5日目 へーわがいちばん!


ハァイ!

ハァイ!

あーちゃん!

アルちゃん!

あふちゃん!

アテちゃん!

みんな愛してるっ!


Byアイドルファン一同



―――――


風の強いある日。

コンビニの自動ドアが開き、客が入ってくる。

「いらっしゃいませー」

サタンは棚におにぎりを並べながらいった。

しばらくすると、その客がレジに向かい始めたのをみたサタンは

「ただいまお待ちください」

と言って接客にあたった。


サタンはその後、言葉を失った。

その客が買おうとしているもの。

それが正しく、魔王殺しの剣エクスカリバーだったからだ。

(な、なんだとぉ!?)

うろたえながらも、なんとか口に出ていまうのをこらえる。

(こ、これを買うのか!?

お、俺知らないから!

別に悪いことしてないから!)

内心かなりびくついているが、

バアルに日々どやされてきた経験によって培われた営業スマイルは崩れない。

「こ、こちら2500円になります」

すると、

「そこの鶏も」

といって、チキンを指さした。

「は、はい!」

サタンは揚げたチキンをとりだして、紙の袋に入れ始める。

(え、これどうすんの?

食べるの?それとも試し斬りにつかうの!?)

なぜわざわざチキンを試し斬りにつかわなければならないのか。

という疑問は、今のサタンには浮かばなかったらしい。

チキンを紙で包み、テープで止める。

それだけの作業なのにやけに長く感じられた。

「そ、それでは、

2685円になります。」

そう言うと財布らしい小袋をとりだし、漁り始める。

1000円札が2枚

500円玉が1枚

100円玉が1枚

50円玉が1枚

10円玉が3枚

1円玉が4枚


(ん?1円たりなくないか?)

もう一度数えてみるが、やはり1円が足りない。

「すいません、

1円玉が...。」

と言うと、

客は1度払ったお金をすべて財布にしまい、

1万円札を出した。

(Oh,hollo.

Yukichi.)

一瞬言語を間違った気がしたサタンは、はっとすると

いそいで会計を済ませた。

釣り銭と商品を袋にいれる。

なお、剣は袋を貫通して刀身が見えている。

そのまま、客は剣とチキンをぶら下げたまま去っていった。

「こえぇ。

あれがあれか、

いわゆる悪魔ってやつだ。」

それはお前だと言わせるツッコミ役がいなくて惜しい。



―――――


「こえぇ。

あれがあれか、

いわゆる悪魔ってやつか。」

アンタレスはフードを脱ぐと、

ため息をついた。

「びくついてつい、チキンも頼んじゃうし

1円がとれなくて1万円で会計しちゃったし...

こんなにビクビクしてて魔王なんて倒せるのかな?」

そういって買ったチキンを開けた。

「魔王はあの下っ端店員とは比べ物にならないくらい怖いんだろうなぁ。

...はむ...でもチキンは美味しいんだね。」

そんなことを言いつつ、魔王城入口に来てしまっていた。

「...て、ここ。

魔王城じゃん。」

黒く、山のように聳え立つ城を前に、

足がすくんで、

いつの間にかにげだそうとしていた。

だがそのとき、冷たい風を背中に感じた。

それは、アンタレスに負けるなと言っているようにも感じられた。

「......いつまでもびくついてても仕方ない!

行こうか。にゃ助」

胸からこみ上げる熱いもので、もう震えは止まっていた。

そして、服の中から

「にゃあ。」

という声が帰ってきた。


>>><<<

「おもってたんとちがう」

アンタレスは今、魔王城内...

玉座の間の扉の前にいる。

正直、ここまで来るのは凄く簡単だった。

初めは剣を持った下級悪魔やら

槍を持った中級悪魔やらがいたが、

途中からにゃ助を見つけると、

もう愛でる愛でる。

ゾロゾロと悪魔がにゃ助に群がり、

最後にはこの城で2、3番目に偉そうな悪魔さえにゃ助の虜になってしまった。

悪魔とは一体何だったのか...。


それは今は置いておこう。

遂に玉座の間に至った。

これまでスライムを倒して...ないな。

ケットシーを仲間にしたり

伝説の剣(税込2500円)を手に入れたり...。

長かった。

だが、今日ここで決着がつく。

「いざ、魔王!

覚悟!」

昔憧れたセリフを吐き、扉を開ける。

ズズズと重い扉が開かれる。

そこには―――


子供部屋としか思えないほどカラフルな光景が広がっていた。

「...はて?

俺は部屋を間違ったか?」

そう思って思い返してみるが、ここ以外魔王の部屋は有り得ない。

「えっ、なんかおもってたんとちがう」

部屋全体に聞こえる声で言うが、

やはり返事は返ってこない。

様々なペンキで色付けされたインテリア。

しかし、物自体は物騒なものばかりであることから魔王の部屋であることが伺える。

鎧、剣、槍、骸骨。

そして、

アイアンメイデン。

この鉄の棺だけ他のものとは違って、とても丁寧で綺麗に装飾されていた。

よく見ると化粧まで成されている。

「す、すげぇ。」

なぜ鉄の棺にこんなことをしたのかは知らないが、

とりあえずなんか凄いと思った。

他に何かないか気になり、辺りをみると

机の上に一枚の紙があることに気がついた。

「ん?」

アンタレスはそれをみる。

それは手紙のようで、


勇者へ


魔王現在バイト中∀⌒☆

早く帰るから待っててね(*≧▽≦)ノシ))


P.s アイアンメイデンの中にお菓子があるから食べてね!


魔王より



とあった。

それを読んだアンタレスは

そっとその紙を机の上に置くと、

「なんかおもってたんとちがう!」

と叫んだ。


>>><<<


「ふぅー。

きょーも疲れた!」

バイト帰り。

裏口から城に入る。

「ただいまー」

すると、近くの部屋からアタンから預かっているゴブ君が近寄ってきた。

初めこそ警戒していたものの、

ここ数日でかなり懐いた。

「おー、よしよし。

帰ったぞー」

サタンはニッコリ微笑みながら頭を撫でる。

ゴブ君は嬉しそうにもじもじしている。

「それじゃあ、着替えてくるから待っててな」

そういってすぐ近くの玉座の間へ入る。

「...。」

「...。」

すると、見知らぬ人間と目が合った。

モグモグとアイアンメイデンの中にあったお菓子を頬張っている。

「えっと...。

……いらっしゃい」

その人間は咀嚼していたものを飲み込むと

「......お邪魔してます」

と言った。

「あの......

あなた...コンビニで働いてますよね?」

「そうですね。

主に副業に...。」

そして会話が途切れる。

気まずくなったサタンは

「えっと、ゆ、勇者...さんでいらっしゃいますか?」

とおそるおそる尋ねた。

「え、ええ。

まあ。」

すると、勇者はこくんと頷きながらそう言った。

そして、また会話が途切れた。

焦るサタン

(あれ?こんな時なんて言うんだっけ?

あ、そうだ!たしかここら辺に台本が!)

サタンは近場の棚の中から1冊の本を取り出し、

開き

「...ふ、ふははは!

よくここまできたな!

…えーっと、

お、臆さずにここまで来たこと、

褒めてやろう。

き、聞いておこう。

お前は...

えっと...。

ち、父の敵を取りに来たのだろう?

な、ならば

我らは......

我ら......

......あの、これ。

なんて読むんですか?」

「えーっと、ふぐたいてん、かな。」

「不倶戴天の仲!

さぁ、かかって来い。」

と言った。

それに対し、勇者は

「......あの。

すいません。

訂正しといて何ですけど

俺の親父、

今も生きてます」

一瞬の硬着。

のち、いい直す。

「え、

じ、じゃあ

は、母の仇を取りに来たのだろ?」

「母もまだ生きてます。」

「弟の」

「そもそもいません。」

「妹の」

「アイドルグループ

High!High!girls!

で活動してます。」

それを聞いたサタンは食いついた。

「え?うちの妹もなんだけど」

「え?

誰ですか?」

「アタンことあーちゃんだよ。」

「あ、あーちゃん!!の兄上でしたか!

これはとんだ失敬を」

「え?そちらは...」

「アルテミスの

アルちゃんです」

「キタコレ!

アルちゃんキタ!」

この時、2人に疑問が湧いた。

初めにサタンが気づいた。

「え?じゃあ何で」

続いてアンタレスも気づく

「俺たち...。」

「「争っていたんだっけ?」」



―――――




その答えが出ぬまま、

2人は、ちょうど近くでやっていた

High!High!girls!

のライブに参加した。

熱気に包まれる会場。

暗闇に光り輝くペンライト。

ステージには

アタンとアルテミスがセンターで踊っている。

魔王サタン勇者アンタレスは肩を組みながら叫ぶ。

「「ハァイ!

ハァイ!

うぉぉぉおおお!

あーちゃん!

アルちゃん!

愛してるー!」」

会場はとても盛り上がり、

魔王と勇者は存分にライブを楽したんだのであった。



やはり平和が一番である。






―――――――


おぉ~よしよし。


………あ、どうも大元帥のルシファーです。

どうやらケットシーが紛れ込んでしまったみたいで………

可愛いですよねぇ~。

…え?どうしたんですスタッフさん?

え?時間?

え、ちょっ!

俺の出番これで終わり!?

まだ序盤しか出てないって、

あ!ちょっとまっt、、、、、、。




勇者は、友情と9999EXPを手に入れた!  ▽

コンビニ店員・魔王がパーティーに参加しました! 

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魔王様のみせばん! チョコレートマカロン @Bsk

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