13.傀儡師
戦況はかなり押している状況だ。ガルロマーズの艦隊は壊滅状態、主戦場はプラント周辺まで至っていた。
戦線を押し上げてきたが、ここにきて問題が発生していた。
「内部へ侵攻した部隊からの通信が途絶えている。すまないが、貴殿らにも内部へ突入してもらいたい。」
司令部からの通信だ。どうやら内部に何かあるらしい。よくよくこき使ってくれる・・・・・。
「わかりました、内部へ突入します。」
「ラファ、要塞内へ突入する。」
「かしこまり。」
周囲に居た敵機を落としつつ離脱、プラントにある巨大なドッグの一つに向かう。
ドッグ正面では、ロスタコンカス軍突入部隊が戦闘中だ。このドッグはまだ制圧できていない。
「僕が正面から突入して敵を引き付ける。ラファはその間に敵を落してくれ。」
「あいあいさー。」
ロスタコンカス軍の前線を飛び越え、ソードサテライトと共にドッグへ突入する。
ドッグ内部にはケインズ級が2隻係留されており、防壁兼砲台となっている。
ドッグ内は十字砲火の嵐だ。回避とフライングシールドでの防御を併用し、内部に押し入る。
周囲の敵機はソードサテライトとレーザー砲の一斉射で落としていく。
僕が中心で注意を引く中、脇から侵入したラファが次々と敵機を薙ぎ払う。
ラファがフォースロードセイバーでケインズ級2隻のブリッジを連続で叩き潰す。艦の砲台が沈黙する。
僕らに続き、ロスタコンカス軍も突入、ドッグを制圧した。
「ここは任せました。我々は先行します。」
ロスタコンカス軍部隊に一言残し、内部へと侵入する。
内部の構造は割と単純で迷うような場所もない。かなり内部まで進んできた。散発的に敵機は現れるが、特にコレといった罠なども無い。
既に突入しているはずのロスタコンカス軍は見当たらない。戦闘の痕跡もほとんど見当たらないが・・・・・・、ん?
「あれは・・・・・。」
ロスタコンカス軍のエグゾスーツ? 動かない。中の人はすでに?
いや、1体だけじゃなく、何体も浮いている。大型のエグゾスーツまで・・・・・。
よく見るとガルロマーズの物もある。ここで争ったのか?
お、ピンクのエグゾスーツがある。黄色のクマの柄だ。奇抜なデザインだな・・・・。
あれは、動いている・・・・・。
「こ、これ以上は、い、いぃかせない・・・・・。」
女の声? 中身は女か? クマ柄スーツが両手を広げる。一瞬、手から何かの光が発した。
その瞬間、周囲で浮遊していたスーツたちからカタカタと奇妙な音が漏れ始める。
「なに!?」
誤作動しているロボットのようにエグゾスーツたちが動き出す。まるで操り人形のようだ。動きが気持ち悪い! ・・・・・動きがとまった?
全スーツが一斉に僕らの方を向いた。
エグゾスーツたちが一気に襲い掛かってくる!!
大型エグゾスーツが接近してくる。ドッキングブースを貫く・・・・、止まらない!? ソードサテライト2基で胴体を十字に貫く。
それでも止まらない!!
「おおおおお!!」
全身を切り刻む。ばらばらになったスーツはやっと止まる。
次々と亡霊のようなスーツたちが襲ってくる!!
「ど、ドニスガル様が、だ、脱出されるまで、わ、わ、わたしが、こ、こ、こ、ここぉを、護る!! ぱ、ぱ、パペットマスターの、な、名にかけてぇぇぇ!」
ドニスガル!? 何者だ!?
『データベース照合、該当あり。氏名 ドニスガル・ディブロス サロマニック商会の会長です。』
サロマニック?
『前会長はコルン・ディブロス、セントラルにて"天墜の梢"により死亡しています。ドニスガルはコルンの実子です。』
「な、あのコルン!? 息子が居たのか!!」
天墜の梢の事件後も忘却の羅針盤は行方不明だった。もしや、ドニスガルが持っているのか!?
次々とスーツが襲い掛かってくる。手ごわい。スーツの機能自体は停止しているのに動いている。
その上、銃器を発砲してくる。どういう原理だ!?
心臓や頭など、人体の急所を破壊しても止まらない。まるでゾンビみたいだ。
「ユウスケ、行って。こいつは、私が倒す。」
「ラファ!?」
「どにすがる? って、たぶん悪い奴、でしょ? 逃がしちゃ、ダメ。」
「す、す、すすぅ~ませないぃぃ、先にはぁぁぁぁ!!」
僕の行く手を阻むようにゾンビスーツたちが立ちふさがる。
「邪魔!」
ラファがフォースロードセイバーからプラズマを拡散発射し、ゾンビスーツたちを蹴散らす。
「なに、すぐに、追いつく。心配ないよ。」
うぁ、言ってみたい、そんなセリフ。
「わかった・・・・、気を付けて。」
「とーぜん、終わったら、ご褒美・・・・・。ポッ。」
自分で「ポッ」とか言わないの。まあ、言いたいことは分かった。
僕はゾンビスーツをかき分け、強制突破を試みる。
「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!」
クマ柄スーツが飛びかかってくる。ゾンビスーツも大量に追いすがってくる。
「やらせない、と言った。」
瞬時にしてラファが間に立ちふさがる。ゾンビスーツたちは細切れだ。
「うがらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
クマ柄スーツがプラズマブレードを展開し、ラファと切り結ぶ。
僕はラファを後目に、通路を奥へと加速する。
====================
「お、おまえの、おまえの、おまえのせいでぇぇぇぇ!!!」
ピンクが怒っている。
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
壁をガンガン叩いている。とりあえず見守っておく。
「殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
また両手を広げる、手から光が飛ぶ。
他の通路からもスーツが這い出してくる。どんどんとスーツが増える。
「殺すと、言うだけなら、誰でもできるよ。」
フォースロードセイバーを担ぎ、ピンクを中心に旋回する。
すれ違いながら次々とゾンビどもを切り刻んでいく。中途半端に残すと、また動いてしまう。
「ぬがぁぁぁぁぁぁぁ、なぜなぜぇぇぇ、」
相当頭に血が上っているみたいだ。
ゾンビをかき分け、一気にピンクに接近する。セイバーを薙ぎ払う!
「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「っ!?」
突然現れた巨大な手が、セイバーを受け止めている。
壁だった場所から、手が生えている。
「あぁぁぁがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」
壁がはがれ、巨大な人型に変わる。反対側の壁からも人型がはがれてくる。
大きい、ハーキュリーズの2倍以上の大きさ。
もう1体、いや2体。全部で3体の巨大人型が壁をはがして出てくる。
「うぇぇへへへっへっへっへっへぇぇぇぇぇ」
ピンクが変な声を漏らしている。気持ち悪いやつ。
巨大人型が手を振り下ろしてくる。セイバーで斬りおとし、腕を駆け上がる。頭部を切断する!
私の背後にいた巨大人型の両手が左右から迫る、落下して避けると、頭上で両手がぶつかり合う。私は蚊じゃない。
下から斬り上げ、腕を切り落とす。返す刀で反対の腕も落とす。
セイバーからプラズマを発射し、人型を穴だらけにする。
残り一体が右手でパンチを放ってくる。空中宙返りで回避。そのまま回転速度を上げ、腕を切り刻みながら登って首を斬り落とす。背中に砲弾を撃ち込み破壊した。
「はぁっはっはっはっはっはぁぁぁぁ・・・・」
嗤っている?
「ハーキュリーズ?」
ハーキュリーズの動きが悪い。
視界の状態表示には急激に多数の警告が表示された。
『危険、各部位が制御不能になっています。』
アイさんが危険を知らせてくれる。
どうしたらいい?
『ハーキュリーズからの脱出を推奨。』
「ん、スーツ解除。」
ドッキングブースから飛び出す。
「これは・・・・・。」
ハーキュリーズの全身にとても小さな人型が張り付いている。
「あっははははははははは、これで、お、お、おまえのぉぉ、す、スーゥツはぁぁ、もらったぁぁぁ。」
ハーキュリーズが歪な動作で動き出す。フォースロードセイバーがプラズマの刃を発振する。
今の私は重火力型スーツだ。背中にはRimが準備してくれたブレイヴセイバーがある。
ブレイヴセイバーはフォースロードセイバーの小型版だ。
「アイさん。アレを使う。」
『使用後、重火力型スーツも損壊します、よろしいですか?』
「こいつ倒せれば、あとは、ユウスケに、任せるの。」
『かしこまりました。FB(フィニッシュブロー)モードを起動します。FBモード終了後はジェネレータが破損します。ご注意を。』
「はい。」
『専用FBモード、「ミルーシャ・リミテッド」起動します。』
重火力型スーツが分解、拡散する。私は軽装甲スーツの状態になる。
『重力子ジェネレータ、コンデンサ直結、オーバードライブ。』
分解したスーツのバックパックが甲高い音を立て始める。
『フィールドポイント間に専用フィールド形成。』
分解したスーツの部品と部品の間で、薄く光る膜が作られる。
通路全体を覆い尽くす、フィールドが出来上がった。
『ミルーシャフィールド形成しました。』
「な、なにを、し、し、し、している!?」
「ここは今、ミルーシャ限定空間・・・・・。覚悟はいい?」
「な!?」
時間もない、容赦はしない。
「ソウルバースト!」
私の全身が赤いオーラに包まれる。
ブレイヴセイバーを構える。セイバーからプラズマの刃が形成される。
私の背後、ハーキュリーズがフォースロードセイバーを振り下ろしてくる。
「五十四連、」
振り返りながらハーキュリーズを切り払う。折り重なるほどの連続斬撃がその巨体を薙ぎ払う。
ハーキュリーズの胴体部は、数えきれない千切りになった。
「ごめんね、ハーキュリーズ。」
再び生み出された巨大人型が接近する。
とっても動きが遅い。これでは私に触れることもできない。
振り下ろされる腕をスイスイと掻い潜り、全身を切り刻む。
小さい人型が大量に集まってくる。ブレイヴセイバーのプラズマを飛ばし、全て消し飛ばす。
ゾンビたちが寄ってくる。全て切り刻む。
ピンクに近寄る。
「な、なんなんだ、あ、あ、あんたぁぁぁぁ!!・・・・・・がふっ」
セイバーでピンクを貫く。
「あ、が、」
「私はレガシハンター・・・・・・の妻。」
セイバーを抜き、構える。
「百八連、」
刹那、ピンクは無数の輪切りに変わる。
「ラピッドスラッシュ。」
『FBモード終了。ジェネレータ融解、停止しました。』
「スーツ、全部壊しちゃった・・・・・。怒られるかな・・・・・・。おりょ?」
ピンクはたくさんの薄切りになったが、両手だけが無傷で漂っている。
「これは・・・・?」
ピンクの残った両手を掴む。
『物体からレガシの固有反応を確認。データベース照合、該当あり。名称、"傀儡師の小手"と推測。』
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