18.フル・バースト

 白銀の侵略者は再び触手を無数に生み出す。


「ラファ!」

 僕とラファは左右に機動! 奴は触手を二手に分け僕とラファを追従してくる。僕はソードサテライトで切り刻みつつ右側へ回り込む。


 スーツのレーザー砲を展開、白銀の侵略者に向けて照射! 僕に向け殺到していた触手を焼切りながらレーザーは白銀の侵略者へと到達・・・・。

 銀色の人型ヴァリアントが立ちはだかり、レーザーを受け止めていた。


「あ、あれは!!」

 ヒロムが声を上げる。どうやら知り合いらしい。。


「気を付けろ! 奴は手ごわいぞ!!」

 銀色の人型が向かってくる。ラファの方にも行っているようだ。


 さらにレーザーを照射するが奴には効果が薄い。銀色の人型は剣状の両手からプラズマ発振しつつ斬りかかってくる。受け止めたブレードとの間で成形フィールドが激しく干渉する。


 つばぜり合いの背後を狙い、ソードサテライトを叩き込む! が、直前に後退し回避された。

 確かに他のヴァリアントとは動きが違うな。


「でも、オールドマンほどじゃない。」

 僕は重力ドライブを吹かし一気に加速、銀色の人型に突撃する。


 牽制のレーザーを照射、敵は両手のブレードで防ぐ。防御で視線が切れた隙を狙い急旋回、左側から肉薄する!

 だが、敵もこちらの動きを捉えていた。僕に向け左ブレードを突き出してくる。目の前にシールドを滑り込ませる!

 さらにシールドを目隠しにして上へ回り込む。頭上からプラズマブレードを振り下ろす!!


 上半身を一刀両断された銀色の人型は、そのまま崩れ落ちた。



 そういえば触手が襲ってこなかったな・・・・・。僕は不思議に思い、白銀の侵略者に目を向ける。


 先ほどまで銀色の木に鎮座していた白銀の侵略者が無い。



 5つ残っていたつぼみが開花を始める。これは発射準備!? 5つのどれかの中に入り込んだのか!!


「逃げる気か!!」

 ここで一つでも逃がせば、レガシを確保できたとしても何かの被害が出てしまう。


「一つも逃がせない! アイ! FBモードだ!!」

『専用FBモード、「フル・バースト」起動します。』

「あ、私も。」

『専用FBモード、「ミルーシャ・リミテッド」起動します。』


 ラファのスーツが分解、ミルーシャフィールドを形成する。


『重力子ジェネレータ、コンデンサ直結、オーバードライブ。』

 背部にあるジェネレータから異常とも言うべき高音を発する。

『動力部、重力子圧縮システムに直結、連装チェンバーおよびブレード発振器へエネルギー供給開始、キャノンバレル展開』

 肩のグラビトンレイ砲門が展開する。

『フル・バースト状態に移行しました。』


 今まさに花開こうとしているつぼみの一つに向けて突撃する。


 肩のバレルからグラビトンレイを連発する。黒い球体の嵐が花弁を粉砕し、内部の巨大卵を穿つ。

 両手のブレードを展開、いつものピンクではなく真っ黒な粒子があふれる。グラビトンブレード。触れた者を問答無用で分解するブレードだ。


 花弁も内部の卵も構わず両手のブレードで切り刻みながら内部へ侵入、この卵はハズレだったか!

 グラビトンレイをばらまきつつ脱出、つぼみが崩れ落ちる。



 丁度同じく、ラファがつぼみを一つ破壊し、続けて2つ目のつぼみへと飛び込んでいく。


 僕も2つ目のつぼみにグラビトンレイの連打を浴びせる。花弁はもろくも崩れ去り、穴だらけの巨大卵が露わになる。

 卵の外殻を切り刻み、こじ開けて内部へ侵入。

「ここにもないか!!」


 再びグラビトンレイをばらまいて脱出。丁度ラファも2つ目を破壊していた。


 つぼみの最後の一つが・・・・・、飛び立つ!!



『FBモード、残り5秒です!』

 持ってくれ!!


 上昇しつつある巨大卵にグラビトンレイを撃ちこみ穴をあける。そのまま内部へ飛び込んだ。


 卵の中へ転がり込む、中心に・・・・あった! 白銀の侵略者!!

 枝の様に細い土台の上に乗っている。


 僕の侵入に対応して周囲に触手が出現し、プラズマの刃を発振させながら一斉に襲い掛かってくる。


『FBモード終了。ジェネレータ融解、停止しました。』

 重火力型スーツが停止し、急激に体が重くなる。


「スーツ解除!!」

 重火力型スーツの胸部装甲を弾き飛ばしつつ、スーツの中から飛び出す。勢いのまま前転して触手を回避!

 触手は背後で停止している重火力型スーツを貫いた。


「SDモード!!」

 軽装甲スーツのSDモードで白銀の侵略者へ突進する。

 触手の隙間を強引に押しとおる! プラズマの刃が装甲をかすり、表面が融解する。


 突進の勢いそのままで土台に蹴りを入れる。土台が砕け白銀の侵略者が宙を舞う・・・・・、そのまま空中でキャッチ、滑りながら着地する。


 目前の数cmまで接近していた触手は、ギリギリで停止していた。




 触手と見つめあうこと一瞬、突然の浮遊感が襲う。

 え? 重力が無くなった・・・・・・・・、いや、違う。これ自由落下してる!



 重力ドライブで空中を移動、入ってきた穴から外に出る。

 巨大卵は既にかなり上昇していたようだ。地面が遥かに遠い。


 巨大卵のロケットエンジンは停止し、地上に向けて全力落下中。ついでも僕も落下中。



 この高度、軽装甲スーツの重力ドライブで無事着地できるだろうか・・・・・。




「だから、俺はお前さんのその適当さが心配だって言ったんだ。」

「え? サイトウさん?」

 通信機越しでサイトウさんの声が届く。僕のすぐ横に卵型コンテナ、内部には防衛型エグゾスーツが搭載されていた。


「FBモードの時点で準備しといたぜ。さっさとそれ着て降りちまいな。」

「さっっっすが! サイトウさん!! 素敵!!」

「お、おう。」


 空中でスーツを装着。僕は無事地上へ降りることができた。






 白銀の侵略者はすぐに水入りのケースに封印した。

 元々はアクトルガスという星に住む富豪が所有していたらしく、安全な保管方法も判明していた。


 どうやらドニスガルの部下が盗み出したために、今回の事件に発展してしまったようだ。


「俺、この後セントラルに行くから、報告かねて管理者に納めてくるよ。」

 彼はジョルネオ・ザザリ、今回の任務で僕と同様にヴァリアントコアを追っていたレガシハンターの一人だ。


 ジグランデの状況が分からなかったため、別で動いているハンターにも救援を要請していた。応じて来てくれたのが彼だ。

 そういえば僕、自分以外のレガシハンターに会うの初めてだった。


「無理言って来ていただいたのに、すみません。」

「いいっていいって、ついでだしね。」

「ありがとうございます。では、よろしくお願いします。」

 ジョルネオさんはさわやかに「じゃ!」と言いつつ、自身の宇宙船で飛び立っていった。





 現場では銀河連邦軍の医療部隊が降下し、ジグランデ人負傷者の治療を始めていた。

 本来は過度な接触を持つのは厳禁なのだが、原因が惑星外からの侵略なだけに管理者からも救援の指示が出た。

 ジグランデの部隊は、やっと救護部隊が到着したところだ。


 この先、ジグランデの各国政府との調整が大変そうだ・・・・。まあ、それやるのは管理者だけど。



 僕はヒロムのところにやってきた。ヒロムも連邦軍医療部隊から処置を受けている。ここにはラファも居た。

 僕がジョルネオさんにレガシを渡している間に、ラファはヒロムのところに来ていたようだ。


 ヒロムは左手と右足が撃ち抜かれており重傷だったが、命にかかわるキズではないようだ。


「ヒロムのおかげで、レガシを確保することができた。ありがとう。」

 表情のややすぐれないヒロムを励ます意味でも、僕は礼を述べた。


「俺の、手柄じゃない。勇敢な仲間が居たんだよ・・・・、あいつらの功績だ・・・・・。」

 そういいつつ、ヒロムは言葉に詰まらせていた。

 僕もガーランド中佐のことを思いだした。ヒロムもこの戦いでいろいろあったのだろう・・・・。



 僕には、ヒロムに掛けられる言葉が見つからなかった。どうしたら・・・・・・。

「ヒロム!!」

 ヒロムとよく似た装備の黒髪女性が駆け寄ってくる。


「さ、サヤ!?」

 ヒロムが驚きの声を上げている。


 サヤと呼ばれた女性は、処置中のヒロムに飛びつくように接近した。

「ああ、こんなになって・・・・・、また無茶やらかしたんでしょ!?」



「い、いや、あの、サヤだって、最後に見たときは意識不明だったのに・・・・・。」

「ヒロムが発った直後に目覚めたのよ。どうせまた無茶するんだろうから、急いで追いかけてきたのに・・・・・。」

 最初は語気が強かったが徐々にトーンが落ち、泣きそうになっている。

 ヒロムは反省するような、恥ずかしがるような微妙な表情だ。


「ヒロム様!!」

 あ、そういえば・・・・・・。


 ルーシアさんが駆け寄ってくる。

「ルーシア!?」

 ヒロムが驚愕と少々の恐怖が混じった声を上げている。



 ミルーシャを経由してここへ来る際、ヒロムを心配するあまりルーシアさんが同行するといって聞かなかった。

 仕方なくジジルア中佐にお願いして連邦軍の船に乗せてもらっていたんだった・・・・・・。



「ああ、こんなにお怪我をされて・・・・・、私の回復術法が使えればお助けいたしますのに・・・・・。」

 ルーシアさんはヒロムの手を握り、涙を浮かべている。


「あ、あなたは?」

「貴女様は?」

 サヤさんとルーシアさんはお互いを認識した途端、停止している。


「"私の"ヒロム様はお怪我をされています。少し離れていていただけますか?」

「"私の"ヒロムは今治療を受けてるところなの。邪魔しないでもらえるかな?」

 おおぅ、見えない力場が形成されているぞ。

 連邦軍医療部隊の衛生兵が困惑している。


「あ、あの、二人とも・・・・。」



 よし、ヒロムは大丈夫そうだな。帰ろう!! 

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