異世界ファンタジーになれた人でも、美味しく読める食の話でもあります。
むしろ慣れ親しんだ単語が並んでいるので、そういうジャンルを好む人ほど楽しく読めるかもしれません。
異世界ファンタジーの世界で起こりうる事柄が、美味しそうな料理の描写に対する読者の味覚の想像を更に引きたててくれます。
そして後半。主人公の生い立ちや、人生、考えを読み進めた上で改めてこの食の話を読み進めてみれば、きっとあなたにはそこにある幸せな食卓の姿が見えるようになるはずです。
あらすじに綴られている様に作者さんの後書きも含めて読むとまた違った話の味方が出来るかもしれません。
それこそ、本当に作中である登場人物が述べている、美味しい食事の取り方……ならぬ物語の取り方(読み方)なのかも。
その物語は、人為的に作られた幸福の話。
ぜひ、前半、後半、後書きを含めて三つの側面からこの食の物語を味わってみてくだささい。
燕子花美蘭の希望した異世界ツアーは、どれも死の危険が高いものばかりだった。
生まれてこのかた、不幸続きの彼女は、死を決意していたのである。
願わくば、地球ではない場所で、人生を終えたい……。
だが、彼女のグルメツアーの添乗員になったホークは一風変わった……いや三風ほど変わった人物だったのだ。
彼女の人生を変えるグルメツアーが今始まる!
私事ではあるが、今回の『日帰りファンタジーコンテスト』で、わたしも芳賀概夢さまと同じく、添乗員をモチーフに小説を書いた。
ずっと興味を持っていたのであるが、今夜ようやく時間を作って拝読できた。
結論……すばらしい! もっと早く読めばよかった!
オードリー・ヘプバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』をもじったタイトルだが、映画の内容とはあまり関係ない。
あくまで、主眼はグルメツアーである。
文章は丁寧で、食事の描写がすばらしい……のであるが、よだれが止まらずに読むのに苦労した。これから読もうというかたは、空腹時に読むのは止しておいた方が賢明かもしれない。
キャラクターのネーミングもしゃれが効いている。
ツアーコンダクターの名前はホーク。このHAWKという単語が持つ意味は作品内で暗示されているが、それだけではない。主人公の名字、燕子花(カキツバタ)の花言葉は『幸せはかならず来る』。彼女にぴったりだ。きっと芳賀概夢さまの意図したものだろう。
じつに素敵なツアーを体験できた。
彼女に幸せの花が咲くことを祈りつつ、レビューを終えたい。
異世界の料理を堪能できるという、まさに夢のようなフルコース!
そこに描写されていくのは、殺しに来てるだろうと言わんばかりの、美しくも豪快な料理の数々。爽やかな風味の果実のジュース……岩塩を振っていただくお肉……こっちも食べたいのに、画面が邪魔しやがる!!(おい
そしてその料理をありつく主人公ですが、色々と身の上がありまして……しかし、彼女はこの世界にやってきてよかったと実感するようになります。
その辺は読んでのお楽しみという事でネタバレは避けようと思います。まずはこの料理の壮大なフルコースを、ぜひ堪能して下さい!!
ああ、腹減った……。
あぁ、とても胸がポカポカです。
一味も二味も癖のある異世界旅行の添乗員が案内した旅、最高でした。
すっとぼけながらも、料理を提供する絶妙のタイミング。まるで心を見透かしたようにだされる皿は……ズルいですね。
幸せって何か。
不幸って何か。
異世界ティファーニの旅を通して、大切な事を添乗員ホークが教えてくれます。それも全て美味しい料理を食べるための下ごしらえ。
ここぞというときの飯テロの破壊力に空腹は刺激され、笑顔がとまりませんでした。
全ては美味しい朝食を食べるため。
あぁ、本当に素敵で温かく、幸せな味付けの物語を堪能させて頂きました。
あなたも、すっとぼけた添乗員と異世界旅行に出掛けてみませんか?