凪いでる海へ行こうか

作者 松岡弥美

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★★★ Excellent!!!

 北の大地に仲の良い姉妹がいた。姉は大学生で、妹は高校生だ。姉はあることをきかっけとして、精神的な病気になってしまう。これを機会に家族がバラバラになる中、妹だけは友人たちの力を借りて、姉の病と正面から向き合う。そして妹のおかげで、姉は病から立ち直りつつあった。
 そんな姉は、妹に背中を押される形で障害者手帳を手に入れる。これは姉にとって、自分の病を障害として受け入れる意思表示だった。
 そんな中、妹は姉を病に間接的に追い込んだのが、自分のクラスメイトであると知る。恋人までそのクラスメイトに横取りされるのだが、結局そのクラスメイトは姉を再び気付けて学校を去る。
 姉の主治医に憧れを抱いた妹は、大学の医学部を目指し、塾に通い始める。そこで出会ったのは、以前姉を教えていた塾講師だった。塾講師に励まされ、受験に挑む妹の結果は果たして……⁉
 本当の出来事を綴ったようなリアリティ。大切な人の死。自殺未遂。家族の危機。親友と悪友。恋と友情。先生と塾講師。受験と言う分岐点。それらに真正面から向き合い、乗り越えた一人の少女の物語。
 この感動作、読まないと損ですよ。

★★★ Excellent!!!

私が常々思っていることの一つに、『知らない』ということは怖い、というものがあります。
何かについて『知らない』、すなわち、知識が不足していると、自分の偏見で動いてしまい、それが結果的によくないことにつながる、というのは、起こりがちなことのようです。
しかし一方で、知識を得る、ということもまた、一筋縄ではいかないのです。

私がこの作品に『伝える力』がある、と感じたのは、まさにその点です。
この作品が扱っているテーマは、ともすれば重い、ととられることもあり、またそうしたテーマを扱った作品は、えてしてただそれを説く、という形になってしまうものです。

しかしながら、この作品は、『小説』として完成されています。
私自身、読んでいて、登場人物の心情描写のリアルさに、思わず感情移入してしまうほどでした。
筆者様の深い見識が窺える一方で、その小説としての引き込む力の強さに思わず読み進めてしまう。そんな力を持った作品だと感じました。

私がこの作品から何を感じ取ったのか、それは敢えてここには書かずにおきます。
ですので、少しでも多くの方にこの作品を読んで頂いて、その上で、その方々にもまた、何かを感じて頂きたい、と、切にそう思います。

★★★ Excellent!!!

恋人の自殺をきっかけに双極性障害になってしまった姉・愛衣を持つ高校生・凛恋の物語です。

初めて読んだとき、繊細な文章と魅力あふれる登場人物に惹かれ、第一章を読み通しました。
特に第10話の最後から2番めの台詞は、恐ろしいほどに説得力があり、心震えました。
第二章以降も、愛憎溢れる(この表現が正しいかわかりませんが)キャラクターが物語に華を添え、それが凛恋と愛衣、果ては彼女らを取り囲む人々の成長をよりいっそう引き立たせてくれます。

この作品の登場人物の中で、私は特に愛衣に心惹かれています。
精神的な疾患を抱えている身として、他人事とは思えなかったからです。
この作品と出会い、愛衣の回復を見届けられたことが、今何よりも幸せです。

読み始めた段階でレビューを書きたくてしょうがなくなるくらい、この作品は沢山の「すばらしい」が溢れています。
文章も堅苦しくなく、一人称視点で描かれているため非常に読みやすいです。
テーマは確かに重苦しいかもしれませんが、それを忘れさせてくれる、まさに「傑作」に相応しい作品です。
私が保証します。
全ての人に読んでほしい小説が、ここにあります。是非一度読んでみて下さい!

★★★ Excellent!!!

憧れだった姉は婚約者の自殺によって躁うつ病を患い、両親はそのことで喧嘩が絶えない。そんな中で健気に姉を想う、高校生の凛恋。
友人たちの支えもあって高校生らしい生活を送る中、転入してきた彩乃が凛恋のみならず友人や姉にも暗い影を投げかける。

凛恋の一人称で語られる文は、一文のセンテンスが短めで読みやすく、強く感情移入を促される。姉の変化に対する不安、両親への憤り、憧れの先生への想いなど、多感な時期の感情の伝え方が非常に上手い。
特に前半の死を予感させるような不穏な姉の描写は、高い没入感とも相まって読む手が止まらなかった。
彩乃が登場してからの次第に彼女に翻弄されてく凛恋や友人たち、様々なものを乗り越えた凛恋が自分の憧れに向かって、つまずきながらも努力していく構成も巧みにまとまっている。

繊細で重くなりがちなテーマを扱っているにも関わらず、ひたむきに頑張ろうとする凛恋の成長の物語になっている。温かな余韻も素晴らしい、ぜひ多くの人に読んで欲しい作品。

★★★ Excellent!!!

もし、家族が精神を病んでしまったら。
私はそれをうまく想像することができません。
ちゃんと病状を理解できるのか。どう接したら良いのか。
私自身も平静ではいられず、心を乱してしまうのではないか。

物語は、高校生の凛恋の視点で語られていきます。
婚約者の自殺が切っ掛けで、双極性障害、いわゆる躁うつ病になってしまった姉。
自慢だった娘の病を受け容れられず、毎晩のように言い争いをする両親。
家族がばらばらになっていく中で、凛恋だけは大好きなお姉ちゃんの味方でいようとします。

相手の立場に立って、ただ心に寄り添うこと。
言葉にするのは容易いですが、実際は簡単なことではありません。
それでも自分なりに姉を理解し支えようとする凛恋の健気な姿に、私も救われたような気持ちになりました。

いいなと思ったのは、友人関係や進路のことなど凛恋自身の悩みを、他でもない姉に相談するシーンです。
例え病気であっても、凛恋にとっては本当に大切で頼りになる、ただ1人の姉なのだということが伝わってきました。

凛恋が好きです。
迷いながらも彼女が見つけた答えに、思わず温かい涙が溢れました。
この先も、多くの人が笑顔を取り戻して再び歩き出せれば、と願いたくなります。
本当に素敵なお話でした。この作品に、凛恋に、出会えて良かったです。

★★★ Excellent!!!

この物語は面白い、面白くないという話で語るのはとても難しい。
なぜならお姉さんが精神を病んでしまい周りの環境が少しずつ変わっていく、それを支える凛恋の視点でただひたすらに物語が続いていくからです。
ただ自分はこの物語を読み進めるのをやめることが出来ませんでした。幼い凛恋が目に見えないなにかに翻弄され、考えて、我慢して、笑って。
自分はこの凛恋というキャラクターがどうしようもなく好きでたまりません。本当は怒ってもいいのに、自分の主張もほとんどせず、人を気遣うことばかり考え、いつもいつも自分のことがあとに来てしまう。
物語後半でその凛恋が自分の意志を示した時、震え上がりました。本当に頑張って欲しい、心から応援したい、このコに成功して欲しいと思いました。
オススメというよりも自分がそれを口にしたいと思って書いたのでこれはレビューではないのかもしれません。けれどどうかこの熱が誰かに伝わって一人でも多く手に取って頂きたいと思いレビューさせて頂きました。この後の展開も楽しみにしています!

★★★ Excellent!!!

お姉さんが、とても自分に重なりました。
私の病名は違いますが、精神的な病気でつらい想いをしてきました。
それはいまだに終わっていないし、いつ「健康」になれるのかメドもありません。
その気の遠くなるような絶望感が、妹の目を通して鮮明に描かれていて、読んでいて苦しさも覚えました。
でも、それでも読んでしまうのは作者様の力量だと思います。
ラストまで見届けたいと思います。
どうか、この作品で精神的な病への理解が広がりますように。

★★★ Excellent!!!

双極性障害。いわゆる躁鬱病です。

仕事柄もあり、様々な病を抱える方々との交流は多々あり、そういった理由からも興味を持ちました。

お姉ちゃんは八月に死にたい。

鮮烈なタイトルから漂う、沈殿するタールのような黒い響きを感じました。
仕方ないというにはあまりにも悲痛であり、かといってがんばれというのもまた無責任極まりない。苦しみを理解できるのは他ならぬ自分自身だけなのだから。

そんなお姉ちゃんにとって一番身近な存在であり、よき理解者であろうとする妹にも、様々な問題が降りかかります。

色恋沙汰に揺れたり、運命で決められているかのような因縁に囚われたり。決して楽な道のりではなかったのです。

お姉ちゃんのためだけじゃなく、自分自身で決めた決意の先を見て欲しいです。

この物語はフィクションであって、実際の出来事ではありませんという至極当たり前の定型句をあえて明言します。

物語だからこそ、輝きが満ちる結末でいいのだと、そう思います。

★★★ Excellent!!!

命をつなぐ言葉
死なせないために、いったいなんていったらいいのかわからない。生きることは難しいです、生きていくことももっと難しい。もちろん死ぬことだって簡単なことじゃない。

病気の種類や進行状況は違えど、共感するところがありました。

どうしたらいいのか、なんていったらいいのか考え続ける日々です。悩みすぎないちょうどいいを探して…

★★★ Excellent!!!

死にたいお姉ちゃんと生きてほしい妹の、どちらの想いや苦しみは本人にしか分からないけど、葛藤しながら2人で支え合う姿に熱く感じるものがありました。
また、周りの理解というのも、本当に大事だと改めて思いました。

★★★ Excellent!!!

誰かの心を理解した気になってはいけないのだけど、理解されないことの苦しみは果てしない。心の痛みそのものよりも、理解されないことの痛みのほうが、心には痛いのかもしれません。

他者の気持ちを理解することは困難ですけど、それでも誰かがそばにいる、それだけで救われることは多々あります。「時が解決してくれる」そんな使い古された言葉に、実はたくさんの希望が詰まっているように思います。

押し寄せる感情の波にもめげず、支え続けたいと願う凛恋の姿にはぐっときました。人と人が分かりあうにはコミュニケーションが大事なんて言うんですけど、分かり合うために必要なのは言葉ではなく、むしろ祈りに近い何か何かだと思います。