5.終焉

 天墜の梢が相手では、ソレイユなんて「狙ってください」と言っているようなものだ。


「ラファ! リック! 出るぞ!!」

 ドレッドノートで格納庫から出撃する。すぐ後ろからハーキュリーズも出てきた。


 遅れてリックがこっそりと格納庫から飛び出す。


「待っていたぞ、アマクサ・ユウスケ。」

 挨拶代りにグラビトンレイを打ち込む。が、梢からの粒子砲と衝突し対消滅する。


「斬る!」

 ラファがフォースロードセイバーで斬りかかる!

 聖杯が展開し銀膜となり巨大なプラズマブレードを受け止める。


「天墜の梢も聖杯も、使用者を取り込むはずなのに!!」

「道具に使われるような者どもと同じく扱わないでほしいものだな。此方ならば使いこなすなど容易だ。」

 梢の先端から粒子砲が拡散発射される。

 ドレッドノートは肩の発生装置で防壁を展開、ハーキュリーズとリックにはフライングシールドで防壁を展開する。


 防壁に当たった粒子砲が光りの残滓を残しつつ周囲に飛び散っていく。



 プロトは梢の先端から粒子の刃を発振させ、ハーキュリーズに斬りかかる。

 ラファはフォースロードセイバーで受け止め・・・・・、られず、セイバーを両断されてしまった。


「高圧粒子をプラズマごときで止められると?」

 梢は出力がでたらめすぎる!!


「まだまだ、余興はこれからぞ?」

 プロトは天墜の梢と聖杯を持ったまま両手の人差し指と中指を立てる。そして右手でドレッドノート、左手でハーキュリーズを指した。


 ドレッドノートが停止した!

 いや、止まってはいない、だが動かない。ギチギチと間接部から異音が響く。


「ユウスケ! 脱出を!!」

「離脱!」

 ドレッドノートから飛び出す、ラファもハーキュリーズから飛び出した。


「残念ながら生きている人間は操作できぬのだがな、それほど人体からかけ離れたサイズのデクならば・・・・・、」

 ドレッドノートの頭部が動き、顔が僕を捉える。次の瞬間、ドレッドノートが襲い掛かってきた!

 ラファもハーキュリーズに襲われている。


「傀儡師の小手で動かせるのだよ。」


 ドレッドノートが両手のプラズマブレードを発振させ、斬りかかってくる。

 体を回転させ斬撃の軌道からかわす。間近を巨大な腕が通過していく。


「ラファ!」

 僕はラファを見る。ラファは軽く頷く。


 僕はドレッドノートの脇を抜け、プロトに向かう。


「お前の相手は、私。」

 ラファがドレッドノートに斬りかかる! だが、防壁に止められている。


「プロトォォッ!」

「一騎打ちかのぅ。」

 重火力型スーツのソードサテライトを展開、プロトに向け突撃させるっ!



 プロトは聖杯を展開し銀膜で防御する。銀幕でソードサテライトが弾かれる!


 銀膜の影から二股の穂先が覗き、粒子砲が放たれる!

 寸でのところで回避、余波でスーツ表面が焼けた・・・。


 ソードサテライトを絶え間なく突撃させる。プロトは常に聖杯の銀膜で防いでいる。

 プロトは反応速度自体は速くない。ソードサテライトの動き自体を見切れては居ないようだ。これなら!


 僕はフライングシールドを周囲に展開、シールドで姿を隠しながらかく乱し背後に回り込む。

 プロトの背中に向け、プラズマブレードで斬りかかる!!


「ぐっ!」

 ギリギリのところで梢で受け止められる。プロトの表情には焦りが見える。

 ソードサテライトを警戒するあまり、銀膜を広げすぎだ。視界が狭くなりすぎている。


 プラズマブレードで斬りかえす! 再び梢で防御される、が、隙ありだ!

 下側からソードサテライトで斬り付ける。右足を切り落とした!!

「おのれ!」


 梢の穂先に光が集まる。拡散発射がくる!

 プロトが広げている聖杯の影に入る。銀膜の向こう側で粒子砲が広がっている。

 銀膜の影に粒子砲は届くまい。


 そのまま再び背後をとり、プラズマブレードで突く。

 プロトはギリギリで回避するも、わき腹をかする。プラズマで焼けている。


 プロトは銀膜を更に広げ、銀膜自体をぶつけるように叩きつけてくる。

 少々虚を突かれ、僕は両手で防御する。


 プロトが後退し、少し距離が開いた。



 ドレッドノートとハーキュリーズがSDモードで高速機動し、ラファを追い立てている。

 2体相手に少々手間取っているようだ。


 セントラルの状況もある。ここで勝負を決める。


「一気にいく! アイ! FBモードだ!」

『専用FBモード、「フル・バースト」起動します。』

 背部にあるジェネレータから異常とも言うべき高音を発する。

『フル・バースト状態に移行しました。』



====================



 俺は流れ弾が当たらないようにするだけで必死だ。なんでこんな場所に居るんだか・・・・・・。


 これというのもRimとかいう奴が笑顔で俺に脅しかけてきたせいだ。

 隠し金庫や隠し口座の情報どころか、どうして俺の性癖まで熟知してんだ、アイツは・・・・。


 くそっ! やっぱりこんな場所来るんじゃなかった!!

 粒子砲にちょっと当たるだけで即消し炭だろうが!


 こんな物陰でも無いよりはマシだ、気分的にな。

 俺はタワー最上階残骸の陰に隠れ、戦いを見守る。


「ユウの奴が優勢っぽいのが、せめてもの救いだな。」

 プロトって奴にかなり攻撃が届いている。この分ならいけそうか。


 ユウが黒い粒子を噴出し始め、動きが更に速くなる。プロトの奴は完全に防戦一方だ。


 それでも梢で斬撃を防ぎ続けているのはすごいな。俺ならあっという間に細切れだな。

 もっとも、俺なら正面から戦うような真似はしないけどな。



 ユウがブレードで連続攻撃を加える。

 よく見えないが、空飛ぶ剣も合間合間でプロトを強襲しているようだ。


 空飛ぶ剣の1本がプロトの左肩を斬り落とす。

 ユウのブレードがプロトの胴体に突き刺さる!


「よしっ!」

 俺も観戦に興奮し、思わず声を挙げた。



 ←←←←←←



 空飛ぶ剣の1本がプロトの左肩に・・・、ギリギリで回避される。


「なんだ?」

 俺は目をこする。気のせいか?



 プロトはユウの猛攻を避け後退した。その先、シールドが円形で浮遊していた。

 中に入りこんだ途端、プロトが動きを止めた。まるで縛られているみたいだな。



 ユウの肩にある砲身から黒い球体が放たれる。

 球体はプロトの胴体部を直撃し、腹部がごっそりと消滅した。


「うわ。」

 なかなかグロい。



 ←←←←←←



 ユウの肩にある砲身から黒い球体が放たれる。

 プロトが聖杯を広げ、それを防ぐ。聖杯は動かせるらしい。


「なんだって?」

 俺は目をこする。なんかおかしくねぇか?



 ユウも防がれるのは読んでいたようだ。

 既に背後に回りこみ、プロトの背中にブレードを突き立てる。


 プロトの腹からブレードが飛び出す、ユウはそのまま上へと振り抜いた!!


 プロトの上半身は二手に分かれた。


「おおっと。」

 さっきよりグロい状態になったな・・・・・。



 ←←←←←←



 プロトはユウの猛攻を避け後退した。その先、シールドが円形で浮遊していた。

 だが、後ろが見えているように円を避け、粒子砲を拡散発射してシールドを叩き落す。


「なっ!?」

 なんだ、頭が混乱してきた。何が起こっているんだ!?



 いや、違う、俺は知っている・・・・、この感覚は!!




 ユウの動きが鈍くなる。黒い粒子の噴出が止まる。


「うふふふふ、限界時間のようじゃのぅ。」

 プロトは嬉々として梢を構え、穂先に粒子を溜める。


「ああ、だがまだだ。」

 ユウの背中から白い触手が伸び、バックパックを即座に修復する。


「独行の技師じゃと!?」


 ユウのスーツから再び黒い粒子が噴出する!



 ←←←←←←



 ユウの動きが鈍くなる。黒い粒子の噴出が止まる。


「うふふふふ、限界時間のようじゃのぅ。」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 気が付けば俺は叫んでいた。


 プロトが聖杯の銀膜を伸ばし、ユウの背中にある何かを掴む。


「こんなところに忍ばせているとは、危ないのぅ。」

 聖杯の銀膜は独行の技師を掴んでいた。


「くっ!」

 ユウのスーツは既に飛行もままならないらしく、緩やかに降下している。



 プロトがユウの背後に回り込み、梢で胴体を貫く!!



 だが、直前にユウはスーツを脱ぎ捨て宙を舞っていた。あれはたしか軽装甲スーツだ。


「ユウ!! 回帰のらせんだぁぁぁぁ!!!」

 俺の叫びに、ユウとプロトの両方が反応する。



 ←←←←←←



 プロトがユウの背後に回り込み、梢で胴体を貫く。


 だが、直前にユウはスーツを脱ぎ捨て宙を舞っていた。

 直後、ユウが銀膜に激突する。いつの間にか背後に聖杯の銀膜が展開されていた。


 俺の叫びも無かったことにされている・・・・。


「ユウスケ!!」

 ラファが悲痛な叫びを挙げつつ接近しようとするが、大型エグゾスーツ2体に阻まれる。


 プロトの一突きがユウの胴体を捉える。

 天墜の梢の穂先、二股の槍がユウの腹部に突き刺さる。


「ぐあぁっ」

 ユウのスーツが破損し、欠片が落ちてくる。


 俺の目の前に黒いロケットが転がり落ちてきた。



「回帰のらせんは、入手した瞬間へ戻るはずだ! こんな使い方できるはずがない!!」


 俺はプロトに向けて怒鳴りつけていた。

 プロトは俺を一瞥する。


「言ったであろう? 道具に使われる者と同じく扱うなと。」

 まさか・・・、こいつは、回帰のらせんで戻る時間の量を調整できるのか!?



 俺の絶望を無視するように、プロトは穂先に刺さっているユウに向き直る。

「さて・・・・、特異点は、此方一人で十分だ。」


「な、に、を・・・・。」

 ユウは苦しげにつぶやく。


「だが、殺してしまうのも惜しいのぅ。喜べ、我が血肉になる栄誉を与えよう。」


 プロトの口腔が大きく開き、中から無数の触手が這い出してくる。



 触手に絡め取られ、

 まるで蛇が獲物を丸呑みするように、




 ユウはプロトに丸ごと飲み込まれた。

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