えん罪
本日午前0時20分ごろ、××県○○市の住宅街の路上で、男性の遺体が発見された。警察は会社員の男性(48)を重要参考人として確保していて、近く逮捕する予定である。死体からは財布や20万円相当の時計が奪われており、怨恨と窃盗、両方の疑いから捜査しているもよう。
※ ※
「だから刑事さん、俺は人殺しなんてやってねぇって!」
「それなら、なぜ逃げた? 近所に住んでいる人が、事件現場から走り去るお前を目撃しているんだぞ」
「死体を見て、気が動転しちまったんだよ。仕方ねえだろ、おたくみたいに死人相手の商売してないんだ」
「そもそも、なんで深夜にあんなところをウロついていたんだ」
「たまたま腹が減って、コンビニに行きたくなっただけさ」
「お前は家に帰る前に、居酒屋で酒を飲み、ラーメン屋にも寄っているな。それなのに空腹だったと?」
「俺だって、そう思ったさ。だから、帰り道に寄ったスーパーじゃビールしか買わなかった。けど、ネットやりながら飲んでるうちに、小腹が空いてツマミが欲しくなったんだよ」
「被害者の衣服にも、お前の指紋がバッチリだ」
「そりゃ、最初は助け起こそうとしたからな。酔っ払って倒れてんのかと思ったからよ。そしたら血まみれじゃねえか。怖くなって逃げ出したよ」
「ふん。言い訳は一丁前だな」
「なぁ、ちゃんと調べてくれよ。俺は人殺しなんてやってない!」
「まあ、凶器が発見されれば分かることだ」
バタン!
「警部! 凶器が発見されました!」
「でかした!」
「近くの公園に、被害者の血のついたナイフが捨ててあったんです。ついていた指紋は……この男のものではありませんでした」
「!!!」
「調べたところ、別件で逮捕中の男の指紋と一致したので問い詰めたところ、犯行を自白しました」
「……」
「どうやら危ないクスリをやってるらしく、証言がハッキリしませんが。数時間前に被害者とその男が口論するところも、多数の人間に目撃されています。ナイフを購入した店舗も特定したので間違いありません」
「そーらみろ」
男は解放された。
※ ※
まったく、危なかったぜ。
もう少しで殺人犯にされるところだった。
ホントに警察ってのは無能だな。
俺はただ、たまたま通りかかっただけだ。たまたま通りかかって、うめき声が聞こえたんで何事かと思ったら、血まみれの人間が倒れてた。
だから1発殴って、財布と時計をいただいたのさ。
俺は人殺しなんかしてねえよ。
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