Mission09_鎮圧

 世界の秩序を守る者は自負する。

 私たちこそが正義だと、大義を掲げる。

 しかし、それは欺瞞であると、それを押し付けられる者たちは言う。

 1人の言うことが正しいことという訳ではない。

 それを受け入れられぬ者たちに、共和国の男たちは抗う。




 正規軍は、とうとうエルドラド州を制圧した。

 なお、ジョナサンが助けた麻薬カルテルの兵士たちは正規軍に組み込まれた。

 さらにドン・メルキオルは内戦初期に死んでしまった農林水産省の大臣の代わりをすることに。

 これに異論を唱えるものがいたが、この状況下での適任はドン・メルキオルしかいなかった。

 当然のことながら、麻薬カルテルのゴットファーザーを農林水産大臣に抜擢するとは――と、息巻く者たちがいたが、大統領が説得して回った。

 この男が如何にして、前職の農林水産大臣よりも優秀なのかを全員に演説した。

 内容はドン・メルキオルがこの国の農業や水産業にどれだけ明るいか。そのおかげで、麻薬カルテル『ペイン・オブ・スカー』がサンタバルの国家予算に匹敵するくらいの売り上げを算出したかについて。

 また、麻薬カルテルのゴットファーザーであるドン・メルキオルがどのような人物なのか、これまでの経歴を。

 最後に、カルテルの者たちの機嫌を取りながら、ドン・メルキオルが少しずつカルテルの規模を縮小して行ったことや、ロボット工場の建設や人工筋肉の生産場の建設に携わって来たか。

 手を尽くしたおかげで、ドン・メルキオルは晴れて農林水産大臣に。

 なおかつ、カルテルの資産を全て国に取り込むことができた。ゆっくりとカルテルを取り込もうと企んでいたが、内戦の混乱で大統領の目論見は達成された。

 さて、その大統領はというと、晴天のニコロプンテ陸軍基地にて、首都解放作戦に向けての演説とブリーフィングを行っていた。


「この内戦がはじまり、かれこれ4か月――長かった。そして、そろそろ終わろうとしている。先週、エルドラド州のブナーン空軍基地を落とした。あとはサウス・ヘイブンに帰るだけだ」


 敵の激しい反攻により、エルドラド州の制圧は時間がかかったが、あとは首都を残すだけとなった。

 シュバンツのめまぐるしい活躍により、今がある。

 この陸軍基地のグラウンドで、大統領の演説を聞いているシュバンツのパイロットたちのおかげで。その中には、当然のことながらジョナサンも存在する。


「作戦はこうだ。まずは制空権を確保する。それが終わり次第、人型重機で地上の敵を一掃する。シュバンツ100機で、敵を蹴散らし、首都サウス・ヘイブンを落とす。……作戦は至ってシンプルである。心してかかれ」


 麻薬カルテルのゴットファーザーが大臣になったというイレギュラーもあったが、鉄の棺桶に入る男たちは一致団結する。

 倒すべき敵は、ただ一人――この内戦を起したアルブレヒト・シュタイナー。

 麻薬カルテルのドンが大臣に成り上がったことなど些細なことだ。


「なお、情報によるとハンニバル・インダストリーの敵の人型重機が8機投入されている。情報収集と破壊工作に出てもらっているレッド・クーガーより連絡があった。破壊工作については、警備が堅固であり不可能という連絡を受けた。それでも何とか、機体のスペックをすべて洗い出したとのことだ。後でサイクロプス隊のみなにそれを配る」


 敵の人型重機――ストーンヘッドでジョナサンの部下の命を奪った、あの鋼鉄のフットボーラー達について。


「敵の人型重機――もとい、人型機動兵器の名前は、マキシマス。スペックは向こうの方が高いが、乗り慣れてはいないとのことだ。首都官邸を制圧する際に、展開されるはずだ。各員は気を付けるように」


 それから、細かい説明があったのち、


「以上だ。作戦は明日の正午に行う。それまで待機せよ」


 これにて、解散となる。

 兵士たちは自分の命を預かるシュバンツの整備へと向かった。勝って生き残るためには必要なことだから。

 ジョナサンも、グラウンドから自分が乗るであろうシュバンツの元へと向かう。腐れ縁のメディックを連れ、兵舎の側へ。ジョナサンのシュバンツは兵舎の裏にある通信アンテナのところに置いてあった。


「いよいよか……」

「いよいよね……」


 道中、顔を見合わせる二人。


「サウス・ヘイブンに恋人がいるんだっけ? 会えればいいな」

「ありがとう、ジョナサン」メディックは微笑むと、「あなたも、家族がいるんだっけ?」

「あぁ、嫁と娘たちがいる。今、確認取ってもらっているが――どこで何をしているかわからん。無事だとは信じているが――」ジョナサンは深く頷くと、「全部終わらせて、会いに行かなくちゃな」


 ジョナサンがいつも以上に元気なことに胸を撫で下ろすメディック。

 二人が兵舎の角を曲がると、目の前に通信アンテナが。その下にシュバンツが4機ほど置かれてあった。また、それらを守る兵士たちやジョナサンが首都解放作戦の際に率いる部下たちも。


「それはそうとして――どうして麻薬カルテルのゴッドファーザーを大臣に押し上げたんでしょうね?」

「あぁ……」ジョナサンはため息をつくと、「かつての敵を味方として取り込むとはなぁ。メディック、大統領に失望したか?」

「あんたは?」

「少しな。軍に入って、いがみ合った仲だ。それが急に味方になるなんて……ほんの少し驚いたよ」

「やっぱりね」


 それから、ジョナサンは臨時大統領執務室であったことを思い出す。

 自分の前で繰り広げられる舌戦。

 大統領が如何にして、他国にズラかろうとしているドン・メルキオルをこの国の農林水産大臣にしようとしたのか思い返す。


「まぁ、カルテルは金をたくさん持っているからな。それを取り込むことができて良かったんじゃないか。カルテルの売り上げはこの国の国家予算に相当する」

「えっ、そんなに?」驚く、メディック。

「農林水産省の大臣になったあの男は、とんでもない男だよ。何がとは言わないが、堅固なネットワークとナルコ・ロードを持っていたからな。あとは、目がいい」

「目?」

「商売人としての目だよ。連邦が合法大麻を出すようになってから、カルテルは少しずつ連邦からヨーロッパ・アフリカのお客さんに転換していった。そして、開拓した。見つからない海路、空路を見つけてな。まぁ、その前に農家として素晴らしい才能を持っていてヤクの畑をたくさん持っていた。さらには、巨大なプラントを持っていた。年がら年中、安定して麻薬を作れる環境を持っていた」

「プラント?」

「金にものを言わせて、核戦争が起こっても大丈夫な地下にデカい栽培所を作った。さらに、そこにPMCを置いて守らせていた。この国にはそういう場所が多くある。ちなみに、シュバンツを作っているところはかつてそうだった場所だよ。みんなにふれ回っているシェルターってのは嘘だ」


 本当は言っていけなかったのだが、言わざるを得なかった。メディックなら言わないだろうという信頼があったし、そばに誰もいないから。


「とんでもないやつなのね」

「だからこそ、味方にしたかったんだろうな」

「へぇ~詳しいわね」


 ジョナサンは肩をすくめる。

 他にもあの場所で話し合われたこともあった。そのことについて話をしてしまうと、ジョナサンの命にかかわる。口をつぐむことにした。


「まぁ、長いこと戦っていたからなぁ。詳しくもなるさ」

「なるほど」

「あんたとはこれで最後になる」ジョナサンはメディックに笑いかけると、「よろしく頼むぜ」

「えぇ、こちらこそ」


 メディックとジョナサンはそのまま歩いて行く。

 なんだかんだあった二人はすでに医者と患者という関係ではなく、戦友という関係。なんだかんだでメディックには世話になっている。そのお礼と戦友の紹介を兼ね、ジョナサンは帰ったら、メディックとその恋人を家に招待しようと晴天の下、こう思うのであった。




 3日後、サウス・ヘイブン。

 最初に国境で戦った時とは真反対の状況となった。あの時は真夜中で、1人で30人もの兵士を相手取ったが、今はそうではない。太陽はジョナサンの真上にあり、失った右目や右足、左腕を取り戻している。

 大型トレーラーから降りた後、3機のシュバンツを連れるジョナサン。

 降ろされた場所は湿った地面の上ではなく、乾いたアスファルトの上。今いる場所が高級住宅街だからか、高い柵に物々しい扉が目についた。

 ジョナサンが配置された場所は、自分の家とは反対側。とても心配だったから、戦闘を始める前にジョナサンはメディックに口を利いた。


「……大丈夫かね?」

「大丈夫よ、あなたの家族は無事。家はミカエル・ストリートだっけ?」

「あぁ」

「……大丈夫よ、そこはずっと静かって聞いている。戦闘区域には近いけど」


 ジョナサンはため息をつき、心を落ち着かせる。

 それでもなお、不安は払しょくされないので、機械で補てんした手足をせわしなく動かすのであった。


「ジョナサン、準備はいい?」

「いい」ジョナサンは緊張した面持ちで答えると、「制空権はトルネード・リンクスが取っちまったのか?」

「えぇ、そろそろ――」


 そろそろ取るはずだとメディックが言おうとした時、


「……取っちまったぜ、あんちゃんたち。こちら、リンクス1だ。制空権を確保した! 後は頼んだ。アルブレヒトを倒してくれ」


 こんな無線が入った。

 トルネード・リンクス――その隊長であるリンクス1から、制空権を取ったとの報告が上がる。

 これが作戦開始の合図。


「了解した」

「よし、作戦開始!」


 メディックが作戦開始を告げた後、ジョナサンはブースターを点火する。


「おい、お前ら! 行くぞ!」


 ジョナサンが声を上げると、


「「「了解」」」


 隊に所属しているカッツ・ゴーマン・オックスという3人の兵士たちが、各々が乗っているシュバンツの腹の中から声を上げた。

 4機は高級住宅街を高速で過ぎ去り、背の高いビルが立ち並ぶ街中へと進撃する。

 首都にいる総100機のシュバンツがブースターをふかす。アルブレヒトがいるであろう、大統領官邸を目指して。12.7㎜機関砲をかき鳴らして突き進む。

 シュバンツを駆る正規軍の兵士たちは残っている地上戦力を制圧しにかかった。

 サウス・ヘイブンは広いが100機のシュバンツには何ともなかった。

 全機宇宙用仕様のものを歩くテクニカルに改造したもの。ジョナサンが体を張って完成させた戦闘システムのおかげで、無反動砲も歩兵携帯用ミサイルも難なく避けた。それでも戦術によって当たってしまうことがあるが、シュバンツは堅かった。ちょっとやそっとのことでは、正規軍の兵士たちの足を止められることは出来ない。


「戦車が2両! こっちにきやがるぞ」

「隊長、ここは私が!」と、意気込むカッツ。

「カッツ、頼む」ジョナサンが指示を出すと、「ゴーマン、援護してやれ」

「了解」ゴーマンは了承した。

「俺はオックスと歩兵部隊を潰す」

「了解。隊長、あんたのしりをきっちり守ってみせますぜ」と、怒鳴り散らすオックス。

「期待してる。散開!」

「「「了解」」」


 カッツとゴーマンのシュバンツは戦車2両を潰しに、ジョナサンとオックスは歩兵部隊を狩りに言った。

 戦車はパイルバンカーで、歩兵部隊は12.7㎜機銃で掃除。

 多くの戦いを経て、強くなった男たちはあっという間に戦車2両と、歩兵部隊を3つほど潰してみせた。


「こっちは済んだ」


 ジョナサンとオックスが仕事を済ませた後、カッツに無線を入れると、


「こっちもです。戦車潰しました」


 カッツもちょうど終わったと答えた。


「無事か?」

「もちろんです」と、ゴーマン。


 3人は無事であった。かすり傷すらついていない。戦車退治と歩兵部隊排除の仕事を済ませると、ジョナサンはメディックへ無線を入れた。


「おい、メディック! こっちは済んだぜ」

「了解っと。さすがね、ジョナサン」

「褒めるのは優秀な部下たちにしてくれ。とりあえず、俺達は大統領官邸に向かう」

「了解、気を付けてね」


 正規軍は反乱軍の残党を的確に駆逐して行く。

 制空権を取った後、反乱軍に占拠されている8ブロックがあっという間に制圧されていった。

 無線はとても耳触りのいいものとなった。

 なぜなら、正規軍が反乱軍をばたばたと駆逐していく知らせばかり。最高のナルコ・コリードだった。この耳触りのいい報告は、正規軍が一方的にやられていた内戦初期には考えられないものだった。


「……あとは首相官邸と、国会議事堂を取り返すだけだな」

「えぇ、そうね!」


 ほころぶジョナサンの顔。指揮車両でジョナサンの隊を見守っているメディックの表情も少しばかりの笑みがこぼれていた。


「久しぶりだな、サイクロプス1。レッド5だ」


 そんな二人の元に、懐かしい人の無線が入った。


「久しぶりだな、元気そうで何より」と、ジョナサン。

「敵さんはそろそろ、マキシマスを8機出そうとしている」

「なるほど」


 レッド5は引き笑いをした。

 年齢といつもの重苦しい雰囲気にそぐわない茶目っ気たっぷりで、いたずら小僧のような笑い声だった。


「なんとか、3機に爆薬を仕掛けてやった」


 こう言った後、すぐだった。

 爆音が轟いた。


「ささやかなプレゼントだ」

「ありがと、レッド5さん」と、メディック。

「あとは頼んだ。俺達は帰ってゆっくりさせてもらう」


 最後の1つをジョナサンがしまいにかかる。

 その時、5機のハンニバル・インダストリー製の人型機動兵器が出現。5機のマキシマス。鋼鉄真紅のアメリカン・フットボーラー。

 そのうち、1機には角がついていた。


「きやがったな……」

「角付きにはアルブレヒトが乗っている。気を付けろよ」と、レッド5。


 この機にはアルブレヒト・シュタイナーが搭乗している。


「わかった」ジョナサンは返事した後、「お前ら、さっさとやるぞ」

「「「おう!」」」


 部下たちの粗暴な声のち、ジョナサンの小隊は4機のマキシマスと戦うことに。

 前座で4対4。

 地面をフィギアスケートのように滑る敵は、巧みなコンビネーションで25㎜機関砲を撃ってきた。

 こちらも当たらぬように、よけながら12.7㎜機関砲で応戦する。


「カタログはちゃんと見てるか?」と、レッド5。

「もちろんだ」

「改めて言っておく。25㎜機関砲には気をつけろ。あと、敵は堅い。12.7㎜は有効でない」

「でも、シュバンツと違って、あいつは関節が弱い。叩き込めば、膝をかっくんさせられる。あとはパイルバンカーで装甲はおろか、中のパイロットを抜ける」

「そうかい。じゃ、前を狙えよ、敵さんはシュバンツと違って正面からの攻撃に弱い。あと、角付きは――ジョナサン、お前との一騎打ちを所望している」

「情報ありがとう隊長さん」ジョナサンはレッド5に声をかけると、「おめーら、さっさとやるぞ!」

「だな。隊長の言う通りだ」と、オックス。


 弾丸をよけながら、4機は散開し、応戦する。

 サウス・ヘイブンの街並みを生かし、縦横無尽に街中の戦闘に興じる。ここでは立体的な機動が可能なシュバンツが優位であった。しかし、それでもマキシマスの戦いっぷりは負けてはいなかった。


「ゴーマンとオックスは敵の前に出て、注意を反らせ。俺は敵を転がす。カッツ、俺が敵を転がしたらそいつに一発バンカーをかませ」

「ほいよ!」

「ほいほい!」


 ゴーマンとオックスが、前に出て4機に弾幕を張る。

 ジョナサンは敵の背後にまわり込む。それから角から飛び出て、敵の背中へ。敵の足関節に弾丸を叩き込んだ後、カッツとともに敵にパイルバンカーを撃ち込む。

 これにより、マキシマス1機を撃破。


「俺らも!」

「おう!」


 敵が背中に気を取られた瞬間、ゴーマンとオックスがマキシマスを1機ずつパイルバンカーで撃ち貫く。

 これにより、マキシマスはあと1機となった。

 その時、敵が後ろに下がりゴーマン駆るシュバンツを達磨にする。


「ゴーマン!」


 怒鳴るジョナサン。

 心配させまいと、ゴーマンはその大きな声を上げる。


「生きてるよ、背乗りのおかげでね!」


 ジョナサンは安堵した時だった。マキシマスがタックルをかましてきた。

 すぐさま、これに対処するともう一度、そのマキシマスは交差点で闘牛の牛の如く、もう一度、突進してきた。

 それを何とかなやすと、パイルバンカーを撃ち込んだ。

 間合いがほんの少し遠かったせいか、有効打にはならなかった。

 が、ジョナサンは無理やりバンカーを引き抜いてコクピットを露出させた。正面装甲を剥かれたパイロットは慌てふためき、操縦を誤った。立ち止まってしまったマキシマス。ジョナサンはすぐさま、正面装甲を取っ払った敵に近づくと、そいつを取り出して握りつぶしてしまった。


「よし! これであとは角付きだけよ」


 メディックが高らかに叫ぶ。




「そこの小隊の隊長、聞こえているか?」


 角付きマキシマス――そのパイロットであるアルブレヒト・シュタイナーは、ジョナサンに声をかける。


「あんたがアルブレヒトか?」

「そうだ」

「降りて投降することをお勧めする。握りつぶされたくなかったらな」


 と、言いつつもアルブレヒトは生きたまま捕まえるようにと命令が出されている。

 ジョナサンにアルブレヒトを殺す気はなかった。本当は殺したくってしょうがなかったが、その衝動を何とか抑え込んでいる。


「……お前は私を連邦の犬だと嘲笑しているだろう。現にそのとおりだ。私は使われて捨てられた犬だ」


 こう前置きすると、


「それでも、戦士としての矜持は持ち合わせている」


 アルブレヒトは言った。

 さらに、


「……お前と、1対1で戦いたい。それでこの戦いを終わらせよう」


 こう嘆願した。

 アルブレヒトは諦観していた。ジョナサンに勝っても、負けても投降するつもりでいたから。これはせめても彼の戦士としてのプライドがそうさせていた。


「ジョナサン、どうするの?」


 心配そうなメディックの声に「受ける」と、ジョナサンは即答した。


「殺しちゃダメよ、捕まえるように言われているんだから」

「善処するさ」


 それからジョナサンは部下たちに言った。


「お前ら、手を出すなよ……これは俺とこいつとの戦いだ」


 メディック、部下たちは黙って一騎打ちを了承した。

 決闘の許可が得られたジョナサンは、アルブレヒトと死闘に興じる。

 しばらく睨み合った後、街中を滑り、ジョナサンはアルブレヒトと死闘を演じるのであた。


「初めて乗ったにしてはなかなかのものだな」

「ずっとVR訓練をしていたからな、それなりにやれるさ」

「しかし、あんたはちょっと撃ちすぎだ。そろそろ弾がなくなるんじゃないか?」

「ほざけ!」


 研ぎ澄まされた感覚で、死線を渡る男たち。

 銃撃戦を繰り広げた後、アルブレヒトが接近戦に持ち込む。


「接近戦なら、こっちのものだ!」


 アルブレヒトは左腕に装備されているレーザーブレードで、シュバンツに斬りかかって来た。


「おおっと!?」


 右手首を切られ、12.7㎜機関砲が地面に落ちた。


「ジョナサン!? あんた!」メディックのヒステリックな声。

「まずい、機関砲が!」


 すぐさま銃を奪う、アルブレヒト。

 しかし、ジョナサンも食らいつく。

 アルブレヒトの左腕、パイルバンカーを当てて切り離す。これにより、レーザーブレードは使えなくなった。それから、マキシマスを蹴り上げて、残った左手で右腕を掴み、無理やり引き金を引かせた。

 12.7㎜機関砲が暴れはじめる。

 変な状態で撃ったせいか、振りまわしていたせいか、弾が詰まってしまった。

 相手と密着し、にらみ合う。

 その後、二人は左右に別れ、肉弾戦が始まる。

 結局、最後は殴り合いだ。

 アルブレヒトは人型機動兵器に乗り慣れていなかったが、すこぶる強かった。

 片腕だけの状態であったが、ジョナサンを巧みに翻弄した。

 この動きについて行きたかったが、ジョナサンが駆るシュバンツの推進剤は底をついていたため、できなかった。


「この程度か? もっとやれるはずだろう」

「この野郎! ちょこまかと、鈍重な体の癖に……クッソ! 推進剤さえ、底を尽いていなかったら……」

「ちゃんと考えて戦うべきだったな、ジョナサンとやら……」


 頭に血が上り始めるジョナサン。

 これを危険だと思ったメディックは金切り声をジョナサンに浴びせる。


「落ち着いて、ジョナサン」

「メディック、ごちゃごちゃいうな」

「言うわよ、これじゃ敵の思うつぼよ。ちょっとは頭を冷やしなさいよ」

「黙れっつってんだよ!」


 アルブレヒトは戦闘において策士であった。

 それに乗せられ、ジョナサンはピンチに陥る。ブースターをかけて、アルブレヒトは思い切りパンチをかました。

 ジョナサンは吹っ飛ばされ、気を失いかけるが、何とか機体を持ちなおす。


「これでしまいだ! くたばれぇぇぇ!」


 思い切り、アルブレヒトのパンチが――。


「おんどりゃぁぁぁぁぁ!」


 それにシュバンツの正面装甲の一番固い所で応えるジョナサン。そうしたら、マキシマスの右手(マニュピュレータ)が粉砕した。


「手が潰れたか! それでもまだ体が残っている」


 それでも機体を体当たりさせて対抗するアルブレヒト。間一髪で、ジョナサンは体当たりブーストをかわし、股間にパイルバンカーを打ち込む。関節が砕け、アルブレヒトが搭乗しているマキシマスは達磨になった。


「やっとだな……」


 歯を剥き出しにして肩で息するジョナサンは、パイルバンカーを軽く横っ腹に食らわして、アルブレヒトを引きづりだす。

 それでもアルブレヒトは最後まで抵抗した。

 手にする拳銃でシュバンツの正面装甲に弾丸を撃ち続ける。しかし、拳銃の弾が切れて、アルブレヒトは何とも言えない顔をしたのち、うなだれた。

 その後、男は引きたてられた。

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