第26話 太陽(3)
八神はたった1ヶ月とちょっとの間に夏希が部署に異様に馴染んでいるのが手に取るようにわかった。
「なに、おもろくなさそうな顔して。」
南は八神に声をかけた。
「え? や、別に。」
「加瀬に敵意持ってるなあ、」
「そういうわけじゃないけど。」
ちょっと膨れた。
「ほんまにいい子でなー。 明るいし、元気やし。 彼女が来てから、なんかここもぱあっと明るくなったって感じで。 斯波ちゃんに怒られてもめげないし。 得意先の人たちにも、もうなじみになって、かわいがられてるし。 礼儀も正しいしね。」
「社会人のクセに、ジャージですよ?? あれはどーなんですか!」
「しゃあないやん。 今は怪我してるねんもん。 仕事はまだまだやけど。 ああいう子が入ってくれてよかったねーって志藤ちゃんとも話してて。」
南が夏希を褒めれば褒めるほど、腹立たしい。
八神は顔をいっそう険しくした。
「学生気分丸出しじゃないですか! どうかと思うんですけど!?」
「・・だって。 ナマイキに。」
南は秘書課の志藤の所に言ってさっそく報告した。
「アホか。 ほんまに子供やなあ、八神は。」
志藤は失笑した。
「ま、今までずっと一番年下やったからな。 後輩ができて威張りたいんちゃうの?」
「そうかなあ・・」
そこに高宮が戻ってきた。
自分の椅子に南が腰掛けているのを見て、
「ここはぼくの席ですが。 よろしいですか?」
はっきりとそう言った。
「え? ああ、ごめんごめん。」
南は慌てて立ち上がる。
「いつもここで世間話されていきますけど。 気が散ります。 そういうことは事業部でやっていただけますか?」
冷たい視線を投げかけられた。
分厚い資料を片手に仕事をし始める彼に、南は志藤にこそっと、
「ほんまにいつ見てもヤなヤツやな。」
と苦々しい顔で言う。
「こーゆーヤツやから。 怒るだけ無駄やん、」
志藤は相手にしていなかった。
ほんと。
なんでこの会社の跡取りである専務は、こんな女性と結婚したんだろう。
強烈な関西弁で。
見た目はまあ、かわいい人だけど。
品がなくて。
専務よりも4つも年上で。
ダンナの専務より、志藤さんとこうしてつるんでる姿ばかり目にするし。
専務は東大出のエリートで。
性格も温厚で、社長の跡を継ぐ人間として世間からも納得されている人だ。
あの人。
専務と出会う前は、キャバ嬢だったってみんなの噂だ。
高宮はそんなことを考えながら、パソコンのキーボードを叩いていた。
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