第62話
「……どうした? 続けろよ。まだ全部言い尽したワケじゃねえんだろ?」
「――ァィ、いやッ、そ、それは……ッ!!」
苛立ちのまま八つ当たり気味に促すけど、やっぱり何故か黙り込むデブ。
ホントどうした?
「なあ、続けろって言ってんだろ? それともアレか? オレが話について来てるか確認してえってか? 心配すんな、ちゃ~んと分かってるさ。つまりアレだろ? テメエらは
「ぅ、ぁ――そ、そうだッその通りだ――」
「そんで、その御蔭で無駄に頑丈で研究し甲斐のある
「そッ、それは――」
「……そんでもって、その陰で死んだ僕の父さんと母さんと兄さんの事なんかどうでもいいってワケだろ? 違うか?」
「――ヒィッ!? い、いや!! けッ、決してそのような事は思ってな――お、思っておりません!! で、ですから命だけは――ッ!!!!!!」
………………は?
なんで唐突に敬語と命乞い?
いや、殺さねえよ別に。そもそも最初からそんな気ねえし。
……『アレ? 魔物達みたく
あのね、僕を何だと思ってるのかな?
確かに
大体、今までの振る舞いだって監禁されてたって言う緊急事態だったからこそやらざるを得なかったジコホーエキホゴの為のキンキューヒナン的なソチであって、何ら法律にテーショクするモノではありません。
従って僕は無実です。
犯罪者ではありません。
ノットギルティ。
だから、父さんや母さんや兄さんに失望されるようなコトは、無い……ハ、ズ…………そろそろ、この話は止めよう。
とは言え、そんな僕の主義主張ってヤツを目の前のオッサンが理解してるようには見えねえから、一応ハッキリと言葉にしておこうか。
「アホか。人殺しなんかするワケねえだろ。こちとら善良な一般市民ですよ? ソッチが先に手出ししない限りは何もしねえさ。ま、さっきみたく大声出してイハクしてきたり、
うん、コレで良し。
こんだけハッキリ言えばちゃんと分かってくれるだろ。
さ~てさて、んじゃ話の続きをどうぞ!
「――ッ、――…………」
うん?
アレ?
オカシイな。
なんかデブが何か言いたそうにパクパクしてるけど、なんにも聞こえてこない。
オイオイ、ちゃんと声くらい出してくれ。
流石に唇を読んだりなんてできねえんだけど。
「オイ、ヘタクソな金魚のモノマネなんか見せんな気持ち悪い。それよりさっさとさっきまでの続き聞かせろよ。オレを部屋に戻して、で? そっからどうするんだ?」
「――そッ、それはッ……ち、『治療』を施して――」
「…………ハァ……」
……ハァ、ったく、この期に及んでま~だ最初の隔離入院設定引っ張り出してくんのかよ……ホント、嘗められたモンだよまったく。
「あッ、やッ、ちがッ!! 違うッ――のですッ!! ここ、これはき――あ、貴方様に憑依した妖魔を取り除く行為を『治療』と呼称したのであってッ、け、決してッ巫山戯ているワケではッ――」
オウ、なんかつっかえつっかえで分かり難いけど、何やら否定している御様子。
どうやら、初対面でいきなりぶつけてきたホラ話を蒸し返す気は無いらしい。
――って言うか、なんだって?
憑りついた
いや~、なるほど。魔法も科学技術みたく日進月歩ってワケだ。
「へぇ、そりゃ良いな。んで? 取ってどうすんだ? 下のみたく瓶詰にして飾るのか? それだけなワケねえよな。となると、さっきの口ぶりから察するに、理由は何であれ最終的に人殺しにでも使う気か? 工事用に開発されたのに戦争に転用されたダイナマイトとかみたく」
「………………………………………………………………………………………………そ、それは飛躍ではあ、ありませんか? わ、我々の研究はあくまで医療や福祉の為に進められているのであって――」
ハイ、ダウト。
元からウザかったけど、『……』の初っ端にスゲー『ドキッ』ってから徐々に落ち着いていった心音を聞けば
オレの前で嘘吐きたかったら、掛け算狩人八巻を読んで心拍をコントロールする訓練をするコトだ。
或いは『傍に立つ』者か『立ち向かう』者を発現させて心臓を握り止めるんだな。
ってか、このデブ自分で『膂力』だの『火力』だの『攻撃術式』だの言っておいて、今更こんな簡単にバレるような嘘吐くとか、余裕があるのか頭が回ってないのか……
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