魔王グロスクロウ編

第75話 サンクリッド大陸

 砂漠。

 荒野が面積の多くを占める大陸、サンクリッド大陸。


 ここはこの世界でも最も人類と魔族の戦争が激化している大陸でもある。

 現在、この大陸に自分の国を作っている魔王は6人。


 ①『魔王シルバースター』

 サンクリッド大陸において最も勢力の強い魔王。

 老獪ろうかいかつ狡猾こうかつなやり方は、人類をじわじわと追い詰めている。


 ②『魔王ガゼル』

 本拠地はソウグラス大陸であるが、現在はサンクリッド大陸に勢力を伸ばすことに躍起となっている。

 否、勢力を伸ばすのが目的ではなく、人類を殺すことが目的である。


 ③『魔王ライアットシーネ』

 三人いる女魔王のうちの一人。

 一つの国を陥落させたのち、周囲の国と不可侵条約を締結。

 多少の小競り合いはあるものの、現在まで表立った戦争は起きておらず。


 ④『魔王グロスクロウ』

 自分の拠点を持たず手下も数が少ないが、魔王本人が神出鬼没に現れては村や町を滅ぼしていくため、手がつけられない状態に。


 ⑤『魔王ヴェイロン』

 自分の国を作り、そこで様々な魔者を暮らさせている。

 行っていることは人類の国とさほど変わらないが、人類との戦争は繰り返されている。

 しかし、つい最近にシャッタード都市の開発した魔法兵器によって国の半分が消失し、唯一人類が現在優勢に立っているといえる相手である。


 ⑥『魔王ベルファイア』

 本拠地はスノウェイ大陸であるが、全ての大陸に自分の領地がある。

 全魔王の中でも最強の軍勢と広大な領地を誇っている。


「集めた情報と頭おかしい爺さんの所で買った本の書いてあることをまとめると、サンクリッド大陸はこんな情勢らしいよ」

「俺がいた時よりもごちゃ混ぜだな。ガゼルの野郎が進出してきたからか」

「ゼロはこの大陸のどこいたんだ?」

「ヴェイロンのところだな。魔王ヴェイロン。俺達ウィン族はそいつに仕えてた魔族だし」

「でも半分消えてるってなってるけど」

「そうだな……。人間と戦争中で仕方がないとはいえ、知り合いがいなくなってたりすると、流石に悲しい」

「それで仇を討とうとは思わねーの?」

「そんな事すりゃ俺は憧れの彼女に嫌われることになるじゃねーか!」


 そういや元々の目的は憧れの彼女……もといシャンドラ王国の第7王女ニーナさんに想いのたけを伝えたいって理由だったっけ。

 それだけで人間を許せるってんだから大した奴だよ。


「ミナト、私がいた所も魔族がいっぱいいた」

「あ、そういやそうか。元々魔族が生活してるところに買い物に出かけて、そのタイミングでシーラは転移…………あれ? もしかしてそれって魔王ヴェイロンの国が半分消えたのに絡んでるんじゃないの?」

「どういう事?」

「シーラが転移したのはシャッタード都市の魔法兵器による可能性が高いってことだよ」

「一理あるかもな。そんな兵器が本当にあるとするならばだけど」


 そうするとシーラの元々住んでいた所は魔王ヴェイロンの領土の近くになるということだ。

 まさかこんなにも早く目的の場所が見つかるとは思わなかった。


「ゼロ、魔王ヴェイロンの国ってどこにあんの?」

「……ここからは結構離れてるんじゃないか? 俺は魔族領土を渡ってソウグラス大陸にやってきたから割りかし早かったが、人間側の領地を通るとなると遠回りのはずだ」


 シット!

 そう簡単に事は運ばないか!

 この大陸は至る所で戦争が起きてるヤバい大陸って聞いたし、早めに切り上げたかったんだけど。

 何で資源がないこんな大陸を取り合うんだよ。


「お腹空いたー」

「マイペースだなぁ……。ここから一番近い国ってどこ?」

「魔王シルバースターの所だな」

「誰が魔族側の話をしたんだよ。人類側に決まってんでしょーが」

「じゃあ知らねーよ!」

「何でキレるんだよ!?」


 一緒に渡ってきた知らないオッちゃんに聞いたら、絶賛戦争中の『カンバツ王国』だと。

 マジなんなんこの大陸。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る