第83話 二択
青い体をした筋肉ダルマの下級魔人、中世の騎士のような鎧(肉体)の黄色い中級魔人。
いくら魔王といえど、この数を相手にするのは骨が折れるだろう。
それに加え。
「紡ぎ、発光せよ! 神の
何百という
上級の一つ上、魔術級雷魔法だ。
ゴッソリと魔力を持っていかれるが、俺の魔力総量からすれば微々たるものだ。
下級、中級の間を通すように雷の矢を飛ばし、地面からも這うようにしてグロスクロウを捉える。
「下を含めた全方位からの攻撃か。だがそれは悪手だな」
グロスクロウは下からの攻撃をかわしつつ、多方向からくる矢をコントロールするかのように魔人達へと弾き返していった。
ドドドドドドドド!!
「「グオアアアアアアアア!!」」
俺の放った何百という矢が魔人達を襲う。
迂闊な攻撃は奴に利用されてしまう。
それでもやはり中級魔人3体は流石である。
長剣を取り出し、跳ね返される矢をかわしながらグロスクロウへと近づいていた。
だが、正面から向かえばまたしてもグロスクロウの固有スキルの前に、成すすべもなく弾き返されるのがオチだ。
だから魔人にグロスクロウの相手をしてもらい、俺は奴の意識の外側から狙う!
「シーラ!」
「うん! 任せて!」
既に固有スキルから解放されていたシーラは俺が言わんとすることをすぐに理解し、炎魔法による撹乱を行なっていた。
要は俺が奴の背後を取れればそれでいい。
奴の固有スキルには限界があることを、既にいくつか見抜いているからな俺は。
ゼロは未だに気を失っている。
それほどまでに魔王の一撃は重いということだ。
「
バチバチッと銃が発光し、
「グオアアアアアアアア!」
長剣を振り回し、3体の中級魔人がグロスクロウを翻弄している。
「魔人を使役することができる人間……。本来は魔王しかこいつらを扱うことはできないはずなんだがな…………『
ドンッ!! っと固有スキルにより中級魔人が吹き飛ばされていった。
「
再びシーラが炎の槍を連発する。
「何度も同じ芸では面白味がないな」
同じように弾かれ霧散してしまう。
しかし、それでもシーラは炎の槍を放ち続ける。
「やあああああああ!!!」
「連発していれば俺のスキルが尽きるとでも思っているのか…………? 検討違いだなそれは…………スキルは魔法と違って魔力は消費しない。永遠に俺に攻撃は届かないぞ」
と、俺はシーラが気を引いている内に既にグロスクロウの背後へと回り込んでいた。
奴の固有スキルは下からの攻撃に弱いこと、そしてもう一つは、弾くスキルと引き寄せるスキルは同時に使うことができないところだ。
俺の雷の矢を弾いた時に、シーラの拘束が解けたのが理由だ。
奴が気付いていない内に決める!!
「スキルの強さにかまけているのがお前の…………敗因だ!」
ドンッ!!
『獅子脅し』から放たれた銃弾は、シーラの攻撃を防いでいるグロスクロウへと届き、下腹部を撃ち抜いた。
「ぐっ!?」
「当たった!!」
けれど、この距離だとやはり心臓には当たらなかったか!
致命傷ではあると思うが一撃で決め切れなかった!
「くたばれええええええ!!!」
ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!
続けて連発するも、2発目以降は防がれた。
やはり不意の一撃でしか奴には届かない。
それでも大きな反撃だ。
魔王に一撃を与えた!
「何だ……今の攻撃は。物理攻撃でもない…………かと言って魔法でもない……。クハハハハ」
……笑ってやがる。
痛覚ってものがないのかよアイツは。
腹を撃ち抜いたんだからもっと痛そうにしろよな。
「近年稀に見る興味対象だお前は。再度問おう。俺と一緒に世界の救済を行うつもりは?」
「毛頭ない」
「だが俺はお前を是非仲間に加えたい。共生派の一例として、そして俺が個人的にお前に興味がある…………。お前の名前は?」
「教えない」
「それも良いだろう。なればこそ、お前が俺の配下に加わるとしか言えない状況を作ればいいわけだな?」
何を言っているんだコイツは?
俺がお前みたいなサイコパスの仲間になるわけがないだろう。
「グオアアアアアアアア!!」
吹き飛ばされた中級魔人が再びグロスクロウへと飛びかかった。
「『
左手の前に黒い渦ができ、中級魔人が吸い寄せられた。
中級魔人は離れることができず、黒い渦に吸い寄せられたままジタバタとしている。
「どうやらお前達は俺が片方のスキルしか使えないと思っているようだが…………」
グロスクロウは右手を宙に浮いている中級魔人の下半身に向けた。
「それは大きな間違いだ。『
バツン!!!!!
という音と共に、中級魔人の下半身が千切れ、吹き飛んでいった。
中級魔人の上半身だけが宙に浮き、黄色い体液がポタポタと地面に垂れている。
「うっ!」
「な…………」
「両方使えばこのように相手を殺してしまうから使わなかっただけだ。だが、お前が俺の配下にならないというなら、連れの魔族2人を即座に……殺す。逃れることができないのは…………経験済みだな?」
俺の予想は外れていた。
奴はまだ本気を出していなかった。
まるでペットと戯れるかのように、俺達を相手していただけだった。
「さて……どうする?」
究極の選択を迫られる。
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