Mission04_鉄鬼

 うっそうとした山に身をひそめる正規軍の兵士たち。

 兵士たちは飢えていた。

 この飢えを満たすため、鋼の翼を奪うべく、凶鳥の巣へと向かう。

 そして、辛くも巣を奪う。

 この勝利が敵に知れた時、漁夫の利を得ようとする者は新たなる策を弄す。




 正規軍が何とか取り返したカロライナー空軍基地。

 先の戦闘から、一週間後。

 滑走路から、戦闘機『Su-27』が、飛び立とうとしていた。

 滑走路を走る4機。その尾翼には竜巻を操る山猫が描かれてある。これが、サンタバル共和国軍空軍第101戦術戦闘飛行隊のエンブレム。この戦闘機を、大統領は彼らに渡したかった。

 空へと向かう戦闘機を見守る二人の兵士。ヘルメットをかぶっている兵士とパトロールキャップをかぶっている兵士。この二人は基地内をパトロールしているのだが、遠のいて行くジェットサウンドを耳にして立ち止まる。

 それから、ヘルメットをかぶった兵士が基地から飛び去るそれらを指差す。


「あれが、トルネード・リンクスか?」


 戦闘機はあっという間に豆ほどに。

 ヘルメットをかぶる兵士の目には、指先から飛び立つ羽虫のように見えていた。


「そうらしいな。アグレッサーとかいうやつだったかな。鬼ごっこの鬼をする連中らしい」


 ヘルメットをかぶった兵士の隣にいたパトロールキャップをかぶった兵士が、今飛び立った連中がどんなやつらか補足する。


「それって仮想敵をやるってことか?」

「そうだよ」

「あれって、共和国空軍第101戦術戦闘飛行隊でいいんだっけ?」

「あぁ」


 もともとは共和国空軍第416飛行教導隊と呼称されていた。共和国空軍の中でもエリート中のエリート部隊だったが、革命が勃発し部隊が散り散りに。再編されて、今はそういう名前になっている。

 4機の戦闘機は空のかなたへ飛んで行った。彼らはこの基地にやってくる爆撃機の迎撃へと向かうのであった。


「空だけじゃこの戦争には勝てん。俺達は陸の戦力が不足している」

「あぁ、そうだったな」パトロールキャップをかぶっている兵士はため息をついた後、「そういや、ピックアップトラックに無理やり機関銃を固定したテクニカルはあっても、戦車とか、装甲車とかはないよな?」

「そ、うちは何にもねぇ」

「いいや、ヘリはあるだろ?」


 空へ向かう戦闘機を指差していたヘルメットをかぶった兵士は、今度はヘリが格納されている倉庫を指差した。


「運ぶやつならな。それ以外はねェぞ」

「でも、無くても何とかなるんじゃねーの?」


 パトロールキャップをかぶった男は長い息を吐いた後、胸ポケットから煙草を取り出すとフィルターを咥えた。それから、隣にいるヘルメットをかぶった兵士にも勧める。それを受け取ると、ヘルメットをかぶった兵士が火をつけた。

 並んで煙を吸う二人。二人は空を見上げていた。小さな雲が泳ぐ、青い空を。

 それから再び話を再開する。


「こっちは戦力不足だ。ヘータイが不足してる。だから、兵器を使わなきゃならん。それにうちの軍隊、何かに乗ってなきゃ本領が発揮、できん連中ばっかだ。お前も俺も、パトロールしてっけど、本当だったらレオパルド2の砲手やってなきゃいかんだろ」

「そうだよなぁ~ないからどうにもなんないよなぁ」ヘルメットをかぶった兵士はヘラヘラすると、「銃持って戦う訓練はしてっけどさ、心もとねぇよなぁ。一応さ、特殊部隊はいるけど50人ほどじゃ何にもならんよなぁ?」

「そうだよなぁ~。ターミネーターが100人いればいいんだけどよ」

「違いねぇ」


 二人はゲラゲラ笑い合う。


「基地を取り返してから、1週間。ここ、カロライナー空軍基地に集結してるとはいえ、ヘータイは5000人ほどしかいないからなぁ」

「どうにもならん。しかし、そろそろカカシさんが重い腰を上げるかもな?」

「カカシ? あぁ、あいつか。ドワーフに乗ってたフランケンシュタイン」

「そうそうそれだ」


 フランケンシュタイン――そう呼ばれている男はカカシこと、シュバンツを駆るパイロットの男のことである。つまり、ジョナサン・フリーガーのことであった。

 それから、二人はしばし沈黙する。

 ぼんやり基地の外を見つめ、ジョナサンが乗っていたシュバンツの残骸をヘルメットをかぶった兵士が見つける。それを見つめていたら、ヘルメットをかぶった兵士はあることを思い出すのであった。


「そういや、司令官さんがセントエルマ陸軍基地を攻めるとか言ってなかったか?」

「あぁ、それな」

「対空防御が針山状態でどうにもならんと言っていたなぁ。トルネード・リンクスの連中はやる気だが、あいつらにいなくなられちゃ困るよなぁ。でも、あそこを取り返さないと俺らはそこから先へはいけないからなぁ」


 一応、基地を奪取する作戦を行ったレッド5こと、共和国陸軍第501特殊作戦群レッド・クーガーが戦車やヘリを調達しているが、その数は少ない。一週間で、確保できた千y差とヘリの数は合わせて5つほど。

 その多くが存在するセントエルマ陸軍基地までは少し距離があり、なおかつ、対空防御が堅固であった。


「この戦力不足をどうするかね?」

「そのために、あれに乗るんじゃねぇの?」


 ヘルメットをかぶった男は、シュバンツを指差す。

 野ざらしになっているシュバンツ。

 そのシュバンツを整備しているのはサンタバル共和国の大統領。大統領が作業着を着て、整備をしていた。


「……なるほどな」

「そういうこった。あの人のためにもがんばらねぇとな」

「だな」


 大統領が働いている姿を見て二人は、笑顔になった。

 ふと思い立ち、二人は大統領へ手を振ると、大統領は気付いて手を振りかえした。




 外でシュバンツの整備を行う大統領。乗降状態になっているシュバンツの側であぐらをかいて、ノートPCにかじりついていた。

 大統領がやっていることは危険極まりないことである。しかし、兵士たちの士気を上げるために作業着姿を見せることは必要なことであった。この働いている姿を見せているおかげか、兵士たちの士気は高く保たれていた。

 大統領も一緒になって頑張ってくれている。戦っている。

 その想い――というか、感覚が兵士たちを突き動かす一因となっていた。

 一応、周囲には特殊部隊レッド・クーガーが護衛についているが、それでも危険なことには変わりない。

 そんな感じで仕事をしていたら、二人の兵士が手を振ってきた。

 二人に気付くと大統領は手を振り、シュバンツの整備に戻る。二人はただのパトロール兵で、すぐに仕事に戻ったが、護衛をしているレッド・クーガーの隊員はたまったものではなかった。

 それでも大統領を守るという栄誉ある仕事を敬遠する者はいなかった。

 大統領が仕事をしているとレッド・クーガーの兵士を伴い、メディックがその側へとやって来た。あいさつをかわすと二人は会話に興じる。


「あの二人、知り合いですか?」

「いや、まったく知らないが、手を振られた。だから、それに応えただけだよ」

「はぁ……」


 不用心な大統領だとメディックは思った。


「ところでジョナサン君の容体は?」

「かなり落ち着きました。もう少ししたら、機械義肢をつなげられるようになるかと」

「なるほど」大統領は頷くと、「次の作戦には出られそうかな?」

「無理をすれば……しかし、彼には休息が必要です」


 こう前置きすると、メディックは理由を語る。


「今回の戦闘データをもとにあなたが開発したBMIの調整をしたとはいえ、負荷が高いのには変わりありません。人工知能に肩代わりさせるという方法についてですが、ここは工場ではありません。それを作る技術者もいません。ですから、次の出撃は通常のものにしてもらえませんか?」


 大統領は二度ほど頷いた後、眉間を険しくした。

 それから、メモ帳機能を立ち上げるとメディックの要望をそこに書き込んだ。


「それについてはわかった。こっちで何とかしてみるよ。それで――2日後、ジョナサン君には工場に押し入りに行ってもらいたいんだけど」

「と、言いますと?」

「ここだけの話だけど、イストタウンの工業地帯にある水橋重工の人型重機製造工場へ押し入る予定だよ。そこで軌道エレベータの開発に使われている人型重機を奪取する作戦を行いたいんだけど、どうかな?」


 メディックは茶色の長い髪をかきあげると、眉間にしわを寄せた。


「ですが、彼には治療の時間が必要です」

「申し訳ないが、治療を始めるその前に――彼にはシュバンツの雛型、兵士たちが戦うための武器を調達してもらわなければならない」


 それから、大統領は語る。


「水橋重工の人型重機はAK-47のようなものだ。物価の高いあの国にしてはかなり安価で、部品も少なくすぐに作れる。なおかつ、取り扱いが簡単だ。人型重機に12.7㎜機関砲と岩盤破砕機――いわゆるパイルバンカーがあれば、戦車に対抗することができる。これはジョナサン君によって証明済みだ。今、正規軍は地上戦力が決定的に欠けているから、使わない手はない。私たちはこの国の未来の為、それを使わなければならない。これが今できる最良のことだよ」

「地上戦力の拡充のため、大統領が考案した作戦はイストタウンにあるHCEの工場からHCEを奪取する作戦を決行するのですね」

「そうだよ。そのために、今、特殊部隊を潜入させている」


 予定では、500名の兵士を特殊部隊の手引きで深夜イストタウンの工業地帯に潜入させる。そのためにレッド・クーガーをイストタウンも潜入させている。

 潜入した兵士たちは水橋重工の工場を占拠し、サイバー部隊と大統領が改変したOSを工場内にある人型重機にあらかじめインストール。改変OSをインストールし、シュバンツになった120機のを奪取する。

 しかし、それだけではダメである。

 奪取したシュバンツ達は武器を持っていない。

 そこで武器工場で12.7㎜機関砲と人型重機の岩盤掘削機を作っている工場を襲撃し、ものを奪う。

 そういう作戦を近日行う予定であった。


「作戦はいつですか?」

「3日後だよ」


 メディックはため息をついた。


「彼を休ませてほしいのですが?」

「そういう訳にもいかない。軍人だからね。仕方がないよ」大統領は笑うと「それに彼もやる気だろう?」


 そう言われると何も言えなくなるメディックであった。ジョナサンはベッドからよくいなくなる。隙あらば、シュバンツに乗って戦おうとするバカだったから。こうしている間にも看護婦の目を盗んで、医務室の床を這っているかもしれないと思うと気が気でなくなった。

 メディックは腰に手を当て、心配そうな顔を大統領に向けた。その大統領派というと、膝の上のノートPCとのにらめっこに興じていた。




 3日後、サンタバル共和国東部にある街――イストタウン。

 そこは工業地帯になっており、水橋重工の人型重機を製作している工場周辺で、ジョナサンは歩く棺桶の中に押し込まれていた。さらに言えばシュバンツは大型トレーラーの中で、出撃をするその時を今か今かと待っていた。

 真夜中――時刻はそろそろ1時を回ろうとしている。夜だというのに工場は明るく、大型機械が地鳴りのような音を発していた。

 ジョナサンにとって、それは不気味で恐怖を増幅させるものとなっていた。

 ジョナサンの心臓は早鐘のように脈打っていた。


「こちら、レッド5……」特殊部隊レッド・クーガーから無線が入る。「レッド5から、シュバンツ1へ。用意はできている。いつでも始めてくれて構わない」

「了解した」


 ジョナサンは返事をすると、トレーラーの運転手に合図を出し、シュバンツを前進させる。イストタウンの工業地帯、水橋重工の工場付近の裏通りに停めていトラックの荷台から、シュバンツがそろりそろりと出てきた。

 なるべく音はさせないように気を付けてはいるが、それでも鋼鉄の体が軋む音は出てしまう。野ざらしにしていたせいか。


「そちらは通りにいる敵を一掃してくれ。敵の通信網はすでに切っている状態だ遠慮なくやれよ」

「了解した。しかし、8時間もコクピットの中に缶詰にされるのはとてもきつかった」

「そうか」レッド5の隊長は鼻をすすると、「私たちは私たちでやることがある。そっちは任せた」

「了解した」

「それとな。メディックによろしく」

「……伝えとくよ」


 レッド5との通信終わらせると、ジョナサンはメディックに無線を入れる。

 メディックはというと、テレビ局のバンに偽装した車にいた。メディックはジョナサンがいるところから2ブロック先で、シュバンツの支援を行う手はずになっている。


「こちら、シュバンツ1。メディック、聞こえているか?」

「えぇ、ばっちり」

「レッド5から通信があった。そろそろはじめろってな」

「そう。それであなたの調子は大丈夫なの?」


 メディックの心配そうな声を聞いて、音信不通の妻や娘たちの顔がジョナサンの脳裏によみがえる。メディックの質問の解答にそれを出さぬよう、雑念をジョナサンは振り払う。それから、こう答えるのであった。


「痛みについては、少しは和らいだ。しかし、それでもきついな……無くなった手足に感覚が残っているのは。たまに股についているものがヒュンとする」

「幻視痛ね。それについて、ゆっくりと治療しなくてはいけないわね」

「……帰ったらでいいか」

「えぇ、帰ったらそうしましょ」メディックは息をそっと吐くと、「とにかくあなたは、イーストポーチ通りをきれいに掃除して。それから、水橋重工のゲートを壊して中に入るのよ」

「了解した」


 それから、ジョナサンはシュバンツの戦闘モードを起動する。

 モードを切り替えると、いつものように頭が激痛に苛まれると思いきや、そうでもなかった。

 大統領の調整のおかげか、かなり楽に済んだ。

 裏通りから、工場の門へ通ずる大通りへ。シュバンツは前進する。

 まずは目の前、100メートルを歩いていた敵の小隊へ12.7㎜機関砲を向け、そいつらをミンチにする。

 静寂を切り裂く、機関砲の発砲音。これを皮切りに、大通りには敵がどこからともなく湧いてくる。夜とは思えないほど、騒がしくなった。この騒ぎに狂乱し、押し寄せてくる反乱軍の兵士。シュバンツの敵ではない。


「街中だから戦いやすいな、それとDBMIの負荷が少し和らいでいるからか、反応が鈍いな。しかし、しょうがないか」


 無反動砲を軽やかに交わし、12.7mm機銃を撃ち続ける。

 角から出てきた敵を倒し、背中を撃ってきた敵を――。


「ジョナサン、後ろ、9時方向。建物の上!」

「あいよ、メディック!」


 気付いて、倒す。

 これを繰り返して、ジョナサンは転身する。600mも続く長いイーストポーチ通りを、12.7㎜機関砲を持って練り歩く。

 それでも撃ち漏らしは発生するのだが、その敵を隠れていた500人の兵士たちが片付けていった。彼らもまた、この内戦で鍛えられた者たちであった。数は敵の方が勝っていたけれども、正規軍の兵士たちの進撃を止めることはままならなかった。

 そして、あっという間に水橋重工のゲート前にシュバンツは着いてしまった。

 想定していた時間よりも半分以下の時間で。

 しかし、ここは何があるかわからない戦場である。そうやすやすとうまく行く訳ではなかった。


「こちら、レッド5だ。悪いが哀しいお知らせだ。戦車が5台そっちに向かっている。レオパルド2だ。気をつけろ。先にパーティを始めるなよ。なけなしの地雷を使って、1両吹っ飛ばして足止めしてやる」

「了解、頼んだわよ!」


 ジョナサンの代わりに答えるメディック。レッド5は「任された」と、言って通信を切ると戦車の破壊に入るのであった。

 どうやら、この騒ぎを聞きつけた戦車部隊が動き始めたらしい。


「急がなきゃ」メディックはつぶやくと、「ジョナサン、そっちはどう?」

「こちら、シュバンツ1。門をパイルバンカーでぶっ壊す所だ」

「了解、さっさとやって頂戴」

「あいよ!」


 シュバンツはパイルバンカーを背中のハンガーユニットから取り出すと、水橋重工人型建設機械生産工場のゲートをそれで破壊した。


「壊した! こちら、シュバンツ1 。ゲートを破壊した!」

「オッケー。それじゃ、兵士さんたちに仮装パーティの衣装を取りに来てもらおうかしら」


 メディックがこう言った後、ゲートに兵士たちが駆けこんできた。それを邪魔にならない所で見た後、ジョナサンは戦車がいるであろう場所へ向かおうとした。その時のことである。


「そちらにたんまりクラッカーを送った。それまで何とかもたせろ」


 レッド5からこう通信が入った後、彼らが言っていたなけなしの地雷が炸裂した。シュバンツの機体がビリビリと微かに震えた。


「今しがた、戦車を一両破壊した。後は頼む」

「シュバンツ1、了解。場所をマーキングし……」

「した。地図を見ろ。それが嫌なら火の手が上がっているところに行け」


 ゲートを出て西へ。

 シュバンツは700メートル先の煙が立ち上っている場所へ向かう。


「言い忘れていたが、戦車だけじゃない。人間も20人ほどいる。気をつけろ」

「了解、サポートを頼む」

「何をすればいい?」

「戦力の分断よね?」ジョナサンとレッド5のやり取りに割ってはいるメディック。

「あぁ、それだ」と、メディックの意見を肯定するジョナサン。

「……任された。部隊を四つに分ける。うまいこと立ち回れ」


 レッド5が4両のエイムブラムスと歩兵中隊と交戦する。

 マップデータに固まっている赤い点が四つ、それがバラバラに動き始めた。


「ジョナサン、敵はバラバラに動き始めているわね」

「そうだな、メディック。これなら何とかできそうだな」

「あなた、体は大丈夫なの?」

「いつものきついのが無い。だから大丈夫だ。頭の中が膨れているような、何かに取られているような感覚はないよ」

「ならいいけど。……あまり無茶をしないでね」

「わかってる」


 ジョナサンのシュバンツだけで4両のエイムブラムスと歩兵をせん滅することに。

 これより、戦車相手に街中での戦闘を敢行。


「まずは手前の一台目からやろうか」

「それなら、立体駐車場の上からやれるいい場所がある」と、レッド5.

「高すぎると足の関節がやられる」

「それについては問題ない。一応、シュバンツのスペックは全て把握している」

「本当?」と、メディック。

「本当だ。立体駐車の上からならいける」


 ジョナサンは限られた時間の中でどうするかを考えると、決断した。


「じゃ、やるかな」


 レッド5に言われた通り、立体駐車場に入り一両目の戦車を、上から奇襲した。

 着地した瞬間、ジョナサン股がスースーしたが何とかなった。一発パイルバンカーを戦車の装甲に撃ち込むと、爆音のち、戦車はシーンと静かに。


「1両目撃破!」


 1両目の戦車を破壊した時だった。

 通りの角から、戦車がにゅうっと現れる。砲をこちらに向けようとした時に、車体をパイルバンカーでとっつく。爆音のち、戦車に大きな穴が開く。それから戦車はしなびて、ものを言わなくなった。


「破壊した! 二両目だ」

「その意気よ」


 その後は、12.7㎜弾をばらまきながら歩兵たちをミンチに。建物に隠れながら、弾幕を張って移動を行う。索敵はメディックに任せている。そのおかげか、ジョナサンは戦闘に集中できている。


「3両目はどこにいる?」

「こっちで案内する。そこから1時方向、道路をずっとまっすぐ行って右に曲がったところよ。おそらくだけど、撃ってくる。気を付けてね」

「了解」


 で、案の定だった。

 戦車が出てきて、シュバンツを撃ってきた。

 ジョナサンは何とかわして、建物の陰に隠れる。壁に背をつけ、敵の猛攻にどう出るか思考する。


「こっちに来ているようだが、あいつの真上は――」


 メディックに聞こうとした時であった。


「ジョナサン!?」


 戦車から放たれた砲弾がかすめ、背にしていた壁がぶち壊される。

 これに肝を冷やしたジョナサンはすぐさまスモークを炊いて、その場から少し離れる。


「挟まれていたな、ヘタすりゃ死んでいたぜ。へっへっへっへ……」


 生死の境という極限状態に、張りつめて緩んでしまった緊張の糸。これらがジョナサンをおかしくしていた。


「笑ってる場合じゃないでしょ!?」メディックは金切り声をあげると、「あっぶな……あんた、ちゃんとしてよ! 心臓に悪い」

「すまんかった」ジョナサンはしおらしくすると、「相手の後ろへ回り込むルート出してくれ」

「了解! ……出したわ」


 メディックが描いたルートがマップにひょじされる。それを頼りにして、先ほどシュバンツの背中を撃ってきた戦車を後ろから回り込んで、パイルバンカーで撃破する。

 これにより3両目を撃破。


「3つ目を破壊した!」


 そして、最後の一両を破壊しに向かう。


「腕、大丈夫?」

「あぁ、ちょっとヤバいかもしれん」


 ジョナサンは画面の端を注視する。

 そこには腕のダメージ係数が書かれてあった。パイルバンカーを撃っていた左腕のダメージが蓄積していたらしい。左腕のダメージ係数は95パーセントを超えおり、それを示す文字が真っ赤に染まっていた。


「毎度のことながら、もうちとどうにかならんもんかね?」

「ここを取れば少し場状況が変わるんじゃない?」


 メディックがジョナサンの質問にそう答えた時、レッド5から無線が入る。


「そろそろパーティの準備ができたらしい。一つ目の鬼さんたちがクラッカーを持って工場からわんさか出てきた」レッド5はため息をつくと、「……私の役目はこれでしまいだ。シュバンツ1、あんたはあんたの役目を果たせ」

「了解っと。さて、さっさと終わらせるか」

「そうして」と、メディック。


 ジョナサンは4両目に、そのまま突っ走る。200m、飛んできた100㎜弾をくぐり抜け――タッチダウン。戦車の体にパイルバンカーでとっつくと、戦車が破壊されるとともに、シュバンツの腕がちぎれ飛んだ。


「腕が取れちまったよ、クッソ!」思い切り画面を叩くジョナサン。

「戦車は死んだ?」

「あぁ~死んだよ」


 と、メディックへ乱暴に答えるジョナサン。

 これでジョナサンの仕事は終わりだ。武器をかっぱらったシュバンツたちが工場から街へぞろぞろ降りてきたから。

 町はたくさんのシュバンツ達であふれかえっていた。


「あとはひよっこさんたちに任せましょう。あなたの役割はここで終わりよ、ジョナサン」


 ジョナサンは肩を落とすと、


「それじゃ、帰るとしよう」


 こう言って、カロライナー空軍基地に戻るのであった。




 場面変わって、首都サウス・ヘイブン。

 高級ホテルで、携帯片手にハンニバルはにやりと笑う。

 イストタウンが武装した人型重機によって制圧されたとの報を聞いて、とても良い気分であった。ハンニバルは連邦のエージェントであるのだが、この男は正規軍の勝利が嬉しいようであった。


「そうですか、人型重機が大暴れしたと?」


 ハンニバルはニヤニヤが止まらなかった。誰が見ているかわからないので、それを手で覆い隠す。

 なぜなら、彼らのおかげで人型兵器の有用性が証明されたから。


「はい、はい――」


 父親とやり取りをするハンニバルは、嬉しそうに頭を上下に振っていた。

 電話を終えるとハンニバルはため息をつく。


「……これで賽は投げられた」


 そう言うと、一人高笑いをするのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます