これは無理

達見ゆう

「退屈だねえ、ヨシヤ君。お客さん来ないわね。」

「先輩、確かに退屈ですね。お客さんが来ないコンビニって退屈ですよねえ。時間も半端ですし。商品の補充も終わってしまったし。」

「なんか暇潰しのお題を掲げたおしゃべりでもしようか。」

「いいですよ、お題は何ですか?」

「これは無理!なシチュエーションとか、人とかって、どう?」

「『これは無理!』ですか。うーん、例えば満員電車でワキガの人と密着してしまうとか。」

「うわ、それは無理ぃ。」

「似たシチュエーションとしては、口が臭い人と密着とか。」

「うわ、それも無理無理ぃ。」

「コンビニならではの無理!だと誤発注して三桁の数のプリンが搬入されてしまうとか。」

「それはコンビニ的に無理!というか、恐怖だわね。」

「おでんのツユを倍以上に濃く作ってしまい、お客さんに出すまで気づかないとか。」

「それも、無理というよりコンビニ的恐怖だわね。」

「っていうか、俺ばっかり考えてるじゃないですか。先輩も何か考えてくださいよ。」

「そうねえ…。」


「何をやってるんだ、ヨシヤ君。」

「あ、店長。」

「いくら人がいないからって、一人二役トークをするのは止めてくれって注意しただろう。目撃された客から『気持ち悪い。』って苦情来てるんだよ、わかってる?」

「はい、声優の勉強になるかと声色変えてたのですが、ダメでしたか?」

「むっさいひげ面のオッサンの裏声は生理的に無理に決まってるだろっ!」

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これは無理 達見ゆう @tatsumi-12

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