第24話 太陽(1)

昼休み明けのエレベーターは混んでいた。


こんな時間に戻ってくるんじゃなかった…。


八神は恨めしそうにため息をついた。


1階から乗ったエレベーターが3階で止まった時、


「す、すみません・・」


芸能社とはいえ、目を引く女性が一人乗ってきた。


ジャージ姿で。

杖ついて。


なんじゃ・・? こいつ。


不審そうに見てしまった。


5階に着いて、八神はすっと降りたが、その彼女は


「すみませーん、降ります~~。」


杖をつきながら何とか人を掻き分け降りてきたが・・・


「あっ!!」


エレベーターのドアが閉まる瞬間、杖の先のほんの少しのところが外側のドアに挟まってしまった。


「早く! 抜いて!」

八神は思わず彼女に声をかける。


「は、はいっ!」

ドアの方に向き直って思いっきり杖を引き抜いた。


「ぐえっ!」



力いっぱい引き抜いたが、案外あっけなく杖が抜けたので後ろにいた八神のオデコに杖がヒットしてしまった。



「いっ・・・!」


もんどり打っていると、


「加瀬、なにしてるの?」

南が通りかかった。


「あっ! 南さん! あ~、ヤバかった・・。 杖がエレベーターの扉に挟まっちゃって!」


「もう、危ないなあ。 って・・」

南はそこにしゃがみこんでいる男に目をやる。


「・・八神??」


「へ?」

夏希は驚いた。




「ほんっと騙されたっ!」

八神は南にオデコに絆創膏を貼ってもらいながら大いに嘆いた。


「別に騙してへんやん。」


「どこがっ! すっごいかわいい子だって言うから!」

八神はそこにしれっとして座っている夏希を指差した。


「かわいいやんなあ。 加瀬は。」

南は夏希の頭を撫でた。


「あのう・・」


わけのわからぬ彼女は戸惑う。


「あたし、なんかしちゃいましたか?」


「あんたのコレが! おれにヒットしちゃったんでしょ!」

八神は夏希の杖をこれでもかと言うくらい指差した。


「あ…そか。」


「で、誰…?」

八神はオデコをさすりながら言うと、夏希はハッとして杖をついて慌てて立ち上がろうとして、思いっきり彼の足の上に杖の先を乗っけてしまった。


「いでええええっ!!」


「あ、すみません、すみません。」


「も~、何度おれを痛めつければ気が済むんだ…」


「あっと、あたし、4月からこちらでお世話になっています加瀬夏希です。 どうぞよろしくお願いします! たがみさん!!」


「八神だよ・・」

うめくように言った。


「や、もうほんと、お会いしたかったです! イメージしてた通りの方で!」

夏希は喜んだが、


「どういうイメージ??」

そこにいた南や玉田はおかしくておかしくてたまらなかった。



なんっだ?

このジャージ女は??

おれが3ヶ月日本を留守にしている間に。

ここでは何が起こっていたんだ??


八神は異星人を見るような目で夏希を見た。

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