼銅の戦神は、かの
「な、何だとっ!? あのソシャールに戦力があるなど聞いていないぞっ!? 潜入した奴らからの連絡はどうしたっ! 」
眼前の現実がよほど想定外であったのか、先の威勢が吹き飛ぶ様な慌てぶりの敵隊長機。
その間もソシャール宙域へ立ち塞がる威風堂々へ、
『殿下、遅くなってすまねぇって奴だ! けどこれからは俺も、この〈
「ケジメがどうなったかは、もはや聞くまでもないのぅ! なれば話は早い――カツシ、アーガスと供にソシャール防衛線を張れ! 」
『まずはこの宙域を脅かす脅威へ、国際条約に基づく協定に
『言わずもがなですよ?殿下。了解……これより国際法に基づく防衛行動に移るに当たり、周辺宙域へデータ送信と供に外部防御法行使中の旨を提示します。』
木星圏宙域に近しい場所に於いては中立区である事も関係し、実質光学映像有視界に存在する同胞への提示で効果を発揮するのが国際救助法や国際防衛法。
が……荒事で敵味方問わず多数勢力が凌ぎを削るここ火星圏宙域に至っては、周辺宙域 最低 半径500km以上への行動展開情報提示が求められる。
これは現在テラフォーミング進行中である火星の大気層が地球と似た範囲である事に加え、制止衛星等が地球基準の400km上空にあり――且つそこから同通信を放つ際の〈火星地上からでも確認出来る有効範囲〉を踏まえた物。
多くの国家や部隊が入り乱れる故の、国際救助や防衛に従事する者達を保護する上で必要な条約上措置であったからだ。
破天荒皇子の大号令に、
数にすれば、部族を侮っていた部隊総数は振るわない所。
しかし新手を確認するや部隊後方より、その対応となる第二陣が気炎を上げて近付いていた。
「将軍! どうやら俺達はそれなりに脅威と映ったらしいぜ!? あちらさんの後方布陣に、巨大なスーパーロボットらしき影がチラついている! 」
『君の意見に同感するよ。流石は陰謀渦巻く火星圏……敵を殲滅せしめる兵器ならば事欠かないと言った所だね。けど――』
眼前に現れた脅威を見据えるも、たいした驚きも宿さぬ二つの魂。
当然である――彼らはかの蒼き救いの英雄と赤き炎陽の勇者を友して……ライバルとして認めて止まない二人なのだから。
『ボク達の働き
「はっ! 当然ってやつだろ! 俺達は英雄と勇者が正しきを貫くために必要な、言わば見えぬ所でそれを支える影――」
「将軍 カツシさんよ……あんたとならそれも叶いそうだ! 俺達で共同戦線と行こうじゃねぇかっ! 」
『ふふっ……良い気概だ。確かに彼らには負けられないからね! 』
搭乗者の魂に呼応する様に、それは宙域を照らし出した。
それこそがスーパーロボットと称される機体の真価――人類の高潔なる魂と宣言を具現化する、神代の戦闘兵装なのだ。
迫る火星圏政府子飼いの部隊と小部族ソシャール。
その間に布陣した二機の巨神。
数で言えば不利と言わざるを得ない状況。
しかし、その二体の巨神は蒼と赤の奇跡を支える盟友が搭乗する。
さらに
火星圏で今荒れ狂う戦乱へ、事態終息の一石を投じる最初の勢力が動き出す。
これより僅か後、激化する火星圏抗争へ大きな改変を齎す希望とならんがために――
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