第142話 衝撃(2)
クリスマスが終われば
普通の会社は少しは年末ムードになってもいいのだが。
やはり
ここではまだまだ忙しさがてんこもりで。
真尋のCDのレコーディングは終わったものの、デザインや構成がまとまらずに斯波は休みもなく仕事をしていた。
気がつけば。
みんな外出で電話も鳴らず、パソコンのファンの音だけが聞こえる静かな昼下がりになっていた。
はああああ、目が疲れた・・
いつもはコンタクトをしているのだが、ここのところの激務でドライアイになってしまい2日ほどメガネだった。
それをふいっと外して首をぐるりと回す。
ん?
ぼや~~~っと入り口に人影が見えた。
裸眼だと0.1くらいしかないので、誰だかわからない。
メガネをかけてその人物を見ると。
「・・加瀬?」
夏希がものすごい寝癖頭でボーっと立っていた。
「どしたの・・おまえ。いつ、」
言葉を発しようとするのだが、なにを言っていいのかわからない。
彼女のほうに歩み寄る。
もうなんか
具合が悪いせいなのか、顔に生気はなく、いつも体中から発している"陽気"もゼロだった。
「斯波さん…」
喉がかすれてガラガラの声で彼をすがるような目で見たとたん
「う・・」
夏希はいきなり斯波の胸にもたれかかるように泣いてしまった。
「ちょ、ちょっと! おまえ・・」
女子に胸で泣かれるなんて
なれない経験に戸惑いながらも、いったい彼女になにが起こったのかを聞くのが怖い。
そっと夏希の頭に手をやるとまだ熱かった。
「おまえ、まだ熱があるんじゃないのか? そんなんでよく…」
優しくそう言ったが、夏希は子供のように泣きじゃくるばかりで何も言えない。
まだ具合が悪そうだったので、斯波は夏希をタクシーでマンションまで送り届けた。
ハナをすすって、まだメソメソしている彼女に
やっぱり何も聞けなくて。
高宮と
なんかあったんだろうか。
や
それ以外考えなれない。
しかし
怖くて
突っ込めないし。
何か言ってくれればいいのに黙ってるし。
女性の扱いに不慣れな斯波はこういう時どうしていいか皆目見当がつかなかった。
理沙が昼休みから戻ってくると、高宮が外出先から戻ってきていた。
「あ、今戻ってきたトコ。」
彼の顔を見ると、どうしようもない罪悪感で押しつぶされそうだった。
「ごくろう・・さまでした・・」
重い気持ちで席に着く。
「あ、水谷さん。」
「はい?」
ドキっとした。
「いろいろ考えたんだけど。 おれ、やっぱり東京に戻ることにした。」
「え・・」
「芦田さんにはもう伝えてあるから。 約束どおり3月いっぱいで。」
胸が
チクチクではなく
ずきんずきんと痛んだ。
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