第154話 急展開(3)

そこに


「あ、みーちゃん! もうかいしゃおわったの??」


竜生と真鈴がやってきた。


「ううん。 ちょっと用事があって途中で帰ってきたの。 また戻らなくちゃ。」



子供???


高宮は驚いた。


「だれ?」


竜生は彼を思いっきり指差した。



「ああ、真太郎と同じトコで働いてる人だよ。 高宮隆之介っていうの。 ほら、足を怪我しちゃってね。 仕事行けなくなっちゃったから。 おうちもないし。 ウチで預かることになって。」


南の説明に、


「ちょっと、おうちもないって!」


高宮は反論した。


「ないやんか。」


「犬や猫みたいに言わないで下さい、」


「おうち、ないの?」


真鈴がものすごい哀れんだ目で見たので、


「や、ないってわけでも・・。」


困ってしまった。


「ほーむれすだ、ほーむれす!」


竜生がアハハと笑った。



こんの・・クソガキ・・。


「あ、この二人。 真太郎の弟の真尋の子供。」


「え? あのピアニストの?」


「そう。 クリスマスライブが終わってな、また仕事で夫婦でウイーンに行っちゃったから夜はウチで預かってるの。 昼はお義母さんかシッターさんがいるから。 こっちがお兄ちゃんの竜生で、これが妹の真鈴。 もー、めっちゃカワイイやろ~~?」


南は二人の頭を撫でた。


「はあ・・」



社長の孫か。


子供は苦手だったが、それを考えるとぞんざいに扱えないし。



「このお兄ちゃんな。 昼間はここにしばらくいるから、遊んでもらい~。」


余計なことを!


高宮は南を苦々しく睨んだ。


「へ~~。 そうなんだァ。  でも、おれピアノのれっすんとかいろいろいそがしーからな~。」


竜生のナマイキな発言に、高宮はこっちも苦々しい顔でにらみつけた。



おれだって


おまえみたいなガキんちょ、相手にしたくねーっつの!



「ま、しょうがないから相手してやってもいいよ。」


くっ・・


社長の孫じゃなかったら


頭のひとつでもひっぱたくものを。


「まりんもあそぶ~、」


真鈴はにっこり笑って高宮の腕を取る。


こっちは


ちょっとカワイイけど。



「じゃ、あたし帰るね。」


南はさっさと帰ろうとしたので、


「ちょっと! この子たちはどうするんですか!」


と慌てた。


「だいじょーぶ。 今日はシッターさんがいるから。 ここにいることもわかってるし。 ゴハンになったら呼びに来るよ。」


じゃなくて!


それまでどーしろってゆーんだ!!


高宮の動揺をよそに


「みーちゃん、いってらっしゃーい!」


二人は元気に手を振った。



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