61 あいつを合図に
俺とナユタは、闘技場の西へと走る。
女王様と一緒に。
……。
女王様と、一緒に。
「これでも多少、護身術は学んでおりますの」
そう発言した直後、明らかに護身術の度を過ぎた超加速を見せてくれた女王様。彼女は現在、俺達と並走中である。
いやはや凄い。
ナユタも俺も、軽く時速百キロは出していたのに。
それはもう、あっという間に現場に到着するほどの速さだったのに。
「もっと速くします?」
「何でそんなにワクワクしてるんです?!」
ボディラインは大人のそれなのに、表情がかなり子供っぽい。ワクテカ状態をキープしたまま、自動車よりずっと早く駆ける俺達は、本当あっという間に目的地へと辿り着いた。
そこには、俺達が探している者達。
ハルカさんとマキナが、いた。
いた、のだが。
「ふぉおおぉう……! き、筋肉痛、だ、ぞぉー……っ!」
「あぁああ、回復魔法が追いつかないよぅ。どうしよぉ~!」
バキバキと不穏な音を全身から発するマキナ。そして必至の形相で涙目になりつつ、回復魔法とマッサージを行使しているハルカさん。
2人とも、まるでマラソンを終えた選手のように肩で息をしている。ついでにどちらも汗だくになっており、その場面だけ見ると、どこの足つぼマッサージ? 地獄絵図? と首を傾げることだろう。
しかし俺には分かる。
マキナが自分の薬による副作用で苦しんでいる事を。
その副作用を何とかしようと、ハルカさんが努力している事を。
「……ハルカさん」
「あ、スイト君! よくここが分かったね?! いや、それはいいの。本当に良かった。でもごめん、今は話しかけないで!」
「いや、そうじゃなくて。疲労回復じゃなく、状態異常回復も一緒にかけるといいぞ」
「えっ。……えっと、えい」
「うあぁー……おー?」
筋肉痛。それは科学的に言えば、疲労物質が筋肉に溜まる事で起きる現象。
しかし魔法のあるこの世界において、筋肉痛とは状態異常の1つなのだ。
解毒、解呪といったような専門の魔法が存在する、れっきとした状態異常なのである。ハルカさんの使う状態異常万能回復魔法であれば、治らないはずが無いのだ。
体力やHPを回復させるだけでは、苦痛が取り除けないのである。
「痛いのが、無くなった、ぞー?」
よっぽど痛かったらしい。汗びっしょりのマキナが、むくりと起き上がった。
「うぁ、良かった、良かっだぁあー! ありふぁとうスイト君~!」
微妙に呂律が回っていないハルカさんが、俺の手を取ってお礼を述べてくる。モザイクをかけないといけないような顔で、号泣する。
そんな、命を救ったわけでもないのにここまで喜ばれると、照れくさい。
俺は思わず、懐からハンカチを取り出していた。
「ふぇ、ありがど」
俺から借りたハンカチを受け取るハルカさんは、鼻をかみ、涙を拭い、仕上げに水魔法でハンカチを綺麗に洗って、風魔法で乾かし、俺に返す。
しかしホッとしたような顔をしていたが、ハンカチが俺に戻った途端、笑顔のまま引き攣った。
「……あれ? えっ、あれぇ?」
「ん、なした」
「スイト君がいる?!」
「「『……え、今更?』」」
口をあんぐりと開けたハルカさんに、俺達は声をそろえて呆れ返った。
ハルカさん、俺の名前、呼んでたよね?!
はぁ。妙な胸騒ぎの正体が、マキナの超酷い筋肉痛だったとは。
あまりそうだとは信じたくないな……。
「それで、タツキ達は?」
「んっとねぇ。お城に行ったよ」
「お城ぉ?」
「うん。ミリーちゃんと一緒に」
俺は、噴き出した。
「ちょ、待って。何でミリーがいるわけ」
「さぁ? あっ、スイト君に会いに来たとは言っていたと思うけど」
「それ以外は?」
「あっ、そうだった。あのね、お城にたくさん人が集まって、もうクーデターが起き始めているって」
「そんなの、何でミリーが知ってんだ……」
「そっちは私の情報だよ? それを伝えたら、タツキ君がミリーちゃんと一緒に行っちゃった。動けないマキナちゃんを放っていくなんて、ちょっとひどいと思わない?」
ハルカさんはぷくっと頬を膨らませる。
かわいらしいが、相当ご立腹のようだな。
多分、マキナのことより、自分を置いて行かれたという所が、特に。
「それで、行くの?」
「ああ」
「じゃ、せめて回復させて。まだ本調子じゃないでしょ」
ハルカさんは、小さく微笑んだ。
天使ともてはやされる優しい笑みの割に、肩を掴む力が強すぎる気がする。
それにしても。
「……何でそれを」
本調子じゃない事を見破られるなんて。
「勘」
そうハッキリと言ってのけたハルカさんは、真っ直ぐにこちらを見ていた。何の躊躇いも無く、まるで、最初から回答を用意していたかのように。
だが俺は知っている。ハルカさんがこれほどよどみなく答える時は、大抵隠し事がある時だと。
もっとも、何を隠しているのかなんて、俺には分からない。
だから、これ以上は聞かない。聞かないし、聞けない。
怖いから。
「……はぁ。あまり時間も無いし、そういう事にしておこう」
「うん! あ、スイト君のこと、ありがとうございます」
「え。あっ、はい」
急にナユタの方を見て、お辞儀するハルカさん。
咄嗟に、ナユタもお辞儀を返す。刀形態のイニアも、声だけで『どーもどーも』と返した。
「スイト君、大人しそうに見えて、すぐ無茶をするからね。見ていられる人がいて良かったよ」
「あぁ、はい。そうですね。絶対に目を離しちゃいけないタイプですからね」
「そうなの! あ、私ハルカ。よろしくね、ナユタ君」
がっしりと、力強く握手を交わすと、2人はもう一度ぺこりとお辞儀した。
何だろう。初対面の割に、すぐ馴染んだな。2人ともフレンドリーだからかね。
仲良き事は美しきかな。ケンカしなくても仲が良いのは良い事だが、何か引っかかる。どことない違和感が残るのは、何でだ?
うーん。
あっ。
「ハルカさん、何でナユタの名前を……」
知っているのか。
そう問い質そうとした瞬間、ハルカさんが大声をかぶせてきた。
「さぁ行こう! 多分、タツキ君達は到着していると思うし!」
「お城は……あちらですわね。ああ、セルク達にも教えてあげなくちゃ」
「おー、みんな張り切っているなー? そこの少年、僕をおぶってくれだぞー」
「え、俺ですか? 良いですよ」
『ちょっと、女の子なんだから、変な所を触らないでよね?!』
「触んねぇよ?!」
話がどんどん進んでいく。俺だけ、ハルカさんに質問しようとした体勢で静止してしまっていた。
気が付くと、俺以外の全員――マキナとイニアはナユタにくっついているだけだが――が走る準備に取り掛かっていた。
急いで現場に向かうなら、身体強化系の魔法を使わないといけない。
そななら、転ばないように体勢を整えなきゃいけないからだ。
「スイト君、置いてくよ?」
「……あ、ああ、うん」
1人何の準備もしていない俺に、ハルカさんが叱咤する。
うん、えっと。
とりあえず、走ろう。
というわけでやってきました城門前。
たしかに、錆び付いているが見た目豪華っぽい城門があった。
広場には殺気立った群集が集まり、様々な罵詈雑言が城の前にいる兵士に浴びせている。
正に一触即発の雰囲気に、場は騒然としていた。
城の周辺はクレーターが無く、いかにも貴族が住んでいそうな洋館やら教会やらが見られる。なるほど、城なら安全そうに見える光景だ。
城門前にいる兵士は……8人くらいか? 全員が杖を持って仁王立ちしている。どうやら結界を張って、人々の侵入を防いでいるらしい。
魔法使い同士ならともかく、杖を持っていないただの人が、魔法使いに勝てるわけがないと。
そういう事なのだろう。
「やっほー、合流したよん」
「ただいま戻って……わぁあ、凄い人だかりなのです!」
「ん。スイトがいる」
俺達は城に近い屋敷の屋根に立っていた。
ハルカさん、マキナを合わせた9名が、全員揃った事になる。
さて、ここからどうするのか、だが。
「スイト君~? 僕の台詞、ちゃんと聞いていましたか~?? ねぇ~???」
「何でお母様まで連れ出しているのですか! 危ないじゃないですか!! ねぇ師匠?!」
「………………」
ぶっちゃけ、テレクとセルクから怒られるのは想定内だったからいいのよ。
問題は、無表情で無言を貫くナフィカさんなわけですよ。
無言にたっぷりと圧力がかけられていて、背が小さいはずのナフィカさんが、とても大きく見えるわけですよ。
心なしか殺気もこもっている気がする……ッ!
「「……」」
テレクとセルクも、ナフィカを見て黙り込んでしまった。
彼女に任せた方が言いと判断したのか。
はたまた、彼等もまた、ナフィカに気圧されてしまったのか。
俺は正座をしているしかなかった。
が。
「諸君!」
突如として、騒がしい広場の方から声が聞こえてきた。通りのよい声ではないので、おそらく魔法による拡声を使ったのだろう。
俺は、人が集まっている広場の、枯れた噴水へと目を向けた。
噴水は薄汚れており、長い間水が出ていない事が窺える。
その本来であれば水が噴出しているであろう頂点で、豪奢な服を着込んだ壮年の男性が、声を張り上げていた。
「我々は、限界を超えた! 超えてなお、限界を強いられている! 我々が倒すべき敵は何だ!」
「「「王だ!」」」
「そう、王だ! 暴虐の限りを尽くす王だ! そして、王の暴走を止められなかった王家そのものだ!」
「「「そうだそうだ!!」」」
「我々は王を倒す者! 今こそ民主主義の下、王家を潰すのだ!」
「「「おぉおおおぉお!!!」」」
男の声に合わせ、群集は雄叫びでもって返す。
1秒ごとに高まっていく殺気と熱気の嵐が、暴発寸前にまでなっていた。
……。
ちょっと、まずくないか、これ?
「ねぇ、これだと王様だけじゃなくて、女王様も倒すことになっちゃうけど」
「ああ。まぁ、ノリで答えているだけかもしれないが……女王様は子の国の人に好かれているからな」
「彼は元王派ですわね。あわよくば自分が政治の実権を握ろうと動く、目障りな公爵です。彼の父はとても立派な方だったのですけれど」
あー、よくある話だな。
親が立派で子供が傲慢。親の権力を自分の権力として振るう、脳内お花畑の腐れ貴族だ。
寿命が長く、実力主義の魔族ではあまり起こらない問題だな。血統のみを重視して、性格を考えないからあんなバカが生まれるのだ。
まぁ、女王が勝利した暁には、彼は国家反逆罪に問われるだろう。
「彼の息子も立派なのですよ? ええ。とても。親がどこまでも愚かだと、子は逆に立派になるものなのでしょうか?」
「その台詞は、満面の笑みで仰られる事ではないと思われますが」
「あら、まあ」
いや。あらまあじゃなくて。
「ともかく、あの結界は長く保たないでしょう。皆様が言う、クーデターの内容は?」
「詳しい事は俺も聞いちゃいないが、あの門を派手にぶっ壊して注意をひきつけ、その間に城へ潜入。中にいるであろう王様を何とかする。大雑把にはこうだ」
というか、これ以外の説明をされていない。
フレディさん自身、いい加減なところのある人だからな。それ以上細かく決める気は無いと思う。あったとしても、短い間しか一緒にいなかったから分かるわけもない。
何にしろ、その「何とか」は成功させなければならない。
あの、群集よりも前に。
「何とか。ですか。ふふ、案外簡単ですのね」
「簡単?」
「ええ。わたくし、これでも女王ですから」
自信たっぷりに胸を張る女王は、とても活き活きしているように見えた。
良い笑顔を浮かべて、実に楽しそうである。
「ですが今、あの城では魔法が使えませんわ。わたくし、私室以外の廊下で、隠蔽魔法を使っただけであそこに飛ばされましたの。王族個人の所有する私室では、ある程度個別の設定が出来ますけれど。実は、城の魔法使用規制を変更出来る場所を知らないのです」
途端に表情を曇らせて告げるのは、彼女がやろうとしていることへの障害だった。女王様が何をしようとしているのかは不明だが、たしかに、魔法が使えないのは困る。
この世界では、主な攻撃手段は魔法と物理。大抵はどちらか一方しか使わないか、どちらも使おうとして中途半端な威力を持て余すかのどちらかである。
俺は魔法に補正がかかるし、魔法が中途半端になることはまず無い。
だからといって魔法無しの物理攻撃が不得意かと言われると、得意である。
この世界では珍しい、オールラウンダーだな。
とはいえ、魔法:身体強化による物理攻撃力増加は実に頼りになる。それを使うと、瞬時にあのダンジョンへ逆戻りするとなると、不便で仕方無い。
無くてもゴリ押し出来るかもしれないが、あって困らないのが魔法である。というか、むしろ無いと困りそうなのだ。
さて、どうするか。
『それは城の防衛に使われている、特殊魔法陣の事だね。隠蔽魔法に反応するなんて誤作動としか思えないし、僕が直して来ようか』
「「誰(だぞー)?!」」
今までどこにいたのか、ぬいぐるみが俺の肩によじ登っていた。
そういえば、こいつの紹介をするのをすっかり忘れていたな。というか、こいつの名前を聞くのも忘れていた。
まぁ、こいつの存在は、全くの予想外だったし。未だに頭がちょっとばかりくらくらしているし。そのせいで忘れていたのだろう。うん。
「なぁ、今更だが、お前、名前は?」
『名前……そういえば名乗っていなかったね。まぁ、しっかり覚えているわけでもないのだけれど』
「無い、という事か?」
『いいや、あるよ。あるはずさ。ちょっと待って。思い出すから』
「……それって時間かかりそうだよな」
『うん』
だったら、後程もう一度聞くことにしよう。今はさすがに、そんなに待っている時間は無いのだ。
「名前は後で思い出してもらう事にして、だ。……その、魔法陣があって、それを修正する能力がお前にあるのか?」
『あるよ。何でか知らないけど、ある。さすがにこの小さい身体で行くとなると時間がかかるから、誰かにご協力願うけどね』
運搬係として、と言葉を締めくくり、ぬいぐるみは俺の方の上でキョロキョロと見回し始める。協力者、もとい運搬係を選別しているようだ。
彼の目に留まったのは、何も無い虚空――
あ、違う。
「……ぐすん」
涙目でこちらを睨んでいる、マキアだった。
「マキナ」
「んー? どうしたんだぞー?」
「マキアって、いつからいた?」
「んん? 最初からだぞー? ずっと僕達の後ろに付いてきていたなー」
「……マジか」
マキアがいると認識した途端。
俺の心の中に、まるで隕石が落ちてきたかの様な衝撃が走り、津波の如く罪悪感が押し寄せる。
え、マジで? いたの? ずっと? 俺達の近くに?!
「あ……えっと、何か。何だろう。マキア君、ごめんね。物凄く謝りたい気分になってきた」
ハルカさんもマキアの事をずっと忘れていたようで、浮かべていた笑顔を引き攣らせた。
マキアの影の薄さは、俺達も知っていた。知っていた上で、完全に認識の外に放り出していた。
あれ? いつからだ? 今回は、いつからマキアの事を忘れていた? 今までずっと、マキナ達の方についていたのか? あれぇ?
「い、一応、ね。マキナとずっと一緒にいたよ。うん。いたんだよ……うぅ」
あまり時間は無いが、俺達はマキアの愚痴を聞く事となった。
正座で。
……。
何でも、長年の勘で、俺やテレク達が飛ばされた瞬間、自分の存在感がなくなったことを察したらしい。それを踏まえ、マキナと共に行動するように心がけたそうだ。
ところが。
「ぐすぐすぐすぐすぐす……」
「僕が気付かない内に、妙な結界に阻まれて、途中ではぐれてしまったらしいぞー」
「ぐすん。ぐすぐすん」
「ふむふむー? それから僕が気付くまでは1人で行動して、妙な所を何箇所か通って、ようやく僕と合流したそうだなー」
「うわーん!」
「おー、よくがんばったぞー! 途中で強盗やら誘拐犯やらを捕まえた辺りには、特に感動したぞー!」
「「「そんな話あったっけ?!」」」
「ぐすぐす」やら「うわーん」など。泣き声だけで、言葉は1つも無かった。
にも関わらず、マキナはマキアの言いたい事を全て把握したようだ。強盗と誘拐犯はどこから出てきたのやら。
マキナは強めにマキアの頭を撫でてやり、マキアはしばらく泣き止まなかった。
ご飯無しの寝所無しな一晩を、たった1人で過ごしたのだ。ずっと騒がしい日々を送っていたところに、突如として独りを強要される……。
恐ろしいな。
しかも、ここは異世界なのだ。一ヵ月半程度過ごしているとはいえ、馴染んだとは言えない。
一晩で済んで良かったとは言えるが、一晩も過ぎたとも言い換えられる体験をさせてしまったわけだ。
ただ、妙な結界とは何のことなのか。
『うん。やっぱりそうだ。ねぇ、君。僕と一緒に行こうよ。道案内はするからさ』
「……僕?」
『うん。多分、君じゃないと辿り着けないし』
ぬいぐるみは無表情なまま頷いた。
布に刺繍された顔が動いても不気味だが、やはり妙な感覚のある声だな。
やはり、男女の区別が付きづらいからだろうか。子供らしい高い声は、幼い男児とも、年頃の少女とも、実に判別が付け難い。
ともかく、いざという時に魔法が使えなくては困るため、俺は肩にいたぬいぐるみを掴んで持ち上げた。未だ腫れた目をしたマキアへ渡すためである。
しかし掴んだ途端、ぬいぐるみが再び喋り始めた。
『……あぁ、僕の名前は牢獄の最下層に行けば、すぐに分かるんだっけ』
「え、何で」
『そこに僕の名前があるらしいからさ。何でそこにあるのか、まだそこにあるのか、全く知らないけれど。あるって教えてもらった。誰に教えてもらったのだったか……』
最下層ねぇ。
あそこには俺達も行ったが、特に目に留まる物は無かったような、気が。
……あ。
「1つだけ、目立つ物があったな」
『そうなのか?』
「ああ。たしか、アジャンテ、だったか。大昔の、こことは違う国の人の名前が」
『――……!』
ぴくん、と、ぬいぐるみは反応する。
しかし黙っているだけで、特に何かを言う気にはならないようだ。
「今は時間が無い。名前はまた、後で聞くよ」
『……ああ、うん』
「魔法陣、頼むぞ」
『それは任せてよ。必ずやっておく』
ぬいぐるみなので、表情は分からない。
だが、感情の変化もあれば、声音も幾らか変わるようだ。その声は力強く、決意が滲んでいた。
見た目も声もかわいらしいが、確かな想いを感じた。
それから俺達はセルクと女王様、2人の王族に先導され、再び王城へと潜入する。
マキアとも途中で別れ、3つのグループに分かれて。
セルクが先導する、俺、ハルカさん、テレクは、王座の間へ。
主な任務は王様の「保護」だ。いや、どちらかというと「捕獲」になるのだろうが。
女王様が先導する、マキナ、ナフィカ、ナユタ&イニアは、王の私室へ。
ハルカさんの勘によると、王様は王座の間にいるらしい。だが、その私室にちょっとした用があるとか、無いとか。
マキアは用事が終わり次第、すぐにでもマキナ達と合流したいとのことで、マキナは目的地により近いという女王様のチームに入った。
人数的にそちらへ入ってもらうつもりだったので、もめなくて済んだ。
「じゃ、行くぞ」
……遠くで、タツキの声が聞こえた。
「ぃいっちばんっのりぃいいっ!」
通りの良い声と共に、あの扉を壊すには分不相応な破壊音を立てて。
それを合図に、俺達はそれぞれの目的地を目指して、駆ける。
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