第4話
再び意識を取り戻したとき、俺は硬いベッドの上にいた。
夢が覚めた……のか?
いや、違う。その思いは俺の目に写った見慣れない天井から出てきた思い。
ちょっと待て! ここはどこだ?
慌てて飛び起きる。
取り敢えず状況の確認だ。まず、服装は制服で、持ち物は……あれ? 何も無い!?
財布も本も鍵も……かばんも無い……。
何の冗談だ? さっきまで学校にいたはずなんだが……。
まさか、あれは夢じゃなかったのか?
……ここが異世界なわけがないな。誘拐の方がまだ現実的だ。
誘拐されたのであれば俺の持ち物は相手が持っているはずだ。
部屋は六畳ほどの石造りの部屋だった。
決して綺麗とは言えない黄ばんだ布団、表面が滑らかでない粗悪な椅子と机。ライトやクーラーといった電化製品は一切置かれていない。
何だよ。ここは……。
ホコリっぽい匂い、石のひんやりとした肌触り……ずきずきと疼くリアルな頭痛……これは現実だ。そう感覚が訴えている。
ジリリンッ!
突然、大きな音が鳴り響き心臓がバクンッと飛び跳ねる。
今度は何だ!?
自然と身構えるが、何も起こらない。
数分後、突然扉からノックする音が聞こえた。
「いいよ」
と言ってから俺は後悔した。
ノック音なんて自分の家でしか聞かないので、自然と反応してしまった。
ああ、相手は誰なのかわからないのに……。
重厚感のある……恐らく鉄製の……扉がギィと音を出しながら開いた。
そこにいたのは、白と黒のメイド服を着こなした若い女性だ。
しかし、服装よりも俺は……その美貌に目を見張った。
ニキビ1つない、白磁の肌。派手な色だと言うのに違和感のないピンク色の髪…………まるで二次元の世界から出てきたようだ。
突然やって来たメイドにみとれていると、彼女は高めの、それでいて落ち着く声色で話し始めた。
「初めまして。ストル王国のメイド〝ルリア〟と申します」
スカートの裾をつまんで、深々とお辞儀するルリアさん。
「は、初めまして。康太です」
「はい、康太様ですね。大広間に集めるよう言われましたので案内します」
そ、そうなのか。とにかく、何があったのか全くわからない今の状況で反抗するのは愚策だ。
「わかりました。一つ質問をいいですか?」
ルリアさんは表情を変えずに、再びあの声色で歌うように言った。
「陛下の元へとご案内するのでその途中でご質問下さい」
「わ、わかりました」
「では、こちらへどうぞ」
そう言われたので部屋から出る。もちろん、荷物がないので手ぶらだ。
「行きましょうか」
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