2.包囲網突破
『12時方向カリーナ級から、再度の停船要請。』
応じて停船してしまったら、大統領は拘束されてしまうな。逃がす約束である以上、停船はできない。
『全艦船から砲撃。』
「シールド展開、面舵!」
フライングシールドを展開、全方向からの艦砲射撃をシールドで防ぐ。周りで連続的に爆発が発生する。
砲撃を防ぎつうソレイユが回頭する。3時方向は1隻のみだ、そこを突破するのが一番マシだろう。罠の可能性も無いではないが。
『対象群からの攻撃行為を確認、対象を敵性勢力と断定、サポートAIによる代理承認、制圧許可。』
制圧許可か。そもそもソレイユの装備は艦隊戦が想定されてないんだよな。艦船を"制圧"できる装備がない。結局防御しつつ突破しかない。
ガルロマーズ艦船が接近してくる。砲撃の着弾周期がだんだんと短くなる。
『フライングシールド残弾少。砲撃を防ぎきれません。敵艦ミサイル発射!』
「防壁展開!」
最後のシールドがミサイルの直撃で爆散する。重力場電磁防壁を展開し、敵艦と交錯する。
「耐えてくれよ!!」
至近距離の敵艦から一斉砲撃がなされる。防壁に多数被弾。艦内にも爆音と衝撃が伝わってくる。敵艦を通過した!
「ダメージは!?」
『損傷ありません。』
「最大戦速で一気に振り切るぞ!!」
重力ドライブが唸りを上げ、ソレイユが加速を開始する。
『後方からミサイル接近。』
「防壁を後方に集中展開!」
『前方に敵機5!』
「なに!?」
後方から爆音が響く。ミサイルが防壁に着弾している。
前方からはエグゾスーツが砲撃を加えてくる。前方には防壁を展開していない。ソレイユの装甲に着弾し、艦内に衝撃が伝わる。
「ソレイユが通過することを見越して、あらかじめエグゾスーツを後方で待機させていたのか。」
既にソレイユのフライングシールドは全滅している。エグゾスーツを排除できる装備が残っていない!
敵エグゾスーツが接近してくる。
「アイ、操艦を頼む。防衛型で出る。」
僕は席を立ち、格納庫へ向かう。
「俺たちも手伝う。」
護衛隊の3人が申し出てきた。
4人でエグゾスーツを着込み、格納庫から飛び出す。
レーダー上、3人の反応には友軍として、ガーランド、バーリゴル、モントとマーカーしておく。
『ソレイユ艦上、エグゾスーツ5体。対象を同様の敵性勢力と断定、制圧許可適用。』
レーダーに5つの赤い点が表示される。敵は既にソレイユに取り付いている。
護衛隊3人は格納庫から出るとソレイユ艦上に着地し、銃撃戦を開始する。僕はソレイユの下側を回りこみ、敵スーツ部隊の後方に着地する。前後からの挟撃だ。
5人の敵スーツ部隊は濃紺に染められている。一人だけ赤いスーツが居るな、あれが隊長か?
ソレイユは加速を続けており、かなり速度が上がってきている。
風圧が激しく、フライングシールドを浮遊させられない。両肩にシールドをセットし、敵スーツに接近する。
敵スーツ2体が同時に機銃を掃射してくる。姿勢を下げ射線の下をくぐる。
1体に接近、アッパーカットを放つように下から胸部装甲をすくい上げ引きちぎると、むき出しの胸にスタンナックルを軽くあてる。
敵は麻痺したので、そのまま艦上から振り落とす。
ソレイユは既にかなりの速度だ。この速度では一旦振り落とされたら、もう戻ってはこれまい。
「こ、こいつ!!」
もう1体が驚愕の声を上げつつ砲撃を加えてくる。右肩のシールドが爆散する。爆発を目くらましにし、接近。けり落とす。
「中尉!!」
通信機から女性の声が響く、今のはモント軍曹か?
振り返ると、既に1体排除されており敵は残り2体だ。ガーランド中尉が敵スーツ1体から猛攻を受けている。さっきの赤いスーツだ。
ガーランド中尉のスーツは、赤スーツの超振動ダガーによりかなり損傷している。
僕は赤スーツの背後に接近する。が、背後に目でもあるように、僕に向け機銃を放つ。
左肩シールドを傾け、滑らせるようにして銃撃をそらす。一気に接近、赤スーツはそれに対応するように、振り返りながら右手のダガーで切りつけてくる。
腕を押さえ斬撃を受け止めるが、流れるように蹴りを放ってくる。仰け反って回避するも距離が開いてしまった。
また銃撃が来る。再度シールドで防ぐ。そろそろシールドが限界だ。
シールドを投げる。赤スーツが左手で弾いた。シールドの影から接近しスタンナックルを打ち込む。が、紙一重で回避される。
「やるな。」
赤スーツのつぶやきが聞こえる。この敵ずいぶんと余裕があるな。あまり時間もない、力技で行かせてもらう!
「SD!」
直列起動したコンデンサ出力を利用し、高速で左側に回り込む。赤スーツもSDの高速機動には追い付かなかったようだ。
再度スタンナックルが敵装甲をかする! まだ避けるか!!
赤スーツがダガーで切りつけてくる。左腕でダガーを受け止める。左腕装甲が火花を散らす。
力任せに右ボディブローを打ち込む。赤スーツの防御を突破し装甲にめり込む。が、肉体に命中する刹那、赤スーツは身をよじって回避する。スーツがはがれ、生身が見えかけている。
そのまま装甲の一部を持ち、外に放り投げる。よし、艦上から引き剥がせた。
赤スーツが腕からワイヤーを発射する。ソレイユの後方に突き刺さる。ワイヤーでソレイユにしがみついてる!?
ワイヤーでぶら下がった状態から、赤スーツはソレイユ後方の推進器に砲撃を加える。
「な!!」
2基の推進器の内、1基が爆発炎上する。衝撃で赤スーツは弾き飛ばされていった。
辛くも、首都の包囲網からは脱出できた。しかし、ソレイユ重力ドライブの外部推進器が1基大破した。この状態では、惑星離脱どころではない。
「どうですか、サイトウさん。」
「こりゃ、すぐにどうにかできねぇぞ。とりあえず直してみるが、数日で直せるかどうか・・・・・。」
自爆で穴の開いた廊下の補修が終わったばかりで申し訳ないが、サイトウさんに今度はエンジンを見てもらう。状態はあまり芳しくないようだ。
このままではロスタコンカスから離脱はできない。数日身を隠すか、それともどこかで修理をさせてもらうか。
どちらにしろ、大統領と相談する必要があるな。もしかするとナリアさんあたりは何かいい案があるかもしれないし。
ダイニングルームへ向かうと、外の廊下から話し声がする。この声は、護衛隊の3人か?
「戦時下なんだから、装備を徴発したらいいじゃないすか。」
確かバーリゴル少尉だったか。
「彼は銀河連邦の機関員で、ロスタコンカスの国民じゃない。我が軍の都合で徴発はできんよ。」
ガーランド中尉だ。僕の装備はジアース連邦の持ち物で、銀河連邦の管理下だからなぁ。彼ら装備の修理くらいはできるけど、装備は渡せないんだよなぁ。
「けっ、いい装備もってりゃ、そりゃ強いでしょうよ。」
「装備だけで、あれだけ戦えはせんよ。」
「そうでしょうか。そこだけは私もバーリゴル少尉の意見に賛成です。」
モント軍曹も同意している。確かに、僕自身も装備のおかげで戦えてる自覚はあるよ。
「そこだけってのどういうことだよ。」
他は同意できないって意味だろ、そのまま。
「彼には、戦いの状況を見る目がある。それに、流れを持ってくる強い力のようなものがあるように感じる。」
ガーランド中尉は妙に僕を持ちあげてるな。僕、そんなオカルトチックな能力無いです、たぶん。
僕はわざとらしく足を鳴らし、ダイニングルームに向かって歩く。3人が僕に気付いた。陰口はぜひとも本人にばれないようにやってほしいところだ。
「先ほどはありがとうございました。助かりました。」
一緒に出撃してくれたしね、礼節は大事にしておこう。
「いや、こちらこそ、助かった。丁度、君の腕前を話していたところだ。どうだ、我が軍に入隊しないか?」
ガーランド中尉、よほどオカルトチックなのがツボだったのか。ストレートに勧誘してくるなぁ。
バーリゴル少尉は目を見開いて驚愕な表情だ。モント軍曹は仏頂面だな。明らかに良く思われてない。
「いやぁ、僕はこの仕事が好きなんで。」
丁重にお断りさせていただいておく。
すると、今度はバーリゴル少尉もモント軍曹も、「え、断るの!?」といった表情になる。結局どっちなんだよ!
「そうか、それは残念だ。おっと、大統領に御用だったかな。」
ガーランド中尉は笑顔で道を開けてくれた。大人だな、後ろの二人と違って。
「ありがとうございます。」
僕は軽く会釈して、3人の間を通過する。
バーリゴル少尉とモント軍曹が少々険しい表情をしているようだったが、見ないふりをしておく。
「という状態ですので、すぐにはロスタコンカスから離脱できない状況です。すみません。」
ダイニングルームにて、ソレイユの状況を大統領に伝えた。
しばらくはロスタコンカスから脱出できないため、一時的にも身を隠す場所が必要だ。
大統領か、お連れの方か、どこかいいとこ知らないだろうか。
「いやいや、まずはロスタリーナを脱出できただけでも良かったと考えよう。しかし、この後どうしたものか。シュゴール補佐官、どこか良い隠れ場所はあったか?」
「隠れ場所と言われましても、このような事態は想定外でして。軍の命令系も分散してめちゃくちゃです。」
シュゴールと呼ばれた補佐官はぶつぶつと文句を言い続けている。シュゴール補佐官の反応に、大統領も少々困り顔だ。
たぶん、平時は補佐として優秀なんだろう。突発的事態に弱いタイプらしい。
「南極基地はいかがでしょうか。惑星ロスタコンカス上でも随一の戦力を誇りますし、すぐに陥落ということも考えにくいかと。」
ナリアさんが意見を述べる。ナリアさんは逆に突発的事態に強そうだ。
「確かに、南極基地なら工廠がある。修理も可能だな。ユウスケ殿、それでいかがか?」
現状、行先が無い状況だ。迷うことも無い。
「わかりました。南極へ針路をとりましょう。」
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