第7話 霊装機
「……!すげぇ……!」
ソシャール内部カタパルト――解き放たれたそのゲートより、赤炎の機体が飛翔する。
「
未調整を裏付ける様に、ひとまずは飛行に成功した状態で
「だから私が戦闘エリアに付くまでに全て終わらせ――戦闘突入後も引き続き、出力調整を継続するわ……。」
少年はまだフレームという物の操縦以前に、触れるのも初めてである。
しかし、その始めてである点を帳消しにする
「その間――君一人で彼らを相手にしなければならない……。」
その全てが初めての少年に、サポートオペレーター役である大尉は無理難題を吹っかけた。
「ぶっつけ本番――それでもいける?」
何の訓練も受けていない少年――それでも学園では軍の選抜に関係する、武術部出身である。
頼れるのは自分の拳のみ――それに賭けて学園一の天才拳士は、大尉の言葉へ返答する。
「これって……、緊急事態でしたよね……。」
「なら……今オレがやらなくて、誰がやるんすかっ……!」
少年の拳が決意と共に、グッ!と握り締められる。
その格闘少年の言葉は、サポートを行う大尉にとっても頼もしい決意。
心の中でささやかだが、安堵した大尉は全力で
「分かったわ……、頼りにさせてもらうね!」
「じゃあ……、
「了解……!G-3……行くぞっっ!!」
》》》》
赤き機体が居住区画――そこを抜け目標区画へ向かう姿を、高層建築の頂上――ただじっと見つめる影――
その出で立ちは、はた見に幼さを感じる体躯。
ゴシック調の白と黒が入り混じるドレスを
だが、その唇から紡がれる声はまるで宇宙に響く、高位の者の啓示である。
「赤きセロに……、太陽の
高位の者――【
各星系で、呼び名や立ち位置・役目に相違が認められるが、ほぼ同じ使命を
この幼き少女の体躯をした者からも、それらと同様――高位存在特有の強力な【
「さて……。」
高位の者である少女が立ち上がると、その高き場所から望めるとあるマンションを見据え――そして独り謎の意を込め呟く。
「……歯車は……
マンションの一角、高位の者が見据えた先――それはあの引き
高位の【観測者】である者が、何かしらの望みの様な物を込めるも、未だ一室の中の男は無気力な瞳で、ただ静かにたじろぎもせず時を過ごす。
――動かない、時の歯車――
そこに現れる、ただ一つの小さな光。
その男の歯車に引き寄せられる様に、一人の少女が中型バイクでそのマンションに乗りつけた。
》》》》
【ザガー・カルツ】が侵攻を開始して程なく――今まで必死の抵抗と出撃された、なけなしの
「おいおい、何だぁ……?……打ち止めかよ……!」
ひとしきり暴れていた格闘タイプの
『隊長……、こんなにあっさり引き下がるなんて……変じゃない……?』
砲撃主体
突然止んだ抵抗には、やはり疑問が
だが――【ザガー・カルツ】隊長は全てが見えているのか、その先こそ本番とばかりに部下へ注意を
「……フッ……。かの名高き【
隊長ヒュビネットをして、名高きと言わしめる防衛軍C・T・O。
この木星圏を初めとする各ソシャールでも、その活躍は名を轟かす機関。
彼らの活動を称え与えられた名が【
その危険視している全容が、やがて【ザガー・カルツ】各機のモニターへ緊急アラートと共に知らされる。
「奴らの頼みの綱――本命の登場だ……!」
ソシャール【アル・カンデ】を我が物顔で侵攻して来た【ザガー・カルツ】部隊員達は、
「こ……れ……!
「……赤い……【
目的地到着間際――かろうじて機体制御を終えた大尉
この様な事態でも、対話による争いの終結こそが望ましいと判断し、アーデルハイドの構えを取らずその姿のみで制する。
『こちらはC・T・O災害対策部所属――
『ボンホース派所属部隊【ザガー・カルツ】へ……。この武力行使は、すでに重大なテロ行為に匹敵します……。』
真にこの対話のみで事が成せば、【
しかし――無情にもC・T・O所属大尉の考えは打ち払われる。
「直ちに――」
「――っ!綾奈さんっっ!!」
大尉の投降を
「
「くっ……!」
半物質化した弾頭の乱射――目標は赤き機体であるが、威嚇レベルで精密さの欠片も無くばら撒かれた弾丸へ、
広域防御より高速展開が可能になるモード、格闘少年のガードに反応する様調整した結果、少年の意のままにピンポイントガードが可能となる。
そして
「ほう……。」
余裕の敵隊長機――あからさまな挑発をして見せているが、その眼は初見の新型機への対策としてあらゆる動きを叩き込む――そんな意思がチラチラと見え隠れする。
「
突如発生した薄発光の膜――少年は、未だ未熟な知識を引き出しながら状況をパートナーへ問う。
その格闘少年――敵に対して機体調整が不十分な事もあるが、余裕は欠片も存在していない。
『ミスト状の、ナノマシンフィールドを介して発生させた……重力場による
「(そう……、問答無用って訳ね……!)」
サブコックピット内で、素早く少年の問いへの要点を説明する
【
有人型の量産機体でさえ、この宇宙各国内での種類は数える程しかない中で、【
その認可を得て初めて使用可能となる、国家における最高機密に相当する技術。
それを目の当たりにした【ザガー・カルツ】隊長は、眼に――脳裏に焼き付けようとする。
「
「ずいぶんとまた、物騒な物――持ち出して来たじゃないか……C・T・O!」
あえて口に出しながら、機関の説明を説く隊長ヒュビネット。
何かしらの意図を持った行動である。
『隊長……ありゃ何の冗談だよっ!?』
『【
さしものアーガスもたじろぐ。
機体の詳細情報は、機密事項により確認出来ぬとも、それが
『
その隊員の
「ああ……。この戦力差、確かに厳しいな……。」
『……おっ……おいっ!?』
総合的に見ても、ボンホース派が新たに導入した、戦略型有人機体は非常に優れた最新鋭機である――が、それはあくまで 【
「だが――」
隊長機はその本質を見抜く――
そこより見出す解――
一方が操縦し、もう一方が機体調整を行っている事――
その操縦者の動き、紛れもない
「向こうのパイロット……思ったより新米の動きに見えるが……?」
隊長の声にハッ!となり、同じく事の本質を見抜こうとするアーガス。
覚悟の上と地上へ降り立つも、姿勢制御が
「……はっ……なるほど!……立って構えるのも一苦労ってヤツか……!」
隊長と同じく、その本質に
「……そういう事か……!こりゃいい……こいつはオレの相手って事だな、隊長……!」
闘志を再び燃え上がらせる男アーガスは、搭乗する格闘型の
そして――赤き【
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